過去のドンドコ掲示板
2002年06月01日〜15日

S.S☆「アイドルらしく」☆     あや太郎

「本日のゲストは、人気急上昇中のアイドル・水瑞椎ちゃんです」
「ミズミズ・シーです。よろしくお願いしまーす」
「さて、シーちゃん…今日は鋭い質問をズバズバぶつけて行きますけど、覚悟は良い
かな?」
「ハイ。何でもスイスイ答えちゃいまーす」
「さすがは今時のアイドル−−−物おじしてないねぇ?」
「ブリっ子してる場合じゃないもんねぇ〜…Yah!」
「良いな良いな。それじゃ遠慮なく訊いちゃうよ。初恋の相手は?」
「ジョン君でーす」
「おっ、いきなり名前まで出しちゃったけど、外人なの?」
「ゴールデン・リトリバーでーす」
「何だ、つまらない。良くあるパターンだけど、これは単なるツカミです。このあと
はもっと洒落た応答をしてくれるとおもいますよ。では第二の質問−−−初めての
キッスは誰と?」
「タロー君とでーす」
「おっ、今度は日本人だ」
「ハイ−−血統書付きの紀州犬でーす」
「おやぁ…そんな白々しい答えをして良いの?愛犬をダシに使うなんて今時ハヤらな
いよぉ」
「愛犬じゃなくって、近所の犬なんです」
「そんな事はどうでもイイの。もっと洒落た答えをしてくれなきゃ困るなぁ」
「頑張りまーす−−−Yah!」
「じゃあ、すかさず第三問−−−初めてのHは誰と?」
「ジローとでーす」
「えっ…そんなにズバリと名前まで出して良いの?」
「ハイ、大丈夫でーす。血統書付きの秋田犬だから…」
                  (完)

2002年06月15日23時04分06秒投稿

S.S☆「リニア元年」☆     あや太郎

 ある年、突然「リニア・モーターカー」を全国に敷設するという政策が打ち出され
た。「建設費は総額で百兆円。特別建設国債を大量に発行し、一日も早い完成を目指
します」 間髪を置かずリニア新幹線の工事が開始された。当初、景気浮揚策として
効果的という意見もあったが、数年後にはもう国債金利の不払いやら建設資材の不足
やらで社会的な悪影響が目立ちはじめ、持ち直しかけた景気もまた不況の影を落とし
はじめた。
 しかし為政者たちは頑としてリニア新幹線の建設を遅らせようとはしなかった。そ
れどころか「大量輸送」を目指した車体の大型化、複線化、本数の増加を打ち出し、
何と国債の倍増すら決定してしまった。
 それでなくても強引なリニア新幹線の建造の余波で不景気を囲っていた国内経済
を、この大型化と資金の増加が更に足を引っ張り、もはや大量輸送、利用者増員どこ
ろではなくなっていた。
「何を考えてるんだ。いよいよ不景気になろうという時に、高速列車ばかり走らせて
どうすると言うんだ?」
「馬鹿でかい交通システムに、国民が食いつぶされてしまう!」
 国会議事堂の前には連日、数万単位のデモ隊が工事中止を要求しながら詰めかけ
た。
 しかし為政者たちは決然と、やや悲しげな顔で、外の喧騒を聞くばかりだった。
 間もなく、国際機関から、地球上の地殻変動に関する重大な発表があった。そして
何と「この国」が地殻の大変動に飲み込まれ、海中に没するという事が分かった。
 その時期は地震予知と同じく、細かい日時までは予想できない。但し最新の観測技
術で大地震や大陥没の十日前までには予知できる事が公表された。
「国民の皆さん。十日あれば、南北に長い我が国でも、全国民を東西南北…取り敢え
ず安全な場所まで移送する事ができます。それまでには国内外の大型船舶を集結し、
各地の港から皆さんを海外へ運び出す事ができます。…この日の為の鉄道網建設だっ
たのです。皆さん、分かって頂けましたか?」
「なるほど−−」
 しかし一瞬、感心得心した国民から間もなく反論の手が上がった。
「それなら何で…海外から資金を集めなかったんだ?」
「なるほど−−そうすりゃ踏み倒せたのか…」
 結局この国の為政者はどこまで行っても褒められる事はなかった。
                  (完)

2002年06月15日00時42分31秒投稿

  こんにちは、会員番号245番です。
  6月14日横山ママプリン様お誕生日おめでとうございます。
  掲示板では、おめにかかりませんが、お元気ですか。

2002年06月14日07時54分32秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

6月11日 ワッハ上方レッスンルーム 「第9回 桂 吉弥のお仕事です。」

出し物

●「ワールドカップボランティア日記」 桂 吉弥
●「手水廻し」            笑福亭 喬若  
●「子ほめ」             桂 吉弥

 中 入

●「持参金」             笑福亭 銀瓶
●「花筏」              桂 吉弥

ボランティアのユニフォームは、帽子からシャツ、パンツ、靴、靴下に至るまですべ
てアディダスからの支給。
一人当り約2万円、総額3000万円位。
警備担当責任者が言うたそぉです。
「必ず来てね。貰うだけ貰ぉて来んっちゅうのはやめてね。」
後々お宝になるかも知れませんな。
吉弥さんが配属されたのは、会場内に持ち込めんペットボトル等の中身を500ミリリ
ットルの紙コップに入れ替える部署。
2リットルのペットボトル2本下げた家族連れなんか紙コップ4個持たされるはめに。
紙パックはすべて口をあけてストローをさした形にせにゃならん。
ヤクルトもあかんと言うんで5本パックをその場で飲んだ子供連れもおったとか。
まぁ、万博で長いこと並んだてな事と同じでええ語り草になるでしょ。

親方の話振りにもぉちょっと‘らしさ’があったら良かった「花筏」。
ゆったりとした重さとでも言いますかな。
まぁ、きょう日の親方は皆軽いからね。
最後の千鳥が浜との取り組みの場面。
徳さんが土俵をうろうろする様から仕切り。
最高潮に達する観衆のボルテージ。
お互いに誤解しながらの立ち会い。
そして思惑とは異なる結果まで、一気に進めていかにゃなりません。
ここの淀み無い流れが落ちのための緊張材料となりますな。
そしてそこから解放されて
「花筏は張るのが上手いな。」
「張るのが上手いはず。提灯屋の職人でございます。」
となるんですけど、前述の緊張場面が少々迫力不足。
独自の工夫の言葉も勢いを削いでしもぉて、山場と言う程盛り上がりませんでした。
息切れでも無かっただけに惜しいですな。

〈東西南北龍介がゆく〉でお馴染み、銀瓶さん。
「持参金」の登場人物は4人だけ。
しかも女子衆のおなべは殆ど話の中だけの出演です。
にも拘らず主人公、番頭、金物屋の佐助の演じ分けがさっぱり。
年齢差もそれぞれの性格付けも曖昧。
ちょいちょい顔を出す現代の言葉遣いも中途半端で耳障り。
以前聴いた時はもぉちょっと上手かったんやけどねぇ。

まったりと言うかゆったりと言うか、テンションの低い喬若さんの「手水廻し」。
宿の主人と喜助の物言いにもぉちょっと田舎風の匂いがあったらね。
言葉そのものや無ぉてもテンポとかスピードで変化付けたら、大阪から来た客とか日
本橋の宿の女子衆との減り張りがもっと出ると思いますな。
今回〈落語界の松坂大輔〉は無し。
もぉ辞めはったのかな?
師匠は未だに〈落語界の熊のプ−さん〉で突っ張ったはるのに…。

2002年06月13日15時43分14秒投稿

 こんにちは、会員番号245番です。
 いま、一言掲示板で話題の、お友達の数。
 わたしは、いろんな友達がいます、大学、お稽古(料理・体操)、たかじんさんの
ファン、子どもの幼稚園ママ(息子が二人いるので、二種類)、幼馴染みなんかです。
 先日、ものすごいいい人なんですが、すこし浮き世離れしてる方がやってきまして、
その人は、前穴子さんと、一緒にいるときにおあいしたんですが、やって来た日は、
前から都合が悪いからこないで下さいとことわってたんですが、そんなン平気でやっ
て来る人です。
 わたしが、「今日は、大切なお客さまが、おいでなので、かえっていただきたいん
ですが。」というと、「穴子さんですか?」と、きくのです。わたし、友達が、穴子
さんだけしかいないと、思われタンが、ショックです。穴子さんが、どうってないん
ですが、私友達がいないなんて、おもわれたんが、ショックですね。
 勿論この事は、穴子さんにも、報告しましたが、穴子さんも、ショックうけてまし
たねー。
 こういうときに、こういう浮き世離した知り合いとは、「付き合い、かんがえさせ
てもらうは。」ですよね。

2002年06月13日14時25分23秒投稿

 子午線の街「明石市」は 
 毎年6月10日の《時の記念日》に
 イベント「たこやき大食い大会」を予定していました。
 ところが 名古屋で事故があって 急遽中止になりました。
 TVに出るテロップ
  『良い子のみなさんは 真似をしないでください』

 常々 思っているのですが、
 「良い子は そーんなことしませ〜ん。
  それも言うなら
  悪い子のみなさんは 真似をしないでください。」やろ。

 あろうことか、
 旦那の爆音イビキに 耐えかねて妻が
 ガムテープを夫の口に貼り付けたそうな、、、
 テロップ『良い奥様は 真似をしないでください』

 解かりました。私は悪い奥様ですから
 旦那の口と鼻に貼るようにします。  細川玉代

2002年06月11日15時46分32秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。


6月7日 厚生年金会館芸術ホール「笑福亭 福笑 独演会」

出し物

●「手紙無筆」   笑福亭 たま
●「宗教ウォーズ」 笑福亭 福笑
●「漫才」     姉様キングス/桂 あやめ・林家 染雀
●「矢橋船」    笑福亭 福笑

 中 入

●「大道易者」   笑福亭 福笑

「宗教ウォーズ」はかなり以前のネタ。
舞台となる町の寺と神社は先祖代々仇同士。
町民も檀家と氏子に分かれて事有るごとにいがみ合ぉてます。
時まさに地蔵盆と夏祭りの季節。
今年こそは血を見るよぉな事態を避けたいと心痛める町長。
町役場に住職と宮司を呼んで取りなそぉとしますが些細な言葉から言い合いになり、
より一層険悪な雰囲気の内に物別れとなって仕舞いますな。
なんとか事態の収拾をと願う町長は寺を訪れ説得に務めます。
が、住職は頑として応じよぉとしません。
そこへ駆け込んで来た小坊主。
「山門に火炎瓶が投げられました。」
言わずと知れた神社側の仕業です。
やられたらやり返す。
即、報復攻撃に出る寺側。
ここからは福笑さん十八番のスラップスティック的展開ですな。
自動小銃からミサイルまで登場しての局地戦。
果ては神社側のパラシュート部隊の奇襲を受けて本堂が炎に包まれる事態に。
国宝の仏像も消失。
潮時と見て仲直りを提案する町長。
嘆きながらも住職は言います。
「神社はともかく寺に手打ちはおません。」
柏手に引っ掛けた落ちですな。
今以て、いや将来さらに増え続けるであろぉ人類間闘争の根源的なテーマ。
ひょっとしたら永遠に残っていける噺かも…。

古典の部は「矢橋船」。
船中の退屈を紛らわすために色問答する場面。
皆それぞれ上出来の洒落たもんを出しますな。
その後にいちいち登場するボケ役の作品に独自の工夫が有りました。
「白砂に白髪爺ぃが白目剥く 白い白いが白いなりけり。」
とか
「カマキリが青筋たてて田植えする 青い青いが青いなりけり。」
等々、他人を唸らせる事は無いやろぉけど結構よぉ出来てますな。
振る舞い酒を強引に飲もうとする男に、間違ぉて病人の溲瓶から小便を注ぎます。
普通は飲むかの飲まんかのとこで気付いて(普通気付くわね)
「これ小便やないかい!」
福笑さんの場合は躊躇せずぐいぐいと飲んでしまいます。
しかも口直しに飲んだ同様のもんも一気飲み。
合計2杯も飲んでしまうという荒技でした。
これには正直吃驚しましたな。
誠に福笑さんならではと言うしかおません。

御存じ…かどぉか知りませんが…姉様キングスの漫才。
これだけ大きい器やと無気味さも半減しますな。
従ってそれに絡めた掴みも滑り気味でした。
やっぱり狭い空間で至近距離から拝まにゃ威力は無いね。
全体的にネタが生で熟れが悪い。
もっと上手に料理してもらわにゃ腹壊しまっせ。

たまさんはこの頃よぉ掛けたはる「手紙無筆」。
自分なりに落ちを変えたはりましたけど、もぉひとつですな。
従来の
「大平の陰で見えなんだ。」
でええのと違いますかな。
流れから言うても無理は無いし分からん言葉とか表現も出て来ん。
第一苦し紛れの言い訳が洒落てます。
噺の道中が面白いだけに大いに再考の余地有りと思いますな。

1日のTORII寄席も福笑さんでプレ独演会。
出し物は新作「ミナミの旅」と「牛ほめ」でした。
福笑さんは古典も達者…と言うより一級品。
たまには古典オンリーでも、と思わんでも無いんですけどね。
ま、両方バランス良ぉ操ってこその福笑ワールド。
今後ますますお楽しみ。

2002年06月11日15時19分39秒投稿

S.S☆「雪女」−2☆     あや太郎

 冬の山で猟師が二人、吹雪に巻き込まれ、避難用の山小屋へようやく逃げ込んだ。
「寒い……。タキギも無いし、このままじゃ凍えちまう。あぁ、眠い…」
「起きろ、ヒョウ太。眠ったら死んじまうぞ。頑張るんだ」
 若い猟師とその叔父は励まし合いながら眠気と闘っていたが、その内ついに居眠り
を始めた。その時、冷たい風と共に白い影が小屋の中を漂い始めた。それは白装束の
妖艶な女だった。
「魔、魔物か…?」
 ヒョウ太が見ている前で、女は叔父に白い息を吹きかけた。するとたちまち叔父は
真っ白く凍りついてしまったではないか。
「ヒ、ヒエ〜…」
 思わず叫んだヒョウ太の前に、女が近づいてきて囁いた。
「お前は良さそうな子だ。命は奪わないよ」
 そう言うと、やはり白い息を吹きかけた。ヒョウ太はブルッと震え、気を失った。
 数日後、二人を捜しに来た救助隊に発見され、病院へ担ぎ込まれたヒョウ太は辛う
じて息を吹き返した。
「若さだなぁ。叔父さんは死んじまったが、甥は冷えきってたのに生き返った」
「運の良い子だな。冷えて新陳代謝がゆっくりになり、餓死を逃れたんだろうな」
「言わば、冷蔵状態のカニみたいなもんだ、ハハハハ」
「ちぇっ……。カニと一緒にしないでよ」
 フテ腐れるヒョウ太を遠目に見ながら白衣に身を隠したあの時の雪女が口惜しそう
に呟いた。
「チクショー……取りに行くのが一足遅れたわ。折角、食べ頃に保存しといたの
に…」
                  (完)

2002年06月10日22時42分49秒投稿

下駄屋の喜六

ヨ−コはほとんど家事はせずに亭主のケンに押し付けている。妻が外で働いて夫が家
事労働をこなす「主夫」業というケ−スがあるが、ここの家庭はそうではない。共稼
ぎで家事労働を分担しているのかといえば、そうでもない。家計はケンの働きによっ
て支えられ、ヨ−コの立場はいわゆる「専業主婦」なのであるが、それでもヨ−コは
家事をこなさない。

ケンは一日の仕事を終えると夕食の献立を考えながら近所のス−パ−へ買い物に行
く。食材を抱えて帰宅し、米をといで夕食の支度に取り掛かる。その間ヨ−コは何を
しているのかといえば、ゴロゴロと寝転んでテレビやビデオを見続けているのであ
る。食事を終えてからの後片付けもケンが独りでやる。ヨ−コはやはりゴロゴロとテ
レビを見ていて、電話が鳴っても出ようとはしない。「あんた!電話やで!」とケン
に伝えるだけで、決して自分で動こうとはしない。ケンは「困ったやっちゃなあ」と
いう顔つきをして布巾で手を拭きながら電話の応対をし、皿洗いが片付けば明日の朝
食のために米を洗い、炊飯器にタイマ−セットをしておく。もちろん明日の朝食もケ
ンが独りで作るのである。言うまでもなく、週二回の生ゴミもケンが出す。

ヨ−コは一切掃除というものをやらない。ケンも少々部屋が汚れたり散らかったりし
ていても気にならない方ではあるが、限度を超えてホコリが積もっていたり便器が汚
れていたりすればさすがに耐え切れず、バケツ雑巾掃除機を手にして家の掃除をす
る。今や掃除も完全にケンの仕事になってしまった。

ヨ−コはなぜ動かないのか、体調が悪くて動けないのか。そうではなく口も体も達
者、ただ単に動くのが嫌いでゴロゴロするのが好きというだけのことである。あえて
言えば長年の怠惰な生活習慣と過食によってでぶでぶと太っている、それが病的では
ある。自分が動かずとも命じれば眉毛を「ハ」の形にしてケンがいそいそと動きよ
る。たまにケンが不平不満でももらそうものなら「うるさいなあ!男のくせにゴチャ
ゴチャ言うな!」。「女のくせに」と同様、「男のくせに」という言葉も性差別表現
ではありますまいか、遥洋子さん。

ヨ−コも外出はする。モ−ニングセットを食べに出たりランチを食べに行ったり、夜
は友人たちと呑みに行ったり・・・飲み食いばっかりか!行きつけの居酒屋ではヨ−
コは呑みっぷりが良く、食べっぷりが良く、金の払いっぷりも良く、上客として扱わ
れている。一度呑み出すと、ヨ−コはとことん呑む。そして真夜中に泥酔して帰宅
し、すでに別室で寝ているケンを叩き起こす。「あんた!呑みすぎてゲェ吐きそうや
から、私の枕元に洗面器とタオルと水を置いといてや!」。ケンは目をしょぼつかせ
ながらも酔いつぶれたヨ−コをパジャマに着替えさせ、言われるままにそれらを用意
し、当然ながら反吐の始末もケンの仕事。

「そんなヤツはおらへんやろ、そんな夫婦はおらへんやろ」と疑っておられる方、一
度ABCラジオ『トミ−ズのみ〜んなトントン』という番組(土曜日午後1時〜1時55
分)の「今週の洋子ちゃん」というコ−ナ−を聴いてみて下さい。長々と書いたのは
トミ−ズ健ちゃんの家庭の実話であります。よその夫婦がどんな状態であろうと、そ
れで円満にいってるのなら口出しすべきやないんやろけど、健ちゃんの嫁の話を聞く
と、いつも昔読んだ沼正三の「家畜人ヤプ−」というおぞましい小説を思い出しま
す。
そして、「ウチのヤツ」が女神に見えてきます。心ならずも夫婦喧嘩をした時は、健
ちゃんの嫁の話を聞くにかぎるね。

2002年06月10日20時53分08秒投稿

毎度、丸浜です。
サッカーの事はルールも選手の事もよーわからんのですが、勝って嬉しい。(わから
んなりにでもTV見てたら「力」入るわ)
ニュースを見てるといつから日本はサッカー大好きな国になったん?!
と思うようなフィバーぶりに呆れてます。
何が厭って顔に落書きが(ちゃんとした言い方があるかもしれんが)厭!!
汚らしい感じがして見てて不愉快、あの落書きに何の意味があるんやろ?(無知故か
不可解)

2002年06月10日09時28分40秒投稿

S.S☆「イジメの伝統」☆     あや太郎

「恐い研究結果が出たもんだ。子供を虐待する親は、やはり自分が子供の頃に、親か
らイジメられた経験があると言うんだよ」
「なるほど、そりゃ恐ろしい因果関係だ。ひょっとすると、その親も子供時代に虐待
を受けていたのかも知れないな」
「そうなんだよ。そのまた親も、その前も……ひょっとすると先祖代々似たような子
育てをして来た可能性だってある訳だ」
「不幸な系譜だねぇ。まぁ遺伝的な性癖ではないだろうが、少なくとも伝統的な悪習
慣だな。呪われた家風とでも言うべきか」
「現代、あらゆる方面でイジメが問題になっているが、これもやはり伝統的な要素が
あるんじゃないだろうか?」
「児童虐待のある家庭はまだ一部だから、それが社会全体のイジメ問題と直結するよ
うには思えないね。でも違う意味で、やはりイジメは、伝統かも知れない」
「ほぉ……それはどういう伝統だい?」
「たぶん、昔の人にインタビューしたら、こんなやり取りになるんじゃないか
な……」
−−−−−−−
「なに?数十年後の世界では、理由のないイジメや根拠の無い差別が蔓延していると
な?とてもこの時代の者には考えられない事だ。全く、僅か半世紀ばかりの間に世の
中はずいぶんと混乱するようになったものだ。実に嘆かわしい…。おや、何だ、何
だ、騒がしい?…何、嫁が姑にいびられたと泣いておる。そんなもの、文句を言うほ
うがおかしい。そもそも嫁などというものは主人とその親にかしずくものだ。舅、姑
に逆らうほうが間違っておる。一度躾け直さねばならんな。……何だ、また騒がし
い。何…使用人がうちの大事な娘を嫁にしたいとぬかしておる?馬鹿を言うな。身分
違いも甚だしい。家柄と立場の違いを叩き込んでやれ。全く近頃の若い者は何を考え
ているのやら。……今度は、何だ?……勝手口に乞食が来て物乞いをしておるだと?
汚らしい、放り出せ。お客様に迷惑だ。体裁が悪い。大体乞食や貧乏人はだらしない
から家の周囲に近づけるな。……隣の部屋で何をヒソヒソ話してるんだ?公明正大、
何事も堂々と話せと普段から言っておるのに……。何、娘の同級生があの病気に罹っ
て、見舞いに行くかどうか相談してる?ふむ、何やら良くは知らないが、ああいう病
気は移る可能性があるから、余り近寄らないようにしなさい。うちへ持ち帰ったら大
ごとだ。子々孫々にまで悪影響を及ぼしかねないから気を付けるように。また、そう
いう病気に成ったというのも生まれつきの素質や血筋によるものかも知れん。あの家
との付き合いはくれぐれも控えるように。うっかり縁談話でも起きたら又悩ましいか
らな。余計なモメ事は未然に防ぐに限る。君子危うきに近寄らずだ。家人も心するよ
うに。……さて、ご覧のように我々は根拠のない差別やイジメは一切しておらん。こ
ういう健全な時代に暮らす我々は幸せであるなぁ、全く…」
 まぁ、これだけ公然とイジメる材料があれば、根拠のないイジメなど必要なさそう
である。
                  (完)

2002年06月09日10時39分14秒投稿

S.S☆「生き残りしもの」☆     あや太郎

「我が宗教は二千年の長きにわたって信じられて来た。この歴史の長さこそ我が教え
の正しさを証明している。そこいらの新興宗教と根本的に違う点だ。正しい宗教でな
ければ、こんなにも長い月日、こんなにも多くの信者が信じ、守り、伝えるはずがな
い。だから我が宗教こそ唯一無二の正しき宗教である!」
「そうかなぁ…?」
「何ですか、その疑いの言葉は?我々の主張に間違いが有るとでもおっしゃるのか
?」
「二千年ぐらい続いてる宗教は、他にもいくつか有るんじゃないの?」
「むむむ…。いや、その多くは我が宗教と兄弟、同根である。だから教えの根本も同
じで基本的な違いは無い。ただ時間がたつうちに、見かけや体裁が多少異なってきた
だけで、決して相いれないものではないのです」
「長続きした理由は正しいからだけかなぁ?強かったからじゃないの?たとえば血の
気が多くて喧嘩に強くて、押しが強くて、我が強くて、宗教戦争にも勝って、他の弱
い教団が滅びて、その結果お宅らが生き残ったとかね」
「確かに血で血を洗う野蛮な時代もありました。しかし何はともあれ生き残ったとい
う事は神の意思……そして教えの正さではないでしょうか」
「それなら今流行りのカルト教団と同じだよねぇ。奴らだって血で血を洗いながら生
き残って行くかも知れないし、テロなんかやらせたら強いよぉ」
「とんでもない例えだ。比べないで頂きたい。あんなテロやオカルトの集団と我々伝
統的な宗教家とでは訳が違う。物が違う。質が違う。我々が現在どんな組織、集団よ
りも平和的で、慈善的で、献身的である事は皆さんご存じの通りです。こんな平和的
な宗教と最近のアブナイ連中と一緒にするのは余りにもひどい!」
「ふむ。確かに今のあなた方は、平和的で紳士的で善良だとお見受けしますな」
「認めて頂いて光栄です。これすべて教えの正さ故…」
「そうかなぁ…?」
「何を疑われる?」
「それもこれも、昔からある宗教や教えが正しいのではなく、今のあなた方がたまた
ま温厚で平和的で良い人だったというだけの事じゃないのかなぁ」
「我々をお褒め頂くのは結構だが、すべてはやはり宗教的な正当性と尊い伝統から来
るものですぞ」
「そうお?最初あんなに混乱して矛盾に満ちてたのに?」
「たとえ当初は矛盾だらけで無秩序で野蛮で乱暴であったとしても、長年の伝統と信
仰の後に、その正しさが磨き出されて来たのです」
「二千年も磨いてりゃ、どんな形にでも成りますよ」
「失敬な!神に対する冒涜だ。神様は最初から完全無比な存在ですぞ」
「でも人間が磨いて一人前になるんでしょう?」
「その言い方は不遜だ。我々が磨き上げたというよりも……我々が磨き上げられたの
です。どうですか、この論理は?」
「謙虚なお言葉、痛み入りますが、それじゃ昔の信者は駄目信者だったんですか?」
「いや、先人たちは彼らなりに頑張った。たとえ矛盾や過ちを犯したとは言っても、
彼らなしでは現在の宗教はあり得ない」
「じゃあ先人たちは尊い生贄(イケニエ)だったという訳ですかね」
「また嫌な言い方をなさる…。まぁ、それでも良いや。もう面倒くさい。彼らが犠牲
になって現在のノーマルで穏やかな宗教が在るという訳です。これでお分かりかな
?」
「要するに、散々犠牲者を出して、これではイカン、穏やかになろうと方向転換した
訳ですな」
「いや、そうじゃなくって……。エーイ、もう面倒くさい。それで良いよ!」
「そんな訳で、どうやら宗教は古くなるほど味が出るようです。臭みとかアクも抜け
て、取っつきやすいですよね」
「あぁ、そうそう。それで結構」
「本当はエッセンスが抜けたんじゃないの?」
「そっとしといてくれ!」
「……というところで、本日のトークを終わります。次回はロクでもない教義の下に
ロクでもない指導者と評論家と父兄が集まった…教育界の皆さんに来ていただきま
す。コメンテイターは警察関係者の皆さんです。それではお楽しみに…」
                  (完)

2002年06月08日21時49分09秒投稿

 こんにちは、会員番号245番です。
 行って来ました、松竹座「風まかせ弥次喜多道中浪花双六」
 米朝一門、中村かん雀、前田美波里、芦屋子雁、など、
 なんの因果か、ざこばさんの芝居をみるのは5回め、だんだんうまくなってはりま
す、
あいかわらず小米朝さんは、二枚目。ちゃんとお芝居もできます。
 いつもぼろかすに言ってるざこばさんですが、あんたの娘さんは、どないやねん。
といいたくなりますね。
 さて、水谷ミミさんなんと、ずーっとでてはりました、長屋のおかみさん、旅芝居
の女座長セリフも、あってお芝居もできてはりました。
 なかなか、楽しかったですよ、お客さんもいっぱいはいってました。

2002年06月07日21時46分53秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

中津江村のカメルーン応援風景。
揃いの帽子の爺さん婆さん奥さん連中から子供まで村民挙って和やかな事。
村長なんかずっと手ぇ合わせて…テレビの代わりに坊さん置いたら法事やがな。
NHKのインタビューに応える村長。
緊張してるぞ。
大丈夫か?
うん、よしよし、噛まんと言えた。
要らん事も言わなんだな。
さぁすがむらおさじゃぁ!

イングランドのキャンプ地の市長はベッカムの骨折治癒の為に願懸けしたとか。
宗旨が違ぉても御利益あるのやろぉか?
ま、日本の神さんは寛大やからね。
アレとかソコとかナニとかのと違ぉてね。
知らん顔はなさらんでしょ。
やっぱり賽銭なんかドッと上げたんでしょぉな。
神主も喜ぶ経済効果。
さぁすがわぁるどかっぷじゃぁ!

2002年06月07日12時49分24秒投稿

S.S☆「追い詰められし者」☆     あや太郎

「ニュースです。先日話題になった自己啓発グループの会員達が引っ越し先で子供の
入学を拒否され、抗議の声を上げています…」
「我々が何か悪い事をしたと言うのか?死んだあと剥製にして飾っているだけじゃな
いか。ましてや子供たちには関係ない。学校へ入れてくれ。このままじゃ、みんなグ
レて不良になってしまうかも…」
「続いて、あのカルト教団も、全国各地の拠点から地元住民に追い出しを要求されて
いましたが、今回は新たに転入しようとした地域で、教団信者と知られ、受け入れを
拒否されています。教団関係者の声です……」
「これでは我々はもう行くところが無い。帰れと言われても帰るところが無いんだ。
こうなったら…いっそそでヤクザにでもなってやる!」
「このような物騒な発言がまた地元住民の不安と反感を買っているようです。しかし
これは憲法問題にも発展しかねない由々しき事態ですので、政府の仲介が待たれま
す」
「本当に皆ヤクザになっちゃったら大変ですねぇ」
「際どいコメント、有り難う。……さて、そのヤクザ業界も大変です。不景気なとこ
ろへ来て、総会屋やショバ代稼ぎもままならず、セコいテレクラや風俗業の用心棒稼
業を取り合って抗争も絶えないようです。また一方、事務所の立ち退き運動も激し
く、住民からの過激な行動に青息吐息の組員が匿名で語ってくれました」
「ひどいよ…。バキュームカーで突っ込んで来るなんて。その前はイタチを放り込ん
で行きやがった。これじゃ居座りたくても住めないじゃないか。俺たちだって、なか
なか引っ越し先が無いんだよ。カルト教団やアブない痛いグループと田舎のあばら家
を取り合いしてるんだぜ。ここまで追い詰められたら、もうしょうがない。いっそ堅
気になって、どさくさに紛れて…警官にでもやなってやる!」
「いやぁ、またまた際どい発言が飛びだしました。これはアブナイですねぇ」
「アブナイついでに、アブナイ人間に成って前科を軽くしてもらえば良いのに」
「シッ、お黙り!……ただいま不穏当な発言があった事をお詫びします。……おっ
と、ここで驚くべくニュースが入って来ました。何かと不祥事続きで、社会的制裁を
受けっぱなしの警察関係者が抗議デモを始めたようです。中継車、どうぞ……」
「それでは早速、職場と官舎を追われた元幹部の方々に伺ってみましょう…」
「官民挙げて我々警察をイジメやがって…。ここまで追い詰められたら、我々にだっ
て考えがある!」
「どうするんです?」
「国家権力を捨てて……弱い国民になってやる!ヤクザの皆さん……早く警察官に
なって我々を守って下さい」
「チャンチャン…」
                  (完)

2002年06月06日21時35分19秒投稿

S.S☆「遺伝子鑑定」☆     あや太郎

 弁護士のもとへ一人の女性が赤ん坊を抱いて相談に訪れた。
「実は私、二人の男性と付き合っていたんです。そしてその時に妊娠しました」
「ほぉ、それはそれは…」
「二人とも……子供が出来たら結婚しよう……と約束してたんですけど、子供が出来
ても両方、自分の子じゃないと言って責任を取ろうとしないんです。どうしたら良い
でしょうか?」
「誠意が無い男たちという訳ですか…」
 その前に節操のない女だと言いたくなるのをこらえて、弁護士は続けた。
「例え子供と分かっても、ちゃんと認知して結婚するような連中ですかねぇ?」
「約束は守らせますわ。社会的地位もある人達ですし、法的手段に訴えても」
 なるほど、目の玉の飛び出るような慰謝料や養育費を請求すれば、案外元の鞘に収
まるのかもしれない。
「ならば方法はあります。遺伝子鑑定ですな。これでどちらの男性の子か九分九厘分
かりますよ」
「それで悩んでるんですの。本当に分かるのかなって」
「分かりますよ。同じ遺伝子をもってる人なんて滅多に居ないんですから」
「でも……その同じ遺伝子を持ってるはずなんです。その二人はね」
「えっ?同じ遺伝子という事は、まさか……?」
「はい。双子の兄弟なんです」
「でも、二卵性なら、判別はできますがね」
「残念ながら一卵性なんです。見た目も全く瓜二つで区別が付かないんです。それで
私もフラフラと二人を相手に…」
 隠微な話になって来たが、弁護士は咳払いをして本題に戻る。
「一卵性という事になると、確かに遺伝子の違いを見つけるのは不可能でしょうな」
「やっぱり無理ですか。じゃあ本当の父親は判らないんですね」
「いや、ただ一つ、可能性が残ってます」
「えっ、それはどんな方法ですか?」
「子供さんの成長を見守る事ですよ」
「でも遺伝子は変わったりしないんでしょう?」
「もちろんです。遺伝子は変わりませんが、癖や性格は違ってくる可能性がありま
す」
「それはどういう事ですか?」
「近頃の研究によると、一卵性双生児でも、卵子が早い時期に分裂して双子になった
場合と、少し細胞分裂が進んでから二つに分かれた場合とで、違いが出てくるらしい
んです。前者の場合は、体質の差も皆無に近く、違いは出ないんですが、後者の場合
は左右対称になるケースがあるんですよ」
「左右対称って?」
「右脳か左脳か、どちらかに偏りが出て、右利きと左利きに分かれる可能性が高いん
ですよ。ちなみに、その双子兄弟の場合はどうですか?」
「あ、そう言えば、一人は右利きで、もう一人は左利きです」
「それなら可能性は高いでしょう。子供の利き腕が定まったら、裁判での証拠になる
かも知れませんから、決して無理に躾けたり矯正したりしないで育ててみて下さい。
文字通り、決め手になるはずですよ」
「分かりました。成長を見守ります」
 数年後、子供に左利きの傾向が強く出た事が決め手となり、女性は同じ利き腕の双
子の片方と結婚する事になった。
「先生、有り難うございました。お蔭様で無事結婚する事ができました」
「まぁ、これが幸せな形なのかどうか私には分かりませんが、ともあれお目出度うと
言わせてもらいましょうか。それにしても、相手方はもっと反論するかと思ったら意
外とあっさり認知しましたね。驚きましたよ」
「ハイ。財閥の御曹司ですから、世間体もあってモメたくなかったんでしょう」
「そう言えば、かなりの資産家の息子さんらしいですな。ところで双子のもう一方の
ほうは代理人しか来なかったですが、海外暮らしでもしてるんですか?」
「はい。冒険好きで、しょっちゅう外国旅行してるんです。私の妊娠を知った頃にも
アマゾンへ探検旅行に行って……実は消息が分からないんです」
「えっ、行方不明?じゃあ、残った一人が自動的に跡継ぎ…?」
「はい。他に兄弟は居ないですしね」
 弁護士の脳裏に様々な妄想と恐ろしい想像が巡り巡った。
「まさか、あなた……子供さんの利き腕に矯正をしなかったでしょうね。まさかとは
思うんだが…」
「も、もちろんそんな事してませんわ。ただ一年ほど前に、ちょっとした不注意で骨
折させちゃって、右手がしばらく動かせなかったもんだから、いつの間にか左利きに
なってしまったんです。でもこれって、自然な左利きですよねぇ、先生。ホホホ
ホ…」
                  (完)

2002年06月05日21時42分40秒投稿

S.S☆「究極の互助会」☆     あや太郎

 二十一世紀を迎えても、この地上には相も変わらず怪しげなオカルト趣味やカルト
教団がはびこる一方。業を煮やした各国政府はついに世界的規模で宗教団体組織すべ
てをガラス張りにしてしまう「国際破防法」を提案し、採択を目指し協議を開始し
た。
 言うまでもなく、既存の宗教団体からは轟々の非難が巻き起こる。そこで主要各国
政府は、際どい調停案を提出した。
「全世界の全宗教団体が一つ残らず今回の取り締まり法案に反対の意志を表明した場
合には速やかにこれを廃案とする」
 反対しない団体などあろうはずが無い−−そんな自信と、厳しい世論や政治権力と
の折衝疲れで、各宗教組織は一抹の不安を感じつつも妥協案を呑んだ。
 そして案の定、破防法賛成派の宗教団体が出てきた。
 まだ教団創設十年足らずの新興宗教「天地互助教」だった。
「我々はガラス張りの宗教組織こそ本物の宗教だと信ずる。隠したい教団は疚しい教
団である。すべてを世間に公開しながら修行と人類救済に努める……これ以外に宗教
の存在理由は無い。反対する奴らこそインチキ宗教家である!」
 ここまで言い切られると、曖昧な立場を続けてきた既成の宗教団体は弱い。世論の
後押しが追い風となり、天地互助教は信者を増やすばかり。一方反対派は総崩れ状態
で、一つまた一つと破防法賛成派に鞍替えして行くほかなかった。
「なんたる惨状…。このままでは思想と信仰の自由はなくなってしまう」
「シッ!そんな事をうっかり口に出されては困ります、長老。世間にはもうそんな理
屈は通用しないのです。…何故ガラス張りでは思想と信仰の自由を保てないのか?…
そう突っ込まれたら、ひとたまりもありません」
「見られたり聞かれたりして困るような事はするな…か。なるほど、返す言葉がない
のぉ。しかし一方では個人のプライバシーだ人権だと声高に叫びながら、なぜ信仰上
の秘密や神秘性にはこんなにも冷たいんじゃろう?」
「今までが今までですからねぇ。ちょっと隠しすぎたツケが回って来たような気がし
ます」
「トホホホ、情けない。わしらの先輩たちがちょっとセコイ脱税や私欲に走ったばか
りに、二十一世紀の宗教界はこんなにも悲惨な目に遭わねばならぬ」
「それにしても、長老。不思議なのはあの最初に寝返った教団です。なぜあの連中は
あんなにも堂々と開き直って、ガラス張り教団に転向できたんでしょう?」
「ふむ。わしも当初は訝ってな、どこかの政府機関が今回の為に作り上げた急造教団
ではないかと、興信所にも調べさせたんじゃ。ところが十年前に出来たどこにでも有
る新興宗教で、それも創立当時はむしろカルト教団に近い危ない団体だったらしい。
警察当局にもマークされ、教祖は脱税や違法財テクの容疑で告発されたり、結構危な
い橋を渡って来ておるようだ。ところが、あの後も教祖や教団幹部は依然健在で、教
団は着実に高収益を上げておるとか」
「すると、いまだに怪しげな所がある訳ですね。ならば真先に告発され、解体される
恐れがある訳だ。……あっ、分かった。解体を逃れるために政治取引で、取り締まり
賛成派に寝返ったんですね?」
「いや、裏情報によると、それも見当違いらしい。警察は喜び勇んで事ある毎に教団
へ乗り込み、金の出入りなどをチェックしたのだが、何故か煙のように証拠が消え失
せ、決定的な不正も発見できずに、検挙は見送りとなったそうな。査察官たちもキツ
ネにつままれたような顔をしているらしい」
「これは一体どういう事でしょう。マークされ、査察され、しかも現に金の出入りは
激しいのに、破防法を受け入れたり、いよいよ厳しい捜査を受けながら、依然尻尾は
掴ませないだなんて…。正に神がかりだ」
「ふむ。ひょっとすると、本当の守り神がついているのかもしれん。ともあれ、もっ
とあの教団に注目してみよう」
 その後も天地互助教は激しい査察と捜査の波をかいくぐり、いよいよ巨大化しなが
ら、堂々と優良経営を続けていた。そのうち、同教団からインターネット上に一本の
広告メールが流されるようになった。
「ガラス張りでも裕福に運営する方法教えます。しかも無料で…」
 中小のカルト教団はおろか、世界の大宗教ですらこの申し出に飛びついた。
 しかもその無料マニュアルに則って教団運営を始めたところ、ほとんどの宗教団体
が財政危機を乗り切り、健全経営できるようになった。
「何と凄い運営ノウハウだ。こんな理想的な運営方法を編み出すなんて、あそこの教
祖と幹部は凄い。いや、ひょっとしたら本当の神がかりか……?」
 間もなく、天地互助教本部は世界中の宗教のメッカとなった。
「教祖様……どうぞ秘密を教えて下さい。あなたの経営ノウハウは人知を超えていま
す。一体どのように開発されたのですか?」
「皆の衆、言うまでもない。これすべて天の声、天敬である」
「信じがたい事です。なぜ天上界からそんな俗っぽいお告げをなされたのですか?」
「他でもない。こうしなければ地上から宗教が滅びてしまうからだ」
「では、それを防ぐためにあなたは降臨なさったのか…。つまりあなたは神の子なの
か?」
「いや、私は神の子ではない。実は悪魔の使いなのだ」
「ひぇ〜…何と言う事を…。ご冗談はおやめ下さい。天の声を伝えに来られたあなた
こそ神の子に違いない!」
「いや、冗談ではない。私はレッキとした悪魔の子だ。その証拠に私は何も人々を
救ってはおらん。ただ苦境の宗教界を救っているだけではないか。人を救うのは神の
子だが、宗教を救うのは悪魔の所業だ」
「な、なんて事をおっしゃるのです。それではまるでわれわれが悪魔の手先みたいで
はありませんか」
「そうでないと思っているのかね?これほどまでに長い間、これほどまでに様々な世
迷い言を言い、これほどまでに多くの人間を惑わして来たくせに」
「またまた返す言葉が無い……」
 あの長老が肩をすくめた。
「神は人を救い、悪魔は宗教と宗教家を救う。それで世間のバランスは取れているの
だよ。キミらが人間を惑わす世迷言を言ってくれるので、悪魔も助かる……これぞ天
国と地獄を結ぶ〔天地互助教〕の精神だ。さぁ、みんな……私を信じなさい。信じる
宗教は救われる……」
                  (完)

2002年06月04日22時45分05秒投稿

S.S☆「パソコン文壇」☆     あや太郎

 二十一世紀も半ばに差しかかると、「文壇」にも大きな変化が起きていた。
 紙と印刷による文学作品がついに姿を消したのである。ほんの一部で出版される作
品も文化遺産として博物館などに所蔵される為のもので、一般家庭はもちろん図書館
でする、すでに紙製の読み物は象徴的に展示されるだけの「看板」と化していた。無
論、書店は姿を消した。無理もない話である。誰でもがコンピュータ・ネットワーク
を通じて、文芸作品を自分の記憶装置に取り込み、保存や削除をする時代なのだか
ら、本屋も本箱も文化遺産になるほかは無い。
 当初は出版社を通じて大衆に分配されていた通信文芸だが、間もなく作家個人が直
接、ネットワークの掲示板に掛け、宣伝し、注文を受け、発信する方式が中心になっ
て来た。 その内、出版社も「文壇」から姿を消すであろうというのが専らの噂であ
る。
 そんな通信文壇に、一人の作家がいた。大作家という程ではないが、コンスタント
に作品を売り上げ、名も広く知られるようになっていた。
 多くのファンレターならぬ感想Eメールが寄せられ、愛読者の会も方々に設立され
ている。しかしそんな人気作家はほとんど人前に姿を表さない。「神秘性を失うと文
学的魅力も失う」……そんな気障な台詞がよく似合うようなお洒落で痛快な作風だっ
た。
「人前に出てしまえば、あれこれと先入観を持たれるからなぁ」
 神秘性を装うべき「秘密」が彼にはあった。自身が車椅子生活を余儀なくされた身
障者だったのだ。若い頃に冒険をし過ぎて大怪我を負った。二十一世紀の医学でも完
全には治せない障害が残ったが、命は取り留め、最先端の介助器具のお蔭で、何とか
不自由なく暮らせている。ちょっとした取材や旅行にも出掛けられるし、コツコツと
パソコンに打ち込んだ文章を世間に広める事も出来た。その意味では正に時代が生ん
だ作家かも知れなかった。
 若い頃の冒険や珍しい体験を基に、彼は娯楽性の高い作品を書きつづけ、それが広
く世間に受け入れられていた。しかし彼には一つの「こだわり」があった。それは自
分が身障者である事を世間に覚(さと)られない事であった。
 冒険野郎から身障者、そして流行作家へ……こんな境遇はかなり珍しいだろう。そ
の貴重な体験とギャップを基にして小説を書けば、ネタは尽きないはずであった。
 しかし彼は絶対的にそれを退けた。彼の性格と作風がそれを許さなかったのだ。
「怪我や不幸な境遇を売り物にはしたくない。第一書いていても楽しくないじゃない
か」 娯楽性を重視した彼の作風には、恐らく辛い体験がマイナスに作用して来るだ
ろう。
 その為に、彼は人前に出なかった。顔と上半身だけの写真は公開したが、実生活を
連想させるような姿は一切隠しつづけた。出版社を通さず直接作品を発表・販売する
ようになったこの時代、生の彼を知る業界人さえ居なくなっていた。
 お蔭で、彼が病人だ怪我人だという噂は流れていない。むしろお洒落で痛快な作風
が彼自身のイメージを勝手に作り上げていた。正に彼の希望通りとなった作家生
活……それをこのまま全うできたらどんなに良いだろう……そんな満足感に浸れる
日々であった。
 しかしそんな彼に一つ二つ気にかかる事があった。近頃脳裏を離れない疑問であっ
た。 それは彼のもとに寄せられる感想メールと近頃の文壇に関する噂だった。
 感想メールの多くに、読者自身の身の上話が出て来る事はよく有る現象なのだが、
その大半が読者本人の病気体験や不幸な境遇であった。そして心の慰め、心の支えと
して彼の小説を愛読しているというのだ。
「まさか僕の境遇が……」
 無意識の内に察知されているのだろうか。
 まぁ本来、小説などという物は気分転換やストレス解消に読むものである。病気や
不幸にさいなまれている人が読者の多くを占めていても不思議はない。
「それにしても、世間にはこんなにも多いのかなぁ……病人って」
 意識過剰かと思いながらも作家の心に引っ掛かるものが残った。
 そしてもう一つ心に懸かっていたのが、最近の作家事情であった。半分は噂の世界
なのだが、近頃の作家はほとんどが病弱な人間や身障者らしいという噂がまことしや
かに流れているのである。パソコンに打ち込み、出版社を通さずに直接ネットワーク
で発表・販売するようになって、従来のような出版社やマスコミ絡みの作家が駆逐さ
れ、家の中でコツコツと書きつづけるオタク的な作家が大半を占めるようになって来
たというのだ。
「まぁ、有りそうな話ではあるんだが……」
 これも何やら同病相哀れむの世界……似たような境遇の同業者ばかりに囲まれてい
るようで、気持ちが良くない。
「今や文壇は、病人の作家と病人の読者だらけになってしまったんだろうか?」
 何だかゾッとしないその想像図が脳裏を離れず、作家の気の晴れぬ日々が続いた。
「モヤモヤしててもしょうがない。一度調べてみようじゃないか」
 コンピュータ・ネットワークを通じてアンケートを取れば可能だ。
 彼は周到に正体を隠し、新たなネットワーカーとして全国的な読書家の頁を開設し
た。 先ず集まった読書家たちの中から、それとなく彼の愛読者らしき面々を、好き
嫌い調査から割り出す。その読者たちのもとに満遍なく通知が行くよう転送システム
をセットした後、その膨大な数の回答を分類するシステムを起動させるのである。
 あとはアンケートの内容なのだが、問題は質問の出し方である。あなたは病人です
か…とストレートに訊くと答えにくい上に魂胆を読まれる恐れがある。そこで先ず、
どんな心境の時に本を読むか……どんな本が心の支えになるか……そして最後にさり
気なく所在地と体調、スポーツ経歴などのプロフィールを。そこから住所と最寄りの
病院を割り出し、明らかに違法行為だが、院内の通院記録にアクセスして、アンケー
ト結果と照合する。
 そんな準備も整ったある日、作家はついに電子通信アンケートを実施した。
 すると早速、統計学的に充分な数の回答が集まった。それを早速コンピュータ解析
に掛ける。二重三重にひねった精神分析と、居住地、通院記録などから詳しい体調な
どを割り出す複雑な計算はとても人手ではやれない。
 あとはひたすらこの為に買い込んだ小型スーパーコンピュータの解析に任せた。
 数日後、結果が出た。そして判明したのは彼の愛読者の何と七割強が身障者であっ
たり病院通いをしているという事実だった。
「何てこった…。やっぱり俺の読者は病人だらけだったのか。あんなに怪我人や病人
の匂いを消して来たつもりなのに、気がつけば同様の病人や怪我人が寄り集まってし
まった。みんな直観的に病人の匂いを嗅ぎつけたのだろうか?本能的に同病相哀んで
いたのだろうか?あぁ、イヤた、イヤだ、情けない!知らぬ間に素っ裸を晒して恥を
かいている裸の王様と同じじゃないか。もうこんな稼業は真っ平だ…」
 作家は筆ならぬ記憶ディスクの爪を折り、間もなく失意の内に世を去った。
 死後しばらくして、どこからか彼の正体と断筆、急死の噂がネットワーク上に流れ
た。 それを見た読者と同業者たちからまたちょっと悲しげな、またちょっと呆れた
ような感想がネットワークの上を交錯した。それをアンケート集計すれば恐らくこの
ような結論が出たであろう。
「馬鹿だなぁ、あんな事でショックを受けるだなんて。読書家や作家なんて昔からほ
とんどそういう人間さ。ほとんどが病人みないなもんなんだよ……身体の病気か心の
病気かは別にして」
                  (完)

2002年06月03日21時23分53秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

NHKスペシャル。
米朝師匠が百年目の場面を飛ばした処で客席を映してナレーション。
「ほとんどの客は気付いていません。」
少なくとも半分は気付いとるわ。
独演会に足運ぶよぉな客やったらこの噺の下地位あります。
天下のNHKがその程度の事分からんはずは有るまい?
分かっていながらやんわり押し付ける制作サイドの事情と独断と偏見。
マスコミの白こい得意技ですな。
それから、いら立ち乍ら食事したはるとこなんか撮るな。
師匠もまたそないいっぺんに頬ばらいでも…。

終了後チャンネル変えたら小春團治さんの代書屋。
春團治師匠、まだまだ安心できませんなぁ。
これではねぇ…。

2002年06月03日14時38分36秒投稿

S.S☆「世界の滝壺」☆     あや太郎

 地球を遙かに離れ、銀河の辺境を旅する惑星探査チームは、またもや一種不可思議
な星を発見した。
 大きさはほぼ地球サイズ……厚い大気の層と起伏の多い大地と四方に流れる大河が
豊かな水量を証明する景観は、地球からの訪問者には懐かしさを覚えさせるに充分な
風情があった。
 しかし、先述したように、この惑星は「一種」謎と神秘に満ちた星であった。
 先ず動植物の存在が確認されない。次にこの星には「海」が見当たらない。そして
最後に数しれず流れる川の行方であった。
 地球とよく似た大気構成と地表温度……そして山の周辺に積もる雪とそこから流れ
出る無数の川を見ていると、生物が生まれ満ち溢れる条件は充分すぎるほどに揃って
いる。
 しかし生命反応は、少なくとも地上近辺には確認できないのだ。
 それは「海」が無い事と関係があるのかも知れない。地球でも生命の母は海である
と言われているではないか。
 そして「生命」以前に「海」の見当たらない事が先ず不思議だった。水資源が希薄
ならそれも分かるのだが、こんなに多くの大河か流れ、雪が積もり、大量の雨も観測
されているというのに……。
 軌道上からの観測で、探査チームはともあれ「川」の行方を探る事にした。東西南
北、ありとあらゆる方向から、無秩序に蛇行する川また川の流れる方向を確認し、も
つれ絡み合う一本一本の道筋を解きほぐして、ようやくすべての川の行方を探り当て
た。
 それは何と、一点に集中していたのだ。
 惑星の赤道上にあるその一点は何やら小さな窪みのように見えた。しかしこの高度
から雲に遮られながらその実態を見極めるのは容易ではない。
 探査チームは多少の危険は覚悟で、偵察機に乗り込み、その地点に着陸を決行し
た。
 そこは何と大きな滝壺であった。
 いや、大きな…というのは正確を欠く。確かに地球上のあらゆる滝壺に比べれば大
きな部類だが、この星の場合、意味が違った。何といっても、地上を流れる膨大な量
の水すべてがこの滝壺一か所に流れ込んでいるのだ。地球ならば表面の大半を閉める
大洋に流れ込むはずの水量が、ここではこの一か所の滝壺にすべて吸い込まれてしま
うのだ。
 それは正に収斂という言葉にふさわしい現象だった。
 ほぼ地球上のすべての河を流れるのと同じ量の水が、この惑星上の「穴」に落ちて
は呑み込まれてゆく。そして溢れる水は一滴も無い。それが「海」の成立しない理由
に違いなかった。
 地下に……恐らくは地表のすぐ内側に広大な海があるのではないか……先ず探査
チームはそう考えた。となると、その地下の海に生物が発生している可能性は?
 しかしそれも断定は出来なかった。これだけ生物発生の条件が揃っていて地下の海
だけに生命体が居るとは考えにくいのだ。それならば地上にも動植物の痕跡があって
良さそうなものだ。気温や気候から見て、この星の地表環境が安定してからかなりの
時間を経ているはずだ。それなのに、生物が地上に上がって来れないはずはない。
 そしてもう一つ、地下の海の環境に懸念があった。地殻の下に広大な水の層があっ
たとしても、それは地熱を受けて、かなりの高温に達しているはずなのだ。地球と同
じサイズなら、質量も地核温度も似たようなものだろう。それならば星の中心部から
湧きだしてくるマグマに触れて、煮えたぎる海となっている可能性も高い。しかしそ
の一方で、唯一の「穴」であるその滝壺から大量の水蒸気が上がっている様子もな
い。この惑星の構造は、いよいよ探査チームの頭を悩ませるに至った。
 その内に「間歇泉」という仮説が出た。
 何日か、あるいは何ヵ月、何年かに一度、滝壺に落ちた水は熱せられ膨大な量の水
蒸気となって吹き上がるのではないか。その多くは雨、雪となり、地表に降り注いで
又大河を流れ、あの滝壺に帰って行く訳だ。
 結局、この滝壺を徹底解剖するほかないという結論に達した。
 何はともあれ、地底を、滝壺の中を覗いてみない事には始まらない。
 それには手っとり早く、大規模爆発を起こして、滝壺を吹き飛ばしてみては?……
荒っぽいが、時間の制約のある身としては、その手しか無いという意見で一致した。
 軌道上の探査船から大型爆破装置が下ろされ、滝壺のそばで組み立て作業が始まっ
た。高まる緊張感、命懸けの作業……まるでその雰囲気に呼応するかのように、その
異変は起きた。
 惑星の滝壺が巨大地震と共に激しく揺れ始めたのだ。
 偵察チームは急ぎ軌道上の探査船に戻り、遙か下方の滝壺を固唾を飲んで見守っ
た。
 遠目にも滝壺の異状は見届けられた。そこへ流れ込む河という河がすべて干からび
始め、地表から「水」の痕跡が消えたのだ。
 いよいよ水蒸気の爆発か?……一同が固唾を飲んだ時、意外な事が起きた。
 何と、一旦枯渇した滝壺からコンコンと水が湧きだして来たではないか。
 そして、その膨大な水は渦巻きながら、滝壺へ繋がる河という河へ逆流を始めた。
 水はジワジワと大河を逆上り、やがて支流の隅々まで行き渡ると、ついには上流の
源流付近まで滲み渡るように広がっていった。
 水は一旦、流れを止めたかに見えながら、またいつの間にかゆっくりと下流に向け
て流れだし、元のトウトウとした流れに戻っていた。
 いつしか雲が立ち込め、雨が降り、雪が舞っていた。
 何事もなかったようにこの星の自然は脈々とその営みを続けていた。
 水を出し入れするだけだなんて、一体あの自然現象に何の意味があるのだろう?
 皆がひとしきり首をひねった後、ようやく一つの仮説が生まれた。
……ひょっとすると、あの水はこの惑星の「血液」なのではないのだろうかと。
 河は血管、雨雪は汗、赤道という大動脈の上に位置するあの滝壺は「心臓」……つ
まりこの星は一個の生命体、乃至は一個の受精卵なのかも知れなかった。
 見ると、川の流れは以前よりも速く、このままでは逆流のサイクルも早まりそうで
あった。まるで滝壺のそばに爆破装置を置かれ、心臓の鼓動が早まったのかのよう
に、その滝壺は鳴動を繰り返していた。
 雨と雪が、気温に関係なく支離滅裂に降りつづけていた。
……あれはこの星の冷や汗ではなかったろうか?……
 去り行く探査船の後方で、惑星は青く赤く、どこか恥ずかしげに明滅していた。
                  (完)

2002年06月02日21時35分26秒投稿

S.S☆「空しいお告げ」☆     あや太郎

 ある日ある時、世界中のすべての指導者に向かって神のお告げが下された。
 それはこの地球と人類の存亡に関わる最重要事項であると同時に、それさえ把握し
ておけば今回の危機も怖くないという実に有効な情報であった。
 しかしその重大なご託宣を受け取った各国指導者たちはそれぞれの思惑で大いに戸
惑っていた。先ず各大宗教の指導者たちはこんな葛藤の中に在った。
「今時、天の声、神のお告げと称してこの重大事を世間に発表すべきであろうか?下
手をすると、つぎつぎ湧き出る新興宗教やカルト教団どもと一緒にされかねん。ここ
は思慮深く、現代に合った形や式次第で世間に知らしめたほうが無難だろう。よし、
先ずはじっくりと文案を練るべし……」
 かくして、ある宗教は「大気汚染がひどくならぬように」と警告を発し、また別な
指導者は「これこれこういうガスを詰めた風船を飛ばし、神を讃えよう」と奨励し、
また違う宗派は「飛行機を大いに飛ばして大気をかき混ぜよう」と訳の分からぬ運動
を始めた。
 同じ頃、政治的指導者たちもやはり迷っていた。
「本来なら先を争って人類の危機を公表し、この解決策を世間に知らせたいところだ
が、なにせニュース・ソースが神様のお告げだ。我が国の民が信じている神様かどう
かもよく分からないし、信憑性も確かめようがない。他国の政治家たちも似たような
お告げを聞いた気配なのだが、みんな駆け引きでなかなか夢の内容を明かそうとしな
い。しかも決め手の解決策が、私の見たように〔人類そろって深呼吸〕なんて方法で
良いのだろうか?そんな事で人類が救えるとはとても思えないし、またそれを話した
ところで国民が信用してくれるとも思えない。星占いに凝っただけでも、あの大統領
はイカレちまったと言われるんだ。もしオカルト趣味の政治家なんて評判が立った
ら、これまでの実績はどうなるんだよ。ここは一番余計な事を口外せずに、学者ども
に観測させておくとするか。それがイイ、それがイイ…」
 真先にすっぱ抜きたい所と言えば、何といってもマスコミである。しかし彼らには
また彼らの迷いがあった。
「デスク 本当に世界中の人間がそのお告げを聞いたんですか?」
「いや、今のところ分かってるのは、新聞社の編集長クラスと、テレビのニュース
キャスターの一部だけらしい。この国では我が局のキャスターと提携新聞社の主幹が
聞いたんだが、他社に関しては確認が取れん」
「芸能ネタばっかりやってるA局やB局などには、お告げが行ってないかも……。国
営放送は沈黙を守ったままだし、ここはスクープのチャンスじゃないですか?」
「それが却って難しいんだ。国営放送のほうが後について来てくれたらしめたもんだ
が、慎重を期して、見送る可能性もある。そうなると、お告げを受けてない他の民放
はこぞって当局に難癖を付けてくるだろう。あそこは超能力や天の声に転向したって
な」
「似たようなカルト教団が問題を起こした時も、ウチは慎重を期して取材・報道が出
遅れましたからねぇ」
「焦って失地挽回を図ってるようでイメージ悪いんだよなぁ。さて、どうしたもん
か…」「やはり国営放送の出方を見てからにしますか?」
「そのほうが良さそうだな。見切り発車は控えよう……」
 結局、堅実な国営メディアとお見合いしている内に、両局とも次の話題に引き込ま
れ、お告げの一件もいつしか没となって行った。
 その点では、まだ芸能界……特に映画界は敏感に反応した。
 有名監督や俳優がこぞって地球救出のお告げを聞き、早速行動に出る事にしたの
だ。しかし……
「何といっても芸能人の悲しさだ。我々だけが声を大にして訴えても世間が信じてく
れるかどうか分からん。政府や科学者に問い合わせても曖昧な応対で、せいぜい〔観
測中〕という返事が来るぐらいだ。そこで我々、全世界の映画人は力を合わせ、ハリ
ウッドから世界人民へメッセージを送ろう。もはや損得抜きだ。有りったけのカネを
かき集めて、ボランティア製作しようではないか!」
 かくして、地球の危機と人類の救済を呼びかけるメッセージ大作「緑の星」が完成
した。しかし、世界を救う為みんなで森へ入って緑を守り、そして毎日深呼吸をしよ
うというコンセプトが観客に理解されず、大不入りで映画はポシャった。無論、続編
を作る予算など一銭も集まらず、急速に使命感と熱気が覚めて行った事は言うまでも
ない。
 同じ「お告げ」を受けても科学者の場合は当然ながら対応が違っていた。先ず、す
べては夢だろうと疑ってみる。その内、学者同士で連絡を取り合い、どうやら偶然の
閃きではない事を察知して、秘密裏に学会を招集した。
「何と言っても事が重大だ。一つ間違えは人類が滅びる恐れもあるし、世間に発表し
てパニックを起こすのが一番怖い。先ずは徹底した観測と、善後策の検討を……」
「いわゆる〔お告げ〕と言うか、防衛本能による共時性的インスピレーションと見ら
れる今回の世界同時強迫観念は、まだ科学的に不可解な点が多く、再調査の結果を
待ってから慎重なる行動を…」
「しかし、お告げの中にあった解決法はどうなんですか?……二酸化炭素を少々増や
せば、オゾン・ホールは閉じて、太陽からの突発的な紫外線照射も凌げる……あんな
簡単な事なら今すぐにでも出来るし、試しにちょっとやってみては?」
「馬鹿馬鹿しい。いくら何でも幼稚すぎる。世界の人間全員が、朝夕、五分ずつ深呼
吸するだけで、二酸化炭素の量が増えてオゾンホールが閉じるだなどと……そのメカ
ニズムが全く未研究だし、少なくとも我々科学者の言う事ではない。そんな稚拙な提
案をしたら、それこそ世界中の人々から馬鹿にされて信用を失うぞ。全くの自殺行為
だ」
「……という訳で、深呼吸法は余りにも安易で非科学的なアイデアのため今後の観測
結果と分析作業を待ちたいと思います。それでは関係各位の地道で周到な観測と研究
を期待しております。閉会……」
 かくして、ぐすぐずしている内に、ある日突如臨界に達した太陽の紫外線エネル
ギーはオゾンホールを抜け、大気の中を乱反射して、地上の生物をことごとく抹殺し
た。
 神様は、こう嘆くほかなかった。
「理屈を言わずに、素直に聞けよ…」
                  (完)

2002年06月01日22時51分58秒投稿

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