
過去のドンドコ掲示板
2002年08月01日〜15日
S.S☆「息子よ!」☆ あや太郎
「…と言う訳で、当家には跡継ぎの息子がいない。そこで社長が昔、外で作った落と
し胤を捜し出してほしいのだ」
エージェントは手掛かりを片っ端から当たり、ついに目当ての落とし胤へと辿り着
いた。しかし果してその母親と祖父は子供を簡単に渡そうとはしなかった。
「今更何だ。三十年も放ったらかしにしといて、たまたま跡継ぎが居なくなったから
返せだと?笑わせるな」
祖父が怒る。
「息子には本当の父親の事は何も教えていませんし、知りたがりもしませんでした。
今はささやかながら、この小さな店を継いでくれる事だけを楽しみに家族三人暮らし
ているんです」
母親が涙ながらに訴えた。
「いや、おっしゃる事は分かりますが、息子さんだって、あの大財閥の総帥に成れる
と聞けばきっと感激されると思いますよ。親御さんたちだって、そのほうが将来のた
めになると思われるでしょう?」
「もう三十年も下町の子として生きて来たのに、今更そんな大金持ちに祭り上げられ
ても戸惑うだけですわ」
「いや、しかし、何といってもお坊っちゃまの輝かしい未来を考えたら…」
「いえ。それにお恥ずかしいですけど、そんな偉い立場になれるような才能もありま
せんし、それらしい躾けもしておりません。息子だけでなく、お宅様にも迷惑がかか
るだけではないかと…」
「そんな滅相もない。人はその立場に置かれて初めて相応しい人物に成長するもので
す。何も帝王学を授けられた若者だけが立派な人物になるわけではありません。何か
と言えば子供を出世させたがるご時世にあって、むしろあなたがたのように謙虚で奥
ゆかしい方々に育てられた息子さんのほうが、我が財閥の総領として求めるべき方で
はないかと思います」
「あら、そう言われると面はゆいですが……でも、本当に貫祿も威厳も無い子ですの
よ。それで大丈夫かしら?」
「そんなにご心配なら、一度、内密に我が屋敷を見学されては如何ですか?実のお父
様だけでなく、家の雰囲気や、財閥の活動ぶりまで、それとなく見聞して、それから
結論を出されても遅くはありません」
「そうですか。あの若主人様がどんな風に成ってらっしゃるか私も確かめたいです
し…。じゃあ、一度こっそりと様子を覗かせてもらいますわ。宜しくお願いしま
す…」
数日後、あの母親が屋敷の裏手に現れた。何と若々しい服装に身を包み、乳母車を
押している。顔にはベールを掛け、本人と分からないように扮装したわけだ。
先日対面した秘書が裏門を開け、縁故のある貴婦人に豪壮な中庭を見学させるとい
う建前であちこち見学させながら、適当なところでそれとなく社長にも会わせようと
いう算段である。
「まぁ、以前にも増して立派なお庭ですこと。派手になったんじゃなくて趣味が良く
なったような…。あ、あのお方ですわ」
「庭でお飲み物など差し上げる趣向です。顔を隠してお話しになれば知られずに済み
ましょう」
しかし俯いたベール越しの顔でも、三十年の年月が経っていても、社長は元愛人の
顔をすぐに見破った。
「お前…。お前じゃないか!元気だったかね?」
「お優しい言葉…。でもそんなに思って下さっていたのなら、何故あの時あんなにす
げなく捨てたんですか?」
「仕方なかったんだ。あの頃は当家も苦しくて、政略結婚で他の財閥の娘と無理やり
一緒にさせられた。でもエライもんだなぁ…愛の無い暮らしでは子供の一人も出来な
かったよ。今更勝手な言い分だと思うだろうが、お前が生んでくれた子供に是非とも
この家を継いで欲しい。今ではどこに出しても恥ずかしくない財閥だよ」
「有り難い申し出ですわ。でもウチの息子はそんな風に育ててませんの。もうお金持
ちはイヤだと思って、庶民らしく気さくで呑気な子に育てたんです。茶目っ気や洒
落っ気はあるんですけど、貫祿なんてとても…。だからこんな大きな家にはやっぱり
合わないと思いますわ」
「そんな事はない。育ちが何だ。学歴が何だ。下町っ子らしく気さくで楽しい人間な
ら何よりだ。今や正にそういう時代だしな。ああ、息子ももう三十才の立派な大人
か。早く会いたいものだ!」
「それなら…もう会ってますわよ」
「えっ…どこに居るんだ?」
「ほら、この…乳母車の中に」
言うと、ちょっぴり小柄で愛嬌たっぷりの息子が、赤ん坊姿で飛びだしてきた。
「ヤッホー!あんたがパパかい?どう、僕の赤ちゃん姿、似合ってるだろ?」
「ホホホホ…ごめんなさいね。本当に赤ん坊みたいなヒョウキンな子ですのよ」
聞いていた大富豪は顔を紅潮させ、唸るように言った。
「どんな息子でも良いんたが……こんな息子は要らん!」
(完)
2002年08月15日23時37分22秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
TEAM火の車稽古場 「噺家生活二十五周年記念 桂 都丸 25日間連続落語会」
8月13日
出し物
●「しまつの極意」 桂 歌々志
●「池田の猪買い」 桂 都丸
中入
●「鯉舟」 桂 喜丸
●「ねずみ」 桂 都丸
「ねずみ」は昨年2月の徐園の会で下ろさはったネタ。
一連の左甚五郎もんのひとつですな。
私にとっては、都丸落語に対する印象を新たにする切っ掛けになった噺です。
純粋な人情噺やありませんけど、しっとり語る部分のウェイトが大きい。
この場面、都丸さんは東京の噺家さんのとは段取りを少々変えたはりますな。
かつて岡山一の宿屋〈虎屋〉の主人であった卯兵衛。
妻に先立たれ、後添いに女中頭のお紺を据えます。
近郷の大祭の夜、客同士の喧嘩を止めに入った際に弾みを喰ろぉて階段から転落。
したたかに腰を打って、以来寝たきり状態に。
身動きが侭ならんいら立ちから、奉公人の箸の上げ下げにまで煩ぉ口を挟みます。
当然の事乍ら誰も側に寄って来んよぉになりますな。
やがてお紺が
「一つでもええ客部屋が欲しい。
それに客商売の家に病人が寝てるというのも景気が悪い。
向かいの物置き、造作して住めるよぉにしてますのでどぉぞお移りを。」
商売上の都合を理由にされては納得せん訳にはいかん。
息子の卯之吉共々移ります。
当座三度三度運ばれてた食事が、やがて日に二度になり一度になり…。
遂に来んよぉになった。
が、翌日からまた三度ずつ運ばれて来ます。
「店が忙しゅうて手ぇが廻らんかったのやろぉ。」
卯兵衛はそぉ納得しますな。
そんなある日、幼馴染みで同業の〈分銅屋〉の主人が尋ねて来て彼を詰ります。
「おい、卯兵衛。
お前何時から性根まで腰抜けになったんじゃ。」
何の事かと訝る卯兵衛に話して聞かせる事の真相。
途絶えた食事の催促に行ったところ、邪険に追い返された卯之吉。
事情を聞いた〈分銅屋〉がそれ以来陰ながら面倒を見てます。
よそ事乍らお紺と番頭の義助に文句を言ぅた時、決定的なもんを見せられますな。
それは、〈虎屋〉を二人に譲る、という念書。
もちろん偽造ですけど、卯兵衛の署名はおろか判まで押されてます。
大事な判を持って出なんだ事を悔やみますが後の祭り。
さらに即されて卯之吉を裸にしてみると痣だらけ。
継母の仕業である事は明白ですな。
卯兵衛は、泣きじゃくる息子を抱き締め乍ら自らの不徳を思い知ります。
そして、何時までも〈分銅屋〉の世話になってる訳にはいかん、宿屋を始めたいとい
う卯之吉の希望に従って、この物置きの元々の主である鼠に配慮してのネーミング
〈ねずみ屋〉の看板を上げます。
この後、経緯を聞いた甚五郎が動く鼠を彫って〈ねずみ屋〉を盛り立てますな。
んで、事件があって落ち。
他の場面は、何時か何処かで機会があったら聴いていただきましょ。
左甚五郎伝説というのは全国にあります。
謂れを総合しますとおよそ350年間に跨がってるそぉです。
名人は長生きですな。
おまけ。
喜丸さん、益々オランウータンに進化中。
2002年08月15日18時07分32秒投稿
S.S☆「勲章」☆ あや太郎
「あなたはこの度の国境紛争により、輝かしい戦果を挙げ、我が国の外交関係を優位
に導いてくれました。よって勲一等を贈ります」
「有り難うございます」
近来稀に見る鮮やかな指揮ぶりで自国の兵力を最少の犠牲で済ませ、敵軍を追い
払った功績により、同国の一将校に勲章が授与された。
「いやぁ、将軍…あの時はお見事な戦略でしたねぇ。少数の部下で多勢の敵を相手
に、あの昼なお暗きジャングル地帯で不利な闘いを強いられたというのに…」
「ハイ。思い切ってジャングルを焼き払ったのが功を奏しました。隠れ家を焼かれた
敵軍が逃げだして来たところを反撃できましたから」
将校が関係者から祝福を受けていると、次の受賞者が壇上に呼び上げられていた。
「あなたは連日、時間さえあれば近辺の公園に出向き、何の報酬もなしに草木の手入
れを続けて来られました。よってその功績を讃え、ここに勲一等を授与します…」
先に受賞した将校と取り巻きたちが色めき立った。
「何だって?毎日公園の植木の手入れをしてる年寄りと、国の為に戦った我々が同じ
勲章だって?これはどういう事だ!」
選定委員たちに一同が詰め寄ると、委員たちは無表情にこう答えた。
「君達の功績は立派だが、ただ残念ながらジャングルを焼いてしまった。一方、公園
の植木手入れは、貴重な緑を守る尊い奉仕活動だ。だから同格の評価となった訳だ
よ」
「し、しかし、我々は命を賭けて戦ったんですよ。緑も何も、国家の存亡には代えら
れないはずだ!」
「キミねぇ……今の世界がどうなってるか分かってるのかね?もはや自然環境は限界
まで破壊され、植物が発生させる酸素量と我々が消費する酸素量はギリギリのバラン
スを保っているんだよ。ひょっとすると、あのジャングル火事で、我々は呼吸困難に
さえ成りかねなかった。そんな境目に我々は立たされてるんだ。国境の心配をするの
と同様、もっと酸素量の心配をしてくれないと困るねぇ。国家も民族も、空気なしで
は成り立たんのだから。
時代は変わってるんだよ、キミたち−−」
(完)
2002年08月14日22時40分03秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
TEAM火の車稽古場 「噺家生活二十五周年記念 桂 都丸 25日間連続落語会」
8月12日
出し物
●「動物園」 桂 都んぼ
●「猫の茶碗」 桂 都丸
中入
●「地獄八景亡者戯」 桂 都丸
今年のトレンディ「地獄」の登場で、整理番号を出さにゃならん程大入り満員。
この噺のお楽しみは演者さん独自の演出ですな。
従来、渡し舟の上で決める三途の川の渡し賃は渡船場のチケット売り場で。
九州の人は語尾の‘ばい’のお陰で三倍とられました。
これは〈白バイ〉の代わりですな。
六道の辻。
‘自殺について’の講演会の司会が伊丹十三。
村田英雄は餃子チェーン〈王将〉のオーナーに。
興行もんでは、三船敏郎・渥美清主演映画〈七人の侍はつらいよ〉。
これは爆笑。
新規に〈四代目五代目柳家小さん親子会〉〈志ん朝・枝雀二人会〉。
ざこばさんが刺されるか撃たれるかして間もなく緊急来演、等々。
念仏町。
オームは地獄から排斥、新規入獄も禁止に。
閻魔の庁。
閻魔大王の顔というやつをご覧にいれます…と、怖い顔をして見せますな。
稽古を付けた米朝師匠
「お前はんは作らいでもそのままでええのと違うか。」
一芸ある者は極楽行きとの言葉に、手品、曲屁に続いて相撲甚句。
閻魔にヨイショの文句でクリアします。
で、落ちはベーシックに
「大王呑んで(大黄飲んで)下してしまうのや。」
ほぼこんなとこでしたけど、憶えるのがえらいわ。
この噺の難しさは、次々変化する登場人物とシチュエーション。
一度退場したら二度と現われる事は有りません。
しかも‘今’を盛り込んだ工夫がふんだんに要求されます。
と言うて、そこにばっかり懲り過ぎたらこの長丁場がバラバラになってしまいます。
そぉなったら退屈極まりない、単においどが痛いだけのウダウダでしかない。
都丸さんは
「そんなにええ噺やおませんで。」
噺家さんにとって、もっと物語性の有るネタの方が語り甲斐が有るのかも。
何にしても、上方噺中屈指の大ネタである事には間違いないですな。
「猫の茶碗」の枕で、米朝師匠の高座での失敗談を披露。
「猫忠」で、吉野屋の常吉が稽古屋を覗く場面。
「こぉなったら、俺があいつかあいつが俺か…。」
これを
「あれがおいつか…。」
しょぉがないんで
「おいつがあれか…。」
と、続けはったそぉです。
もぉ一件。
小咄の
「高倉はんにはどない行ったらよろしぃ?」
「こぉずぅっと行きなはれ。」
を
「高津はんにはどない行ったらよろしぃ?」
僅か二行しか無いにも関わらず、落ちを割ってしまいはった。
が、落ち着いて一言。
「間違えましたな。」
こんな場合、普通客は笑います。
悪受けっちゅうやつですな。
しかし、客席にそんな反応は無しで
「師匠が間違いはったんやない。自分らが聴き間違ぉたんや。」
てな雰囲気。
客の方に遠慮させるとは、さすが国宝。
この逸話は本編に合うぉてないのやないやろぉか?
そんな気ぃもしますけど、まぁ、ええやんか。
何にしても、ボリュームと言い筋と言い「地獄」の対にはちょうど手頃な噺ですな。
2002年08月14日15時38分26秒投稿
S.S☆「尻拭い」☆ あや太郎
主婦のA子は近所で煙たがられていた。
他人の悪口は言う、デマは流す、他人同士をもめさす−−もう単に嫌がられるという
より恐れられていると言っていい存在であった。
そんなA子がいつものように昼食の用意をしていた時の事だ。残りご飯と野菜など
で簡単なチャーハンを作り、皿に盛ろうとして、その皿がやけに濡れているのに気づ
いた。匂いを嗅いでも特に異臭は無い。洗い直すまでもないとティッシュで拭き、水
気だけを取ってチャーハンを盛りつけるとそのまま食べた。
A子が腹痛を訴え救急車で病院に運ばれたのは翌朝であった。
幸い単なる下痢で大した事はなかったのだが、タチの悪い食中毒が流行っていた時
期でもあり、有らぬ噂まで立てられて、A子はしばらく世間を憚るような暮らしを余
儀なくされてしまった。食中毒の心当たりがなかったA子は再度詳しい検査を受けた
結果、腹痛と下痢はある種の強力な下剤によるものだと判明した。そうなるといよい
よ本人には心当たりがない。
「そこで調べてくれと、警察へねじ込んで来た訳か。面倒な話だよな」
「本人も評判が悪いのに気づいてるようで、誰かの復讐じゃないかと警戒してるよう
ですね」
「毒とまでは言えないが、それでもかなり体力が落ちるほどの強力下剤らしい。毒物
混入が騒がれてる時期だけに放っておく訳にも行かないしな。それで混入の可能性と
犯人の目星は?」
「容疑者は山ほど居るようですよ。なにせ憎まれてますからね。それに、嫌われてる
わりには近所の人の出入りが激しいんです。恐らく〔顔を出さない間に、何を言われ
てるか分からない〕という怖さ故でしょう。あの日も町内の祭りの打ち合わせとか何
とかで、昼前から近所の主婦やら三河屋、電気屋まで、十人以上の人間が出入りして
いたようです。それも台所辺りをうろうろしながらね」
昔風の広い土間があって、集会場代わりになっているらしい。
「じゃあ、動機も下剤混入のチャンスも、出入りしていた全員にあったって事か。そ
れで混入の手口は分かったのか?」
「それが不可解なんです。被害者の話によると、チャーハンの材料には混入の余地は
なさそうなんですが、チャーハンを盛った皿が妙に濡れてたと言うんです」
「その皿に下剤の水溶液か何かが塗られていた訳かな」
「ところが匂いを嗅いだところ、異臭はなかったと言うんです。多少クスリくさい薬
品なので、効果が出るほどの量なら匂うはずなんですがね」
「食べる時はどうだったんだ?」
「あとで思えば多少クスリっぽかったような気もするとの事でしたが、熱い出来立て
ですし、味覚はアテになるかどうか。それに皿も残飯も洗ってしまったので、証拠は
排泄された僅かな薬物反応だけです」
「ふーむ、材料は来客の手に届かない所にあって、皿にも直接下剤を塗られた気配は
無い。となると、行き掛かりの犯行とは思いにくいな」
「ひょいと手を伸ばして下剤を放り込むという訳には行きませんからね」
「それにしても混入ルートは何だろうな。妙に濡れていた皿は異臭なし。それを洗っ
て、安全な材料で作ったチャーハンを盛りつけたはずなのに…」
「いや、細かい事なんですが……皿は洗わなかったようですよ。ティッシュでサッと
拭いて、そのまま盛りつけに使ったそうです」
「何、ティッシュで?…それかも知れない。台所のティッシュを調べてみよう…」
案の定ゴミ箱行きになりかけていたティッシュの箱から例の下剤の成分が確認され
た。−−ティッシュを持ってきたのは当日呼び出された三河屋−−いつも厚かましい
主婦A子にサービス品として供出させられた品々と一緒に運んできて、何気なく台所
に置いて行ったという。
「当の三河屋が、ティッシュに下剤をしみ込ませて置いていったと白状しました」
「やはりな。それで証拠のティッシュはどれくらい残ってたんだ?」
「いや、それが空き箱しか残ってなかったんですよ。なにせ一晩中トイレ通いだった
らしくて、被害者の主婦が使い切ってしまったようです」
使うたびに、また薬の効果が増幅されたかも知れない。しかしとてもティッシュを
不審に思う余裕は無かったろう。
「聞いてみれば、ささやかな抵抗ですねぇ」
「タチの悪い客に売値を叩かれたり、強引にサービスさせられたり…。せめて腹下し
でもさせて復讐したかったんだろうな」
「さて、この罪はどれぐらいのもんになるんでしょうね?やっぱり刑事事件になるん
でしょうか」
「まぁ、目をつぶってやっても良いんじゃないか?主婦のほうも復讐されたとなると
世間体が悪いし、証拠も不充分だしな。それにまがりなりにもアフターケアはしてあ
るんだから」
「はぁ?アフターケアと言いますと?」
「ティッシュだよ。腹を壊しても間に合うようにってな」
「なるほど…」
どうやらホシは自分の尻拭いにも成功したようであった。
(完)
2002年08月12日00時55分56秒投稿
S.S☆「怪談ボタン灯籠」☆ あや太郎
「暑いなぁ〜。こんな夜は何か怖くて涼しくなるような怖い話はないもんか?」
「そうだなぁ…。そう言やこんな事があったよ。…誰も居ない家の中でボンヤリ明か
りが灯るんだ」
「ほぉ…そりゃどこの話だ?」
「うちの近所に古いお屋敷風の家があって、毎晩のように女が一人、出入りしてたん
だが…」「なかなか色っぽそうな話じゃないか」
「それが不思議なんだ。荒れ果てた日本庭園の中にボタン灯籠が並んでるんだが、そ
の女が来るころになると、誰も居ないのに、ポーッと明かりが灯るんだよ」
「ちょっと怪談めいて来たが、屋敷には本当に誰も住んでないのかい?」
「人っ子ひとり居ない空き家なんだ。それなのに、まるで女を出迎えるように灯籠の
灯が勝手にポーッと…」
「怪しいと言えば怪しげな話だ。それで結局何なんだい、その女は?」
「実は空き家を掃除に来る女性なんだそうだ」
「何だ、色気のない」
「でも灯籠の一件は不気味だろう?震えて来ないかい?」
「震えるほどじゃないけど、曰く因縁のある灯籠なのかな?」
「曰く因縁はなさそうだが、近くに電源はありそうだな」
「何だい、その電源ってのは?」
「蝋燭じゃなくて電気で灯るようになってる灯籠だそうだ。ここらが現代的だな」
「じゃあ何かい……単なる電灯かい?それじゃ勝手に点くっていうのも、タイマーか
何かで点くんじゃないのか?」
「残念でした。実は掃除婦さんがそこへ来る前に携帯電話でアクセスして、スイッチ
を入れておくそうなんだ。真っ暗だと怖いからね」
「何だよ、それ…」
「携帯のボタンを押せば灯るから、これが本当のボタン灯籠ってね。どうだい…怖く
て涼しくなったろう?」
代わりに一座の空気が寒〜くなった。
(完)
2002年08月10日23時15分10秒投稿
S.S☆「自然界の掟―――オオカミ少年の巻」☆ あや太郎
「今日は久しぶりにイソップ童話から動物のお話をして上げましょうね」
「寓話や訓話なんてカッタるーい。眠たーい…」
「オオカミ少年の話よ。昔むかし、ある所に、羊飼いの少年がおりました。毎日退屈
な生活を繰り返していた少年はある時、ウソをついて村の人々を驚かせてやろうと思
いつきました。そしてこう叫んだんです。・・・オオカミが来た〜〜。オオカミが来
たぞ〜〜!…。
村人は子供や自分達の家畜が襲われないように大慌てで柵を閉じ、ドアを閉め、息を
潜めてオオカミに備えました。しばらくすると少年がまた叫びました・・・・オオカ
ミは帰ったぞ〜〜。最初の何度かは、みんな被害が無くて良かったと素直に喜んでい
ましたが、その内、それがあの羊飼いの少年の狂言だと気づき、もう誰も少年を信用
しなくなりました。
そうこうする内、ある日、本当にオオカミが村にやってきました。しかし少年が知ら
せても村人は信じません。オオカミに追いかけられて、少年はもう大慌て・・・。あ
ら、どうしたの、ケンちゃん。不満そうな顔して」
「だって、筋が通らない話だもん」
「あら、何が?」
「オオカミ少年って言うから…オオカミに育てられた少年の事かと思ってたら、オオ
カミが来たってウソをつく子の事だなんて」
「あら、どこがヘンなのよ。縮めてオオカミ少年って言うんじゃにいの」
「正確に言うなら…オオカミで遊ぶ少年とか、オオカミ・ネタでイチびる少年とか」
「そんな長ったらしい・・・」
「やっぱり正確さを期すべきですよ。先生。そのためには、せめて『オオカミと嘘つ
き少年』ぐらいのタイトルは必要…」
「んもう、理屈っぽいわねぇ。じゃあ、間を取って・・・オオカミと少年なら?」
「それじゃまるで、仲良し物語みたいだわ。予定調和的な昔話はもう要らない」
「まぁ、女の子たちまで夢の無いこと…。それじゃ妥協案として、オオカミと虚言癖
少年って所でどう?」
「う〜ん。その辺で手を打とうか」
「偉そうに…。あなた達にかかったら昔話もメルヘンも、ぜーんぶ改題の必要あり
ね」
「そうだよ。赤頭巾ちゃんだって、まるで可愛い格好のイメージだけど、あんな目立
つ
頭巾をかぶってたからオオカミに食べられちゃうんだよ。だから戒めの意味で、派手
な頭巾を否定しなくちゃ」
「じゃあ、どんなタイトルにするの?」
「赤い頭巾はもうかぶらない…とかね」
「白雪姫だって、そうだわ。如何にも色白で綺麗なイメージを売り物にしてるから、
毒リンゴを食べさせられちゃうのよ。もっと謙虚に…『ちょっと顔色が白いだけの女
です』にするべきだわ」
「どこかのCMみたいねぇ。じゃあ、シンデレラは?これはちょっと変えにくいでしょ
う」
「あ、シンデレラが死んでれら!…こんな縁起の悪い名前、変えなくちゃ。やっぱり
『イキテレラ』が健全で良いと思いまーす」
「理屈ねぇ。酒飲んでイキってるみたいだけど、まぁ元気そうで良いか。でも、人魚
姫は改名し様がないわね。魚みたいなお姫様…なんて野暮ったいわよ」
「その前に…本当のお姫様なんですか?即位はいつ?」
「そんな堅い話は抜き!お姫様って事にしたほうがロマンチックでししょ」
「じゃあ、お姫様に敬意を表して・・・半魚人・姫!…もっと現代風に・・・サイ
ボーグ姫鯛!」
「それなら、下半身魚娘のほうが悩ましくて良いよ」
「上半身に力点をおいて、オカシラ付き美女なんて、どうかな」
「尾頭付きはヘンだわ。上半身は人間なんだから……兜焼き姫!」
「ウロコ美人なんて、どうお?人面鯉のぼり…も使えそう」
「ウロコは下半身だけでしょ?でもパンツ履いたら、すぐ破れそう」
「どうやって、トイレするんだろう?海中だから拭かなくても良いのかなぁ・・・
ねぇねぇ、先生、どうなの?」
「もうメルヘンなんか要らない!」
――――――完――――――
2002年08月09日23時43分41秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
TEAM火の車稽古場 「噺家生活二十五周年記念 桂 都丸 25日間連続落語会」
8月7日
出し物
●「三人旅」 桂 しん吉
●「向う付け」 桂 都丸
中入
●「七段目」 桂 米左
●「花筏」 桂 都丸
至極順調に運んでた「花筏」。
全体の流れ、クライマックスの盛り上がりも申し分無かった。
客席も噺にのめり込んでました。
んで、落ち。
「花筏は張るのが上手いな。」
「張るのが上手い筈、提灯屋の職人でございます。」
大拍手…と、こぉなる筈やったんですけどね。
「張るのが上手い筈」で舌が縺れはったのか、あちゃちゃぁとなってしまいました。
「最後はビシッと決めてシュッと下りなあかんかったのに…。」
悔やむ事しきりの都丸さん、付け加えて
「うちの一門の特徴です。」
しかし、こない大爆笑の内に終わった「花筏」も珍しい。
これもライブならではのお楽しみ、醍醐味の一つと言う事にしときましょ。
都丸さんのお弟子さん、都んぼさんが出た京都の某高校。
〈お〉と〈を〉の使い分けが出来んとか〈J〉はどっちに曲げるのか知らん奴がおっ
たという、京都に有り乍ら東淀川辺りうろうろしてるよぉな、知ってる人は校名聞い
ただけでプッと笑うよぉな学校やそぉです。
都丸さんはと言えば、大学の試験に米朝一門の系図とか中華風甘酢あんの作り方なん
か書いたはったらしい。
誠に一本筋の通った師弟では有りますな。
そんな枕を振っての「向う付け」。
喜六が御寮さんに帳場を頼まれます。
が、彼は字の読み書きが出来ん。
ここからしばらくは演者さんによって2種類に分かれます。
自分が無筆である事に、家に戻る途中で喜六自身が気付く形と女房に指摘される形。
どちらでも後の展開には何の影響も無いんですけどね。
都丸さんは後者。
何かとちょっと嬉しい亭主としっかり女房の対比から言うたらこっちが正解かも。
米左さんは少々痩せはったかな?
気ぃ付けませんとね。
年に二人もとなると米朝師匠も辛すぎる…て、冗談冗談。
ほん僅かではありますが間のズレが気になった「七段目」。
井川ばりのチェンジアップですな。
これではヒットにならんわ。
「三人旅」は放送禁止用語が出て来るので公共の電波には乗らん噺。
言語の発声が困難な○シと聴覚障害の○ンボ。
最初の一場面だけですけどね。
この噺、昔は時々聴きました。
筋がはっきり記憶に有りますな。
しん吉さんは、阿呆らしいとぼけた味が捨て難いそぉです。
出来るだけ手掛けて行きたい、と。
高座に掛からんネタは死んでしまいますからな。
孤軍でも無いけど、奮闘して頂きましょ。
昔は同年輩の噺家さんと酔ぉては落語についてよぉ口論したそぉですな。
果てはどつき合いになる事も…。
きょう日の若い人はあんまり飲まん。
これは私もしばしば聞きます。
ケーキ食べ乍ら論争したりとかね。
一度あさ吉さんと雀喜さんが掴み合いの喧嘩になりかけた。
今の子ぉも変わらんねんなぁ、と思いきや、その場所がマクド。
当然まともな精神状態ですな。
芸人としてこれを真面目と言ぅてええもんかどぉか。
まぁ、飲んだから腕が上がるっちゅうもんでもありませんがね。
けど、シェイクの上の話では言い訳にならんわなぁ。
2002年08月09日12時58分58秒投稿
S.S☆「自然界の掟…?」・・・「猫かわいがり」☆ あや太郎
「…浅瀬に泳ぎ着いたクジラたちは、まだ身動きできずにいます。このままでは皮膚
が乾燥して死んでしまうかも知れません。あぁ、苦しそうに藻掻いて可哀想〜〜…。
地元では懸命の救出作業が続けられています・・・」
――――――
「みんなも見たでしょ、昨日のニュース。またクジラの群れが海岸に打ち上げられて
大変な騒ぎです。外国でもイルカの群れが川に迷い込んで、死んでしまったり、可哀
想なニュースが多いのよねぇ。これも海洋汚染のせいかしら。それともウイルスに感
染して方向感覚が狂ってしまったのかしら。世界中の人たちが心配しているんです
よ」
「ハーイ、先生。集団自殺だと思いまーす。ほっときましょう」
「あらまぁ、冷たい。確かに昔はそういう説もあったんだけど、色んな原因が考えら
れて、本当のところはまだ良く分かってないのよ」
「先生・・・人間だって、わざわざ、やってはイケない時に悪いことして、自分の会
社を潰したり、芸能界に復帰できなくしたりするんですよ。イルカやクジラは知能が
高いらしいから、きっとそれぐらいの芸当はやると思います」
「芸当?!まぁ、自殺じゃないとは言い切れないけどねぇ・・・」
「だから好きなようにさせてやったほうが親切ってもんだと思います。南無阿弥陀
仏…」
「それが、本人たちの気持ちとは別に、そう簡単には行かないのよねぇ。特にイルカ
やクジラとなると、見殺しにしてたら世界中から袋叩きにあわされるのよ。みんなも
知ってるでしょ?」
「ハーイ。特にアメリカなんかはウルサイでーす」
「ほんと、イルカやクジラだけは猫可愛がりなんだから」
「そうなのよ。何故イルカやクジラにこだわるんでしょう。みんなの意見は?」
「ハーイ。イルカやクジラは賢いと信じてるからでーす」
「ハーイ。テレビの腕白フリッパーの影響だと思いまーす」
「ハーイ。映画の『オルカ』や『白鯨』の影響だと重いまーす」
「ハーイ。おじゃ漫画・ゴンドウ君の影響だと思いまーす」
「誰なんだよ、権藤君って?先生、こいつ、ふざけてます」
「ほんと。勢いだけで言っちゃ駄目よ。それじゃ、あなた、代わりに答えなさい」
「ハーイ。牛肉を売らんが為だと思いまーす」
「まぁ、大人の意見ねぇ。凄いじゃない」
「ハーイ。今回の狂牛病事件も某国の画策でーす」
「まぁ、そこまで深読みする?」
「ブッシュが来た時にも、蒔いて行ってとか」
「あなたも、勢いだけで喋っちゃ駄目ですよぉ。どうもこのクラスは鋭いのか調子が
いいだけなのか分からない生徒が多いわねぇ。…それでは、鯨の調査をしている映像
を見て、授業を締めくくりましょう。…鯨の群れが泳いでいますねぇ。子供鯨を親達
が包み込むように泳いでゆきます。みんなで子鯨を育てるんですよぉ。ところがよく
見ると、その子鯨が血を流しています。何と背中に大怪我をしていました。恐らく大
きな船のスクリューか何かに引っ掛けられたんでしょう。泳ぎ方も弱弱しくて可哀想
ですね。すると血の匂いを嗅ぎつけたサメたちがやって来ました。一匹の子鯨に襲い
掛かります。動きが素早いので、親鯨たちも上手く守ってやれません。子鯨の命はも
う風前の灯火です。その時、調査船の船員達がオールや銛で船べりからサメたちを叩
き始めました。もう我慢できなかったんでしょうねぇ。サメはホウホウの体で逃げ出
し、子鯨は辛うじてピンチを凌ぎましたが、もちろんこれで助かった訳ではありませ
ん。これからも大きくなるまでに幾度となく危険にさらされるはずです。自然界っ
て、やっぱり厳しいですねぇ。じゃあ、きょうはこれでおしまい」 ・・・・
・
「あぁ、怖かった。血まみれのシーンなんて嫌い」
「人間の心も怖いよなぁ。その時の気分で狩りを楽しんだり、動物を助けたり」
「でも、クジラ対サメの構図はいつも一方的だね。絶対サメが悪役だもん。こないだ
見た番組でも、サメが他の魚を食べようと追っかけてたら、イルカがやって来て、餌
を横取りする気も無いくせに、サメを突っついて邪魔してたよ」
「またイルカはそんな事して遊ぶの好きだからなぁ」
「追っ払われたサメこそ良い迷惑だよ。こんな事が続いたら、おまんまもサンマも食
いあげだ」
「下手なシャレ。でも、食いっぱぐれたサメが人間を襲うとしたら怖いわねぇ。イル
カやクジラを大事にしたのが裏目に出ちゃうもの」
「そうだ、良い事がある。ネコザメを増やそう。ネコザメなら猫可愛がりするほかな
いから、腹もふくれて人間も襲われない」
「誰にも邪魔されないから、どんどんクジラを襲って、襲われたクジラが血をナガス
クジラ…なんちゃって」
「つまんなーいシャレ」
「じゃあ、このへんでオキゴンドウクジラ・・・チャンチャン」
――――完―――――
2002年08月08日23時27分57秒投稿
S.S☆「自然界の掟」・・・「クマ対サル」☆ あや太郎
「先生、サルは一番ニンゲンに近い動物ですよね?」
「そうですよ、霊長類といって、知能も高いし、骨格や体型や身体の動かし方も他の
動物とは比べ物にならないほど、人間に似てるものね」
「体付きや動き方だけなら…クマもずいぶん人間に似てると思うんですけど、クマは
どうして人間の近い親戚じゃないんですか?」
「ふむふむ。それはなかなか興味深い質問ねぇ。確かに二本足で立ったり歩いたりす
るし、手もかなり自由に使ってるしねぇ」
「顔だけが人間離れしてるんです。だから親戚にしてもらえないのかなぁ」
「確かに人間離れしてるわね。でも知能は昔考えられていたよりは高い事が分かって
きたそうだし、案外サルに負けないぐらい近い親戚かもよ」
「うちのオジサンも熊五郎って名前です」
「ケンちゃん・・・調子に乗らないでね。そんなオジサン居ないくせに。でも、サル
とクマ、どっちが人間に近いか比べてみるのも面白いわね。それじゃ今日の自習の
テーマは、それにしましょう。先生はお仕事があるから、みんなでしっかり勉強しな
さい。じゃあ、バイチャ…」
・ ・・・・・
「またズボラかましてるよ、あの先生」
「でも今日は話題を避けたかったんじゃない?」
「どうしてさ?」
「先生、どっちかって言うとサルっぽい性格だし、歩き方はクマっぽいし」
「そう言や、顔もパンダっぽいもんなぁ」
「あら、そんなに可愛らしい?」
「アイシャドーがハミ出したり、ファンデーションにムラがあったり、白黒ごちゃ混
ぜ゛の顔してる事が多いもん」
「男の子のくせに細かい所まで見てるわねぇ。ヤな子」
「総合すると、うちの担任はクマ科の生き物って訳だ。ふーむ、それで分かった」
「何が分かったの?」
「クマってさぁ、なかなか高等生物の仲間に入れてもらえないけど、本当はかなり知
能が高いんだって。手を使ったり、ちょっとした道具を使って餌の蜂蜜をほじくった
りもできるしね。それにもう一つ・・・知性が高い証拠があるらしいんだ」
「へぇ・・・それってナァに?」
「羞恥心さ。クマは類人猿よりも恥ずかしがるって感覚が発達してるんだってさ。だ
から、繁殖期になってHする時も、他人や小熊には見せないそうだよ」
「まぁ、奥ゆかしいのね。人間だって映画やビデオで見せてるのに」
「あれはビジネスだよ。仕事と割り切れば出来るところが、人間の凄いところさ」
「それはイイけど、うちの先生がクマ科らしいって言ったのは、どういう意味?」
「ほら、合コン通いしてても、決して生徒にはバラさない。あくまでも、こっそり隠
れて行こうとするだろ。その辺の羞恥心がクマにも負けてないって事さ」
「じゃあ、先生はクマ並の羞恥心なの?ちょっと可哀想だわ。それに先生の場合、
こっそり行ってても生徒にはバレバレだし」
「じゃあ、お人よしのクマかな。そう思えば可愛さが倍増する」
「何だか馬鹿にしすぎ〜。言いつけてやろう」
「あっ、余計な告げ口するなよ。それでなくても最近、睨まれてるのに」
「じぉあ、少しはフォローして上げなさいよ」
「そうだなぁ・・・。うちの先生はやっぱりクマ以上、類人猿以上だな。いや、人間
の中でも相当知性が高いほうだね」
「思いつきだけじゃ駄目よ。ちゃんとした理由を言わなきゃ」
「だからね・・・合コン通いも隠すほど羞恥心もあるし…」
「それから…?」
「彼に貢いでお金が無くなったら・・・風俗に働きに行くような切り替えも出来そう
だし、本当に知性の高い生き物だなぁって」
「停学〜〜!」
―――――完――――――
2002年08月07日18時10分05秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
TEAM火の車稽古場 「噺家生活二十五周年記念 桂 都丸 25日間連続落語会」
8月4日
出し物
●「月並丁稚」 桂 ちょうば
●「へっつい盗人」 桂 都丸
中入
●「鴻池の犬」 桂 出丸
●「鹿政談」 桂 都丸
初日から毎日話したはる入門以来のエピソード。
この日は16〜7年前のハワイ旅行の話。
〈米朝一門とハワイへ行こう〉という企画で、大御所を筆頭に枝雀さん、朝丸時代の
ざこばさん以下一門の殆どが行かはったんやそぉです。
早ぉ言うたら客共々ハワイまで行って落語会を開くというもの。
今時のもんやおませんな。
到着直後から不機嫌にさせられる事続きの米朝師匠。
帰りに「こんな事は二度とせん!」
飛行機に酒持ち込んでずっと飲んではうろついたはった枝雀さん。
現地でも一人でうろうろ。
どぉしてもマリファナを吸うてみたいざこばさん。
都丸さんは着くなり200ドル渡されて暢達のためにワイキキビーチへ。
いかにもそれらしい白人が近寄って来て指2本立て、
「マリファナ、ツーハンドレッドダラ。」
お誂え向きや、と思ぉて200ドル出すと相手も200ドル差し出して…。
「誰が売人やねん。」
帰国前夜、酔ぉたざこばさんのお供でダウンタウンへ。
乗ったタクシーの運転手から待望のマリファナを入手します。
車内で吸うたざこばさんはスーパーハイテンション、幻覚幻聴異常行動の連続。
ホテルに帰ってからも一晩中大騒ぎ。
世話する都丸さんは気が気や無い。
そのせいか自分も一服吸うたが何の兆候も現われませんな。
翌日、ざこばさんは昨夜の出来事などまったく記憶にありません。
で、都丸さんが残った1本を添乗員に見せますと、実は偽物。
そこいらの芝生かなんかを干したもんやった。
ざこばさんはマリファナを吸うたと思ぉただけでハイになってたんですな。
「別にセブンスターでもよかったんですわ。」
と、都丸さん。
ほんま、気持ちに正直と言うのか…影響されやすいにも程が有る。
「へっつい盗人」はこの日の狙い撃ちネタ。
噺自体が面白い故、どなたがやらはっても…ところがそぉや無い。
クライマックスの道具屋前で失速する人が結構いたはります。
客にしてみたら、ここはもっと面白いのと違うの?なんて思うんですな。
都丸さんは期待通りの出来。
小悪事が心底楽しゅうてならん喜六。
彼に計画を尽く覆される清八の必死な様といら立ち。
エキセントリックになっていく二人の対比が爆笑もんでした。
「鹿政談」。
一門によって豆腐屋六兵衛の年齢が異なりますな。
米朝一門は42歳。
もっと上の設定で、夫婦が「お爺さん」「婆どん」と呼び合うとこもあります。
けど、そない年寄りやったら子供もそこそこの歳っちゅう事になりますわな。
すでに跡継いでるやろぉし、こんな一大事に台詞のひとつも無かったらおかしい。
子供が無いなら無いで説明せにゃならんやろぉしね。
要素が増えてしまいます。
やっぱり厄そこそこがよろしいよぉで。
長身でスリムな出丸さん。
「鴻池の犬」の主犬公クロにしては少々貫禄不足のよぉな…。
あくまで見た目の話ですけどね。
捨てられた弟が身の上話をする時の表情がなんとも言えませんな。
時折自虐的な笑みを浮かべ乍ら、おどおどした上目遣いで兄を見ます。
生育環境の違い並びに個体固有の心的作用が犬格形成に及ぼす影響。
力関係が如実に現われるシーンですな。
この噺のテーマは〈運・不運〉。
クロはもちろんラッキーの固まりですけど、この弟も幸運ですわな。
大出世の長兄に偶然出逢うやなんてね。
以後日々の暮らしに追われる事は無いでしょぉ。
としたら、不運を一身に背負うたんは若ぉして不慮の死を遂げた中ぼんですわ。
憑いて無いとぼやけるのも生きてりゃこそですな。
ざこば一門の末っ子、ちょうばさん。
確か以前に朝丸と書いてしもぉた記憶が有ります。
慎んでお詫びしといたろ。
23歳でキャリア9ヵ月。
つまり、彼が産まれた時すでに都丸さんは噺家やったはったわけですな。
という事で、しばらくは兄さんと呼ぶべきか師匠と呼ぶべきか迷ぉたんやそぉです。
どちらで呼んでもあの大きな目を剥いてむっとした表情。
悩んだ挙げ句出た答が、元々あんな顔したはるんや。
正解ですな。
「月並丁稚」は、まぁそれなりに…そんなんでした。
2002年08月07日18時10分05秒投稿
S.S☆「命取り」☆ あや太郎
今時珍しい「王国」があった。
絶対君主の王様が居て、すべての決定権を有し、国を治めている。
ずいぶん時代錯誤的な存在にも思えるのだが、何と言っても代々名君ぞろいで、先
ず国民の期待や心情を裏切るという事が無い。そんなお蔭で、新世紀に入った今も国
民の絶大な支持を得、王国の体制を営々と保っていた。
今日も今日とて、王様が主催する国会では、各役人たちが画期的な政策を提案する
様子が賑々しくテレビ中継されていた。。
「・・・という訳でぇ、世界的な不景気と金融不安の中、我々が取るべき道は…国際
的な統一規格と決別し、経済的自給自足とも言うべき、独自の独立した経済体制であ
りましょう。経済のグローバル化、体制の統一化は間違っています。たとえEU、ア
メリカ、東アジアとの交易が停滞しようとも、我が国は自分の足元を見直し、慎まし
くも堅実な道を行くべきであります。如何お考えですか、議長?」
議長とは、他でもない国王のことであった。
「悪くない。なかなかに穿った、鋭い見方である。今後重点的に検討できるよう研究
機関を設置しようではないか」
すると、次の発言者が手を上げた。
先進的といわれる経済学者出身の議員である。
「わたくしは反対です。経済のグローバル化に背くなど、時代の流れに逆行するに等
しい。経済の統一化はもはや流れを変えられるものではなく、逆流する事も、逃げ出
す事もすでに手遅れなのです。新しい時代が来るたびに疑い、新しいものを見るたび
に恐れている人々は、いつも致命的な落伍者となって来ました。そんな轍を踏むのは
実に愚かしい。我が国も足踏みしている場合ではありません。一刻も早く加速すべき
なのです」
議場の議員達から大きな拍手が涌いた。
多くが、流れに乗り遅れることを恐れていた。
議長である王様は、しかし悠然と聞き返した。
「流れに乗り遅れる…というのは、そんなに怖いことなのかね?」
「はぁ?…と申されますと?」
「学者や評論家は、常に新しい発想、新しい体制を好むようだが、その際、念仏のよ
うに、遅れるな…遅れるな…と脅し文句をかける。確かに乗り遅れた者は大もうけは
出来ないだろう。その代わり、大損もしないのではないか?…大損するのは乗り遅れ
まいと焦って、結局乗り遅れてしまった者たちのような気がする。昔ながらの生活を
している者は、たいした進歩はしないだろうが、大した失敗もしない。そんな静かな
暮らしが、人にとって不幸だとだ加減できるだろうか?」
「いえ、王様。お言葉を返すようですが、やはり進歩の無い社会に未来はありませ
ん。若者達が愛想を尽かします。たえず前向きに変化をしている社会でないと、国民
は夢や希望を持てないのです。だから、リスクは多くとも、大胆な経済改革や体制の
変革をお願いしたいのです」
「ふむ。その意見、よく分かった。それでは独自路線派と同様、グローバル化推進省
を設立し、その大臣に着任してくれたまえ」
「有りがたき幸せ。この上は国家のため、そして国王のため、命を賭けて、新制度の
確立に邁進いたします」
「その覚悟や良し。…と言うのも、今や国内外では経済の世界統一に関して懐疑的な
意見が噴出しておる。民族主義者の過激な抵抗勢力がテロ、暗殺も辞さずと手ぐすね
を引いておるそうな。だからして、その大臣ともなると幾つ命があっても足りん。掛
け値なしで命を賭けて頑張ってくれるように」
「えっ、そんな物騒な状況なんですか?まさか例の国際テロ集団なんかも…?」
「そのマサカだ。先進国経済との絶縁を謳うあの過激集団も我が国に出入りし、過激
抵抗勢力と手を組んで行動の機会を狙っているそうな。くれぐれも気を付けてくれ」
「王様・・・大臣就任など身に余る光栄ではございますが、当方浅学非才、とてもそ
のような大任をこなせるとは思えません。また勉強し直して参りますので、今回の件
につきましては御恐れながら辞退させて頂きます」
「ふむ、なるほど。…いや、辞退するのは良いが、我が国の議会では公約を破ったも
のには罰が科せられる事は知っておるな。貴公の言動はそれに当てはまると思うが、
どうじゃな?」
「は、はい。致し方ありません。謹んで罰をお受けいたします。潔く経済計画庁のポ
ストも離れる覚悟で・・・」
「罰の内容は…確か国王が決めることになっておったのぉ。ならば判決を言い渡す。
その方に…死刑を申し付ける」
「ヒエ〜〜…。そんな御無体な!わたしは単に職を辞しただけですぞ」
「辞し方が悪かったな。さっき貴公は命を賭けて事に当たると申したではないか。そ
れを反故にしたからには命をもって責任をとるほか有るまい.その方が自ら決めたよ
うなもんじゃ。文句は言わさぬ」
「トホホホ・・・あんまりだ。命を賭けると言ったのは言葉のアヤじゃないですか。
誰が本気で命を賭けてまで働くんです。勢いで言っただけなんです。だから命だけは
お助けを…!」
「ふむ、そうであったか。実は命を賭けてなかったと申すなら、この責めは重すぎる
のぉ。
代わりに、一ヶ月の減俸としよう」
「えっ、それだけの罰で済むんですか?バンザーイ!良かった良かった。やはり王様
は寛大なお方だ。有りがたや有りがたや…」
その狂喜乱舞する様に、王様は変わらぬ口調でこう言った。
「喜ぶのは良いが,その方、テレビ中継されておるのを忘れておるな。国民は一部始
終を見てしまったのじゃ。本当に命が助かったものかどうか、もう一度ゆっくり考え
てみよ」
議員はカメラの向こうの国民が寄越す冷たい視線を改めて感じた。
そして、もちろんハッキリと悟った。・・・政治家として、「別な命」を完全に
失ったことを。
――――完――――
2002年08月05日23時42分03秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
7月30日 太融寺「千朝落語を聴く会」
出し物
●「近日息子」 桂 まん我
●「夏の医者」 桂 千朝
●「風呂敷」 桂 団朝
●「抜け雀」 桂 千朝
「抜け雀」は絵描きを扱ぉた稀な一品。
一連の左甚五郎もんも同系列と言うてええでしょぉ。
この類いの噺は結構好きですね。
天才アーティスト達の人智を超越した仕事振りが痛快で、後に心地良さが残ります。
千朝さんは、大らかで楽天的、しかも風格ある主人公を的確に描いたはりました。
千朝さんお得意の「夏の医者」。
先生の飄々とした、それでいて腹の座った処も有る人物像が何とも言えませんな。
単にとことん呑気なだけなのかも知れませんがね。
病人の元へ急ぐ二人が昼寝中の蟒蛇を踏み付けてしまいます。
ぐぅっと鎌首持ち上げた蟒蛇。
千朝さんは横座りの形になって
「痛い!痛いやないの!」
と、ここはこんなゲイ風で…。
自称米朝一門の武闘派団朝さん。
枕の中で言わはったんですけど、米朝師匠のNHKスペシャルは再放送しないという約
束やったそぉです。
が、担当プロデューサーが米朝事務所に無断で流した。
なんちゅうゴーマンミチコ。
その人、即左遷されたとのことです。
「風呂敷」の女房は、間男する身でありながら亭主にも未練が残ってます。
その辺りの表現にもぉ少々細やかさがあったらなぁ、と思いました。
けど、この女房は後半まったく登場しませんからな。
そこまで気ぃ配る必要も無いか。
何にしても、シンプルでコンパクトな噺を元気に語って元気に下りはりました。
まん我さんの「近日息子」。
よぉ噛むのに消化が悪い。
元気はあるし独自の工夫も見えるんですけど、まだ噺が身に付いて無い感じでした。
トップバッターの若手さんの事やから、少々無理からでも笑ぉとするんですけどどぉ
もテンションが上がらん。
高座がヒートアップすればする程、こっちは冷めていくっちゅうパターン。
この人のお楽しみはもっと先にあるよぉですな。
毎度お馴染み、お詫びと訂正。
8月1日投稿「桂 米二MINAMI出張所・菊江仏壇」の感想文中、〈奉行人〉とあるのは
〈奉公人〉の誤りです。
パッと見役人みたいで変やと思ぉたんですけどね。
ここはひとつ暑さの所為にしとこ。
2002年08月05日14時31分17秒投稿
S.S☆「イイじゃない…」☆ あや太郎
とある人気文化人のパーティに熱心なファン連中が集まった。
「いつもながらスカッとしますわねぇ、田原坂コロブさんのお話。社会の矛盾点をズ
バリと突いてくれて」
「特に男女の不平等については、偉そうにしてる男供をビシビシ突っ込むから痛快だ
わぁ。でも男性ファンにとっては耳が痛いかしら?」
「いやいや、僕らも気づかない点を指摘されて勉強になりますよ。田原坂女史のおっ
しゃってる事は概ね正論だと思いますしね。またそれだからこうやって後援者の集い
に参加してる訳ですから」
「同感ですな。今の世の中が停滞してるのも男性中心社会の弊害が吹き出てきた結果
でしょう。そういう隠れた問題点はドンドンと追求してもらわなくちゃ」
「あーら、話の分かる紳士たちだわ。そういう人たちに声援して貰えれば、今度の選
挙は当選確実ね」
「えっ、選挙に出るんですか?知らなかったなぁ。まぁ、確かに国会へ行って社会制
度の矛盾を正して貰えたら結構な事だが・・・。じゃあ、これも選挙資金集めのパー
ティなのかな?」
「そう考えると些か抵抗があるな。それにテレビ・ラジオのご意見番と政治家はまた
違うだろうしね」
「あーら、そんな言い方は職業差別、いえ、男女差別の匂いがしますわよ。まぁ、い
きなり政治家として活躍できるかどうかは別としても、あの当意即妙のやり取りを国
会中継でもお聞きしたいもんですわ」
「そうよねぇ。あの痛快で面白くって……痛快で面白くって……痛快で面白い話術を
国会の場でも、ねぇえ?」
「痛快と言うのは分かるんですがね。面白いですかねぇ?真面目な討論会なんかに出
られた時は正に水を得た魚という所だが、娯楽番組では如何なものか」
「僕も娯楽的なトークショーには出ないほうが良いと思いますな。元々が真面目な学
者肌だから、バラエティの雰囲気には合わないと思うんだなぁ。番組の流れに水を差
して、言いっぱなしで終わっちゃう事が多いから、イメージダウンになりかねない」
「あら、そんな事ないと思いますわよ。痛快で面白くって……痛快で面白くって……
それから場を白けさすぐらい痛快で面白くって…」
「まぁ、好みは様々ですからなぁ。それよりパーティのご馳走手もいただきましょう
か。
おっ、好物の唐揚げがある。天ぷらもある。ローストビーフもあるし生ハムもいただ
こう……。高い会費を取り戻さなきゃ」
「まぁ、近頃の殿方はセコイんだから…。それに、そんな油モノばかり食べてたら栄
養が片寄りますわよ。ほら、もっとサラダも食べなくちゃ。果物も食べて、温野菜で
繊維質も取って…」
「いや、あのね…。僕は栄養学には興味ないんですよ。栄養士とは相性が悪くてね。
それに毎日、油物ばかり食べてる訳じゃないしね。普段はバランスを考えて食べてま
すし、腹八分を守ってますから。どうぞご心配なく」
「いえ、だけどね・・・ほら、また油っこいモノを…。そんなに偏った食べ方しちゃ
生活習慣病の素…」
「いや、だからね・・・。普段気をつけてますからお気遣い無く」
「あらら、またコレステロールの高いものを!これは不健康だわ。少なくとも倍の量
の温野菜を食べてもらわないと…。血液検査した上で改めて栄養摂取のバランス
を…」
「うるさいなぁ。たまに好きなものだけ食べたってバチは当たらんでしょう」
「あら、何よ、その言い方。親切で言ってるんだから素直に聞けばイイじゃない!」
「全くもって、うるさい連中だ。気分が悪い、もう帰る!・・・」
「・・・なんてやり取りがあって、楽しい雰囲気も台無し。やっぱり男は傲慢ですわ
ねぇ。少しぐらい耳が痛いからって、為になる話なんだから、素直に聞いてくれたっ
てイイじゃないよねぇ、田原坂先生?」
「ホホホホホ。そりゃ駄目よ。好きなものを食べたいって人に栄養学の話をしたっ
て、それは筋違い・・・論理のすり替えだって言い返されたらそれまでよ。ちゃんと
話の流れの中で、助言して上げなくちゃ」
「話の流れについて、先生に言われるとは思わなかったわ…」
「えっ、何ですって?」
「いえ、あの・・・そうはおっしゃいますけど、先生だってトーク番組の中で、上手
く話題を変えるじゃありませんか。都合が悪くなると『知らないわよ』『いいじゃな
いの』『ほっといてよ』って調子で」
「あら、それは私が学歴と実績のある文化人だからよ。だから多少強引でも一応説得
力があるんじゃないの。その点、、あなた方はタダのおばさんたちなんだから、そん
な筋違いの下手くそな論理じゃ通用しない訳よ。もっと勉強しなくっちや。私の本を
どんどん読みなさい。えっ…そんな言い方は如何なものか?…いいじゃない、本当の
ことなんだから。その代わり、選挙で当選した暁には、みんなのために良い法律を
作ってあげるから…。
普通のおばさんには出来ない事なんだから私に任せなさい。みんなついてくれば良い
のよ。あら、どうしたの、その顔?…何だか引きつってるわよ。あら、紙バッグから
何を取り出してるの?…なーんだ、パーティの余り物のお菓子や果物ね。良い心掛け
だわ。残り物を粗末にしちゃイケません。近頃の主婦は贅沢で困る。もっと物を大切
にしなくちゃ。…あら、ケーキを手に持ってどうしたの?……きゃあああ!…ぶつけ
るだなんて、何てことを…。あぁあ、ドレスが汚れ放題。クリーニングで取れるかし
ら?…お気に入りの服なのに、汚れがシミになったらドウするのよ!」
「服に汚点が残るぐらい……イイじゃない!」
―――――完―――――
2002年08月04日22時56分23秒投稿
S.S☆「売り言葉に買い言葉」☆ あや太郎
「あんたって亭主は本当に何て人なの?あれだけ懲りて、もう二度と浮気なんてしま
せん、と誓いながら、またまたご熱心に本気の浮気!世間同様、不景気で生活費もま
まならないっていうのに、よく女を囲うお金があったわね!」
「そうは言うけどさ・・・そんな楽しみがあるから働いた上にも働いて、人並み以上
に儲けようと頑張れるんだぜ。俺から遊びを奪ったら、我が家の生活費だって稼げる
かどうか…」
「へぇ〜〜え、開き直る?浮気が仕事の原動力で、妻子もそのお零れで食べさせても
らってるってか?馬鹿〜〜!どのツラ下げて、そんな言い訳できると思ってるの?い
つ私が浮気を公認したの?いくら、それが生き甲斐だって言っても駄目よ。もうあの
女子大生には手切れ金渡してマンションから追い出してやったから。これからはひた
すら反省と勤勉の日々よ」
「トホホホホ…。元気出ないなあ」
「当然の罰だし、当然の義務よ。家庭のために仕事一筋で行きなさい。そしてこれか
らは私一筋に励みなさい」
「お前一筋に励むって何だよ?」
「つまり、私という女性だけを愛しなさいって事よ。あなたの罪は浮気したり、家の
金を持ち出したりした事だけじゃないのよ。私へのサービスを怠った罪はもっと大き
いんだから、これからは大いに『励む』ことね。そんな不貞亭主を受け入れて上げる
寛大さに感謝しなさい」
「トホホホ…。いよいよ元気出ないなぁ…」
「どうしてよ。私に何か不満でもあるの。あなた好みのグラマーな体型は保ってる
し、何より、やる気満々よ」
「グラマー過ぎるんじゃないかぁ?何でもかんでも食べるし飲むし…」
「それは、家庭内の孤独ゆえじゃないの。あなたの浮気がそうさせたのよ」
「いや、昔から食ってた。以前から飲んでた」
「細かいこと言わないでよ。妻子に腹いっぱい食べさせる甲斐性ぐらい持ちなさい
よ」
「でも食べさせた結果がこれだとなぁ。ブロイラーぐらい食うのにブロイラーみたい
には売れないし」
「ニワトリ扱いするだなんて、失礼にも程があるわ。自分がどんなにひどい亭主で、
どんなにひどい事して来たか、ちっとも反省してない。何て人なの!」
「お前だって、ひどい食い方して、ひどい型崩れして、亭主をひどく失望させてる事
に気づいてないだろう」
「まだ言う?あんたなんて最低!家族を犠牲にして遊びほうけて、ケロリとしてる。
あんたなんか人間じゃないわ。ハッキリ言わしてもらうけど・・・この鬼畜!」
「やかましい。こっちもハッキリ言わして貰うけど・・・この家畜!」
血の雨が降るまで痴話喧嘩は続くのでありました。
―――――完――――――
2002年08月03日23時41分28秒投稿
S.S☆「お呼び出し」☆ あや太郎
病院生活をしていると、結構全館放送の『呼び出し』を耳にする。
「三階西棟の山田様・・・お部屋までお戻りください」
こういう呼び出しの場合、大抵は元気な患者である。暇つぶしに散歩したり喫茶室
でお茶でも飲んだり・・・それを回診や検査時間に合わせて呼び戻すのだ。
「小児科外来受診の田中大輔様、さやか様。診察室までお越しください」
これは子供と言うより付き添いの親への呼びかけである。この名前が一世代前のも
のになると、診療が済んだ子供を迎えに来いという意味になる。
「六階東病棟の権藤権三郎様のご家族の方・・・至急、病室までお戻りください」
これはかなり緊迫して来る。特に、数度繰り返した場合には『危篤状態』のご臨終直
前と言ったところか。但し、「急かす」雰囲気が無い場合は、入院したばかりの老患
者に代わり、家族が手続きをしたり、説明を受ける場合が多い。ここいらはアナウン
スの勘所だ。
しかし、たまには更に緊迫した呼び出しを聞く事もある。
「五階西病棟に入院中の丹波剛之輔様。至急、病室にお戻りください」
先ず、おや?と思った。
この患者は家族と面識があり、一応は知っている。但し、口は聞いた事が無い。な
ぜなら、入院時から昏睡状態で、意識が戻らないのだ。
「ふらふら出歩くぐらい元気になっていたのか…?」
怪訝な思いでいると、また緊迫した「お呼び出し」が掛かった。
「丹波剛之輔様、至急お戻りください。魂だけ抜け出すと心臓も脳波も停止してしま
います。大急ぎで自分の身体にお戻りください・・・」
―――――完―――――
2002年08月02日23時10分19秒投稿
S.S☆「リサイクルvs暗殺」☆ あや太郎
会長は、一国の経済を牛耳るほどの力を持っていた。
彼は正しく超大物財界人である…というその一方で、国家自体、小さく頼りない存
在であったため、大富豪の彼が有力な次期大統領候補となった。
「我が政府は金遣いが荒すぎる。カネや資源や人材を無駄遣いしない政策…これこそ
国家を救う最善策であります。ケチ、ケチ、ケチの精神と徹底したリサイクルで今後
十年間をかけ経済基盤を再生させねばならない。無駄は敵だ。物を大切にしよう。ゴ
ミでも何でも一度は拾って再利用できるかどうか確かめよう。目指せ、リサイクル立
国!」
国民も背に腹は変えられぬ。国家建て直しの望みをこのケチケチ資本家に賭けよう
という風向きとなり、次期大統領の座は確実視されていた。
すると当然、抵抗勢力が立ち上がる。
「ケチケチしている政府では先が思いやられる。リサイクルだと?そんな事ばかり
やってては新しい製品も新興企業も伸びないではないか。土地も上がらなけりゃ夜の
街も潤わない。これでは我々のほうが上がったりだ」
闇の世界で商売をする面々は早速、次期大統領暗殺の計画を練った。
選りすぐりの殺し屋連中が集結した。
滅多に人前へ姿を現さないケチケチ資本家だったが、唯一朝のジョギングは欠かさ
ないという。但し,ひと気の無い近所の国有地の公園を四方SPに囲まれてのジョギン
グだから、とても暗殺などは実行できない…という相手の隙を突き、敢えて狙おうと
いう計画が出来上がった。
国有公園なので出入りする際には銃火器などの有無を厳重にチェックされる。
そこで「車」を武器にしようという妙案がひねり出された。
そもそも、この大富豪には、ケチゆえに何でも拾うという癖がある。
そこで、
1.車で走り抜ける際、何かまだ使えそうなものをポイ捨てする。
2.富豪がそれをうっかり拾おうとするところを、急ターンした車が撥ねる。
3.更に、撥ねられたのは「ケチゆえの悲劇」と喧伝する。
「それが狙い目だ」
ケチゆえに災難に遭ったと知れれば、世間への「警鐘」にもなろうというものだ。
― − − −
ある朝、大統領候補はいつも通り、国有公園の周辺をジョギングしていた。
四方はガッチリとボディガードが固めている。銃こそ携帯していないが、それに代
わる電気ショック・ガンやサバイバル・ナイフ、棍棒、目潰しスプレーなどは常に隠
して携帯している。
見かけより厳重な装備の一団を公園の外から確認しながら、連絡係がケイタイで指
令を出した。
「間もなく中央道路の脇を走る。作戦開始だ」
「分かったわ」
女の声が答えて、発進音が聞こえた。
広大な公園の中央に一本だけ車道が走っている。
通行者は厳重な検問を受け、武器類は一切持ち込めない。
その検問を笑顔でくぐった女殺し屋の車にも荷物は昼食用とおぼしき果物やパンの
入った紙袋だけだった。
どケチ富豪が中央道沿いの歩道に入るのを正面に捉えながら、女の小型車はゆっく
りと車道に乗り入れた。どう見ても運転慣れしていない買い物帰りの主婦の乗り方
だ。
心地よい風を受けようと窓を開け放っている。例の紙袋が今にも窓から落ちそうに
なっている。
車とジョギングの一行が正面から接近した。
接近と言って、歩道と車道は20メートルほども離れている。間には植え込みもあ
るし、何より数段もある沿石が両者を厳然と仕切っている。絶対に車のほうから乗り
上げる事はできない。富豪が設計し寄付したというこの公園の、これも安全対策の一
つであった。
今しも車と富豪が行き違えようとしていた。その時・・・
バラバラッ・・・と小さな車の窓から何かが転がり出た。例の果物やパンであっ
た。
走りすぎようとする富豪の目に、それはぜつみようのタイミングで写った。
車も一瞬停止した。若妻風の女が窓から顔を出し、こぼれ落ちた食べ物を見た。
ちょっと惜しそうな顔をして、しかし、彼女はゆっくりと車を発進させた。
「汚れちゃったから、もうイイか…」
唇がそう動いたように見えた。
それを目にした富豪がムッとした表情で足を止めた。
「勿体無い。洗えば済むものを」
さすがは倹約節約の権化・・・評判通り、まだ瑞々しい果物を見捨て切れない様子
で眺めたと思うと、一歩二歩、車道に向けて歩き出した。SPが止めようとするのを
苦笑で制止し、富豪はついに石段を下りて、転がる哀れな果物たちの所へ歩み寄っ
た。
「傷も付いてない。このまま食べられるじゃないか」
紙袋に詰め込んだ時、さっきの軽自動車がUターンしたのが見えた。ゆっくりと
戻って来る。勿体無い事をしたのに気がついたのだろう。
ボディガードたちの顔が一瞬ほころんだ時、車の速度が急に上がった。
「ワワッ…!」
笑みを浮かべていた富豪の顔が引きつった。
小型車とは思えないほどの急加速で突っ込んで来る。特殊な改造を加えた車に違いな
かった。
虚を突かれた富豪の足がもつれた。SPたちの反応も手遅れだった。
突如レース・マシンと化した女の車は、逃さず次期大統領候補を撥ね飛ばし、アッ
と言う間に中央道から姿を消した。
同時に検問所を襲った暴漢数名と共に女の車が警備網を突破した事は言うまでもな
い。
しかし、昼のニュース・ショーで意気軒高に選挙戦への抱負を語る大富豪を見て、
暗殺者たちは唖然とした。
「ど、どういうこった…?」
政治論議の後、今朝起きた「暗殺未遂」の一件がようやく報道された。
「未遂とは言いましたが、実は身代わりの男性が一人撥ねられ死亡しました。危ない
所でしたね、ご本人も」
「いや、私は多くの影武者に守られているので、敵も的を絞れないでしょうよ。それ
より、今は心から身代わりになってくれた彼の冥福を祈りたいと思います」
「こんな時に、失礼な質問ですが、倹約節約を旨となさっているあなたが影武者を養
成し高給で雇っているとは意外でした。信条的に抵抗はありませんか?」
「私のもう一つの信条を忘れてもらっては困りますな。リサイクルですよ。定年退職
した後も働きたい・・いや、働かねば成らないというご時世です。そんな人材の中か
ら私と年恰好の似た人間を選び、影武者として養成しておるんですよ。皆さん、くれ
ぐれも物を大切に。リサイクルに励みましょう。リサイクルは必ず我が身を助けてく
れます!」
―――――完―――――
2002年08月01日23時13分03秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
7月29日 ワッハ上方レッスンルーム 「桂 米二MINAMI出張所」
出し物
●「宿屋町」 桂 吉坊
●「子ほめ」 桂 米二
●「くっしゃみ講釈」 桂 こごろう
●「菊江仏壇」 桂 米二
大物「菊江仏壇」。
米二さんは好きやないそぉです。
確かに救いの無い噺ですな。
すべては若旦那のあんまりな情の無さに起因します。
加えて、番頭はじめ奉行人達の不忠振り。
まぁ、なんぼ世話になってる主家でも他人事やからね。
これは言うてやれんか。
この若旦那は、上方落語の登場人物中屈指の悪人やと言えますな。
算段の平兵衛と肩並べてスキップでもしよぉかっちゅう位のもんです。
それでも米朝師匠は、心ばかりの救済処置を施したはります。
宴会の場面、菊江との会話の中にお花の事が気に掛かってるよぉな雰囲気。
ほんの僅か、一瞬、ちらっと覗くだけですけどね。
が、譲歩もここ迄。
一時はだだけ倒してまでも嫁に欲しいと願ぉた女。
それをこぉまで簡単に見放してしまえるなんぞは、父子家庭故の甘やかしという要素
はあるにしても、生来の悪人としか言えません。
とても許されるべき所行や無いでしょぉ。
それが決してデフォルメされた人物像で無いところが余計おぞましい。
確かに、世間にはこの噺と根っこを同じゅうしてるよぉな現実は存在しますがね。
「たちぎれ」も然りなんですけど、この噺の後日譚が気になります。
仏壇の中の菊江をお花の亡霊と間違ぉて、きっと倅は改心させると誓う親旦那。
無理やと思いますな。
当座は大人しゅうしてるかも知れませんけどね。
跡取り息子の事で坊主にもできず、相変わらず口煩ぉ言うだけでは効果は無いわね。
お定まりの没落の図式が容易に描けます。
ほんま、救われんなぁ。
終盤声が掠れ気味になったはった米二さん。
噺自体の閉塞感に加えて大勢の登場人物の演じ分け。
やっぱり消耗するんですなぁ。
さすが大ネタの破壊力。
古参の奉行人佐助が酔っ払ぉて管を巻く場面。
昔の事を繰り返し繰り返し口走っては若旦那に煩ぉがられ、それに逆切れするかと思
えば笑い、泣き、ついに潰れてしまいます。
ここは酔いの度合いを段階的に表現せねばなりません。
それも素面からや無しにかなり廻った状態からですから、よっぽどきっちりした計算
が立ってないと表現できませんな。
その辺り少々もたつきばらつきしたはりました。
何にしても、聴いたら聴いただけ後味の悪さが癖になる噺ではあります。
出ましたなぁ、こごろうさんの「くっしゃみ講釈」。
先日の大事件後稽古しはったんでしょぉな。
今回は滞り無くクリア。
まだちょっとぎこちない部分もありましたけどね。
これでもぉ安心でしょぉ。
しかし、問題の場面が近付いて来たら、なんやこっちがドキドキしましたな。
もぉ一回同じ事に遭遇したらどんな顔してええのか分からんもんね。
気ぃ遣わすのはこれっきりにして頂きたいね、ほんまに。
けど、次回の〈こごろう堂〉に向けて結構な予行演習が出来ましたな。
その代わりに、会の始まりを告げる二番太鼓をとちったらしい。
ほんまにだいじょぉぶ?
2002年08月01日15時23分18秒投稿
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