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2002年05月16日〜31日

S.S☆「退職金」☆     あや太郎

 元警察本部長が沈痛な面持ちで記者会見の場に立ち合っていた。
「この度の…警察幹部の不祥事につきましては警察OBとしましても重大なる責任を
感じており…これこの通り、深く陳謝いたします…!」
「元本部長−−−遺憾の気持ちはよく分かりますが、不祥事はすべてあなたが定年退
職された後の事ですし、土下座までされる事はないんじゃありませんか?」
「いえ。今の幹部たちは多くが私の育てた後輩ですし、彼らを後任に選んだ責任もあ
ります。その責任を痛感し、私も彼ら同様、退職金を全額返還するつもりです」
「何と、退職時に逆上って退職金まで…。その責任感の強さには感服しますが、何と
いっても退職されたのはもう十年前ですよ。失礼ながら、まだ退職金は残っているの
ですか?」
「いや、残念ながら、住宅ローンの返済などで一銭も残っていません」
「それじゃ、どうやって返すんです?」
「借金をしてでも…何としてもお返しします」
「分割払いにするとしても、かなり掛かるんじゃ…?」
「いえ、それでは示しが付きません。出来るだけ早い時期に耳を揃えてお返ししま
す」
「でも今は無職でしょ。それは無理があるんじゃないですか?」
「いいえ。警察OBの名誉にかけて、大急ぎで金策いたします!」
 間もなく、気骨のある元本部長の話題がニュース番組で取り上げられた。
「本日、約束通りあの元本部長から退職金の全額が返還されました。まことに潔い行
為です。実に尊い警察魂とでも申しましょうか……。おっ、ここで続報が入りまし
た。先日発生した銀行強盗事件の実行犯として、何とその警察OBが逮捕されました
!当初から、単純な手口で証拠をたくさん残した雑な犯行だとは見られていました
が、案の定のスピード逮捕でした。どうやら急いで退職金を返済しようとする余り、
急ぎ働きになってしまったようです。尚、その元本部長は犯行を認めましたが、盗ん
だ金の行方については頑として口を閉ざしたままとの事です。…それを明かすと血税
を納めてくれた国民に申し訳ないとの一点張りで、黙秘を通すつもりのようですが、
この分では同様な急ぎ働きが今後も増えそうな気配です。皆さんもご用心ください。
まぁ、変に律儀なのも困ったもんですね。…ではニュースはこのへんで……」
                  (完)

2002年05月31日22時24分06秒投稿

  こんにちは会員番号245番です。
 行って来ました、
「雀々まつり」5月27日難波は、松竹座
 午後6時30分 開演
 どうみても、年の近い叔母と姪か、従姉妹どうしにしかみえない淀川のへりくつ屋
さんと一緒です。
 まず楽屋口で、都筑さんにおあいしました、「ワッハ上方」を、リストラされたと
かで、少しおしゃべりしました。やっぱりノックさんのこと残念がってはりました。
 その後、たかじんさんのお弟子さんの、小丸さんにあいました、たかじんさんじか
んどうりに、はいってはるやんとおもいました。
 いよいよ始まりました、
 
 ごあいさつ   関純子さんタ−ジンさんの雀々さんの、軽いお話。タージンが出
て来てもだれも喜びませんでした。
                                      
 漫才      太平サブローさんのゲストで、漫才が始まりました、うまいサブ
ローさんだれとやっても、相手をうまくひきたてて、得意の横山やすしさんの物まね
で、笑いをとっていきます、雀々さんのお祝にふさわしく、うまいことたててはりま
した、ノックさんがきてたらしい事を、さりげなくにおわしてはりました。    
  
 音楽ショウ   横山ホットブラザース師匠達です、上手い、楽しい、三男の節男
さんが、雀々さんと、同じスポーツクラブにいっていると、いってはりました、「お
まえは、あほーかー」でしめくくりはりました。
 
 ゲストとうだうだ 
 やしきたかじんさん  桂ざこばさん 雀々さん
 のおしゃべりざこばさんが、枝雀にいちゃんが生きてたらと、言って泣き出して舞
台を、出たり入ったり、その為か生まれつきの性格かしらんけれど、たかじんさんが
コンサートの調子でしゃべりだし、ネタとなってしまいました、雀々さんの会なのに
もう少し雀々さんの事いうたったらいいのにと、おもいました。ざこばさんが、雀々
さんにもっていこうとするですが・・・・。

 中入り
 
 「桂雀々一代記」 桂 南光さん
 枝雀師匠との、思いでも上手く入れて、さらりとかたってはりました。上手い。
 
 「地獄八景亡者戯」 桂 雀々さん
 これについては、うーーん。
  
 隠居 上岡龍太郎さんが、おいわいの言葉を、パンフレットに書いてはりました。
  
  ああおもしろかった。

2002年05月31日20時54分59秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

5月28日 太融寺 「桂 米ニ 不定期落語会」

出し物

●「阿弥陀池」 桂 米吉
●「道具屋」  桂 米ニ
●「お玉牛」  桂 吉弥
●「ふたなり」 桂 米ニ

またまた風邪でぐずぐず言うたはった米ニさん。
「ふたなり」は20年振りやそぉです。
この「ふたなり」というのは男女両性を具える人の事。
肉体的にこっちのソレもあっちのナニもある人ですな。
米二さんはパンフレットに
「落語のタイトルとしては極めて恥ずかしくて不謹慎。出来れば変えてみたい。」
と、書いたはります。
無気味なTのG郎さんの「栴檀の森異聞」にしますか?
これは「ふたなり」という言葉が落ちに絡んでるが故に変えたもんかも知れません。
その落ち。
「これ、久四郎。そちの父親はふたなりか?」
「いえ、昼に食たなりでございます。」
父親が首吊ってるのに大ボケかます久四郎。
倫理的に、はたまた教育上よろしくない。
やっぱり「ふたなり」でええのと違いますかね。
古典でも有りますしね。
差別じゃキャベツじゃ言うて騒がれてもね。
「ふたなり」にだって人権は有るんだ。
一人前やけど…。

「道具屋」はオーソドックスな落ち。
笛から指が抜けんよぉになった客が法外な値を吹っ掛けられて
「そんな人の足下見るよぉな…。」
「いいえ、手元を見ております。」
まぁええんですけどね。
私は枝雀さんのが好きですな。
これもしたいあれもせんならんと思案の末に
「そぉや、どぉせやったら家一軒建ててもらお。」
それを聞いて恐れを為した客は笛と共に逃げてしまいます。
「あ、おらへんがな。おおい泥棒や泥棒やぁ。」
「なに泥棒?何盗まれたんや?」
「家一軒盗まれた。」
泥棒と聞いて何盗まれたと尋ねるのも変ですけどね。

いよいよワールドカップボランティア活動が始まる吉弥さん。
もぉひとつムードが盛り上がらんとぼやいたはりました。
特に関西はタイガースが好調なもんで余計ですな。
はたして彼は巨大な外国人から危険と見なされるもんを回収できるのでしょぉか?
その結果は来月の勉強会で。
「お玉牛」は2回目。
鎌を片手に踊り乍らやって来た小突きの源太。
集まってる仲間にお玉との経緯を自慢気に語ってまた踊り乍ら去って行きます。
「♪おいらは今晩お玉のところへ忍んで行くわ。」
その姿になんか足らん思ぉたら…おぉい、鎌忘れてるぞぉ。

米吉さんの「阿弥陀池」はもぉひとつでした。
1軒目で目論見通りにいかず、今度こそと飛び込んだ隣町の2軒目。
「どなたやな?あぁお前はんかいな。まぁお上がり。」
なんや年配やし友達にしては他人行儀。
「ははぁ米吉さん、なんか工夫が有るねんな。」
と思ぉたんですけど、しばらくしたら親し気にぞんざいな物言いになってました。
これでは相手の年齢もふたりの関係もさっぱり分からん。
〈落語は想像の芸〉と言う言葉をもぉいっぺん肝に銘じていただきたいもんですな。

米ニさんの石川県小松市某観光名所地獄巡りの話。
針の山に血の池地獄、午頭馬頭鬼共などお馴染みのシチュエーション登場人物?の次
に現代の地獄風景というのがあって、セクハラ地獄と表示されたコーナーになんとノ
ックさんの後ろ姿。
選挙のたすきを掛けて隣の女性のお尻を触ってるシチュエーションやったそぉです。
人形とは言え、こんなとこでこんな境遇に陥ってたとはなんと不憫な…。
いや、やっぱり流石と言うべきか?

2002年05月30日17時42分43秒投稿

S.S☆「両取り」☆     あや太郎

「この国もますます物騒になって来るわ。街を歩いてるだけで追い剥ぎに射殺された
り、誘拐されたり…。女の子が独りで歩いてたりしたら、もう大変。レイプしてく
れって言ってるようなものよ。こないだなんか、現場に何人も居合わせたのに、レイ
プされてる女の子を助けようとしなかったんですって。何て恐ろしい世の中でしょ
う。あなたの国はそんな事ないんでしょ、コーイチ?」
「まだそこまでは行ってないねぇ。でも痴漢や危ない奴は増えてるから、女の一人歩
きが危険な事には違いない。だから女の子はみな上手く難を逃れる為の講習を受ける
んだよ」「まぁ…。それって護身術とかセイフティ・ガードの新兵器?」
「いや、もっと古風な戦略さ。僕の国にはショーギというゲームがあってね。その
ゲームの格言に〔両取り、逃げるべからず〕というのが有るんだ」
「それってどういう意味?」
「同時に二つの駒を取られそうになった時、慌てて逃げると形勢が悪くなるという意
味さ。だからその駒はほっといて、他の所から良い手を放て…という心得なんだ。ど
うせ敵はいっぺんに二つの駒を取る事は出来ないんだからね」
「それは分かるけど……そういう心得と、痴漢に襲われた時の心得と、どう結びつく
の?」
「だから、もし逃げる手段がなくて、周囲に居る男どもも助けてくれない場合に
は……一緒に襲ってもらうんだよ」
「何て事を!……そんな事して、もし本当に集団レイプされたら、もっと悲惨な事に
なるわよ」
「そうとは限らない。一度に襲えるのは一人だけなんだからね。もし多数の男で一人
の女の子をレイプしようとしたら、取り合いになる。そうすれば当然内輪もめが始ま
るから、勝手に喧嘩をさせといて、そのスキに逃げだすって寸法さ」
「そんなに上手く行くもんかしら?」
「まぁ、上手く行けば儲けものさ。無抵抗の成すがままよりはマシだろう?」
「それもそうね。また参考にさせてもらうわ。じゃあ、グッバイ…」
「おいおい、待てよ。冗談だよ。おーい…」
 その声も聞こえぬまま、彼女はさっさと帰ってしまった。
 後日、その彼女が夜道で本当に痴漢に絡まれた。
「通行人が居るから大丈夫だと思ったのに……。キャー、やめて……誰か助けて頂戴
!」 しかし案の定、誰も助けてくれそうにない。
 その時ふと、コーイチのアイデアを思い出した。
「もう仕方ないわ。誰か……私を襲って〜!」
 すると、意外な呼び掛けに刺激されたものか、数人の男どもが寄り集まってきた。
「しめたわ。さあ、派手にやってちょうだい……」
 しかし男どもは期待に反し、争いもせずに言葉通り「派手に」やってくれた。
 あとには、全身〔蜂の巣状態〕にされた彼女が恨めしそうに夜空を眺めながら転
がっていた。
                  (完)

2002年05月29日21時53分21秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

大衆にアピールしたいジュンちゃん、大相撲より競馬選びましたか。
あの武蔵丸をも負かすとはタニノギムレットは大した奴っちゃ。
馬券も取って上機嫌。
場内インタビューに応えて
「皆さん、がんばりましょぉ。」
あんたに言われいでも皆さんはそれなりにがんばっとる…と思う。

相撲の方には官房副長官。
せめてヤスオ長官に来てもらいたかったですな。
ほんで、ブツブツ祝辞読んでヨロヨロカップ手渡して欲しかった。
この人、陰の次期総裁候補やそぉな。
いややなぁ、こんな総理大臣。
その他の人も見た目がもぉひとつですな。
ムネオちゃんを筆頭に脱落者も含めてね。
与党ではジュンちゃんしかおりませんな、今のとこね。

もし野党連合が政権奪取なったらば民主党の鳩ポッポ。
別路線ではシンタロ君にマキコちゃん。
いずれも一長一短あって本命無しですな。
牽制し合う有力馬。
それを横目に抜け出して大波瀾を演出するノーマーク。
それはいったい誰?

う〜ん…やっぱり国民投票にすべきやね。

2002年05月29日12時11分51秒投稿

皆様今日はOTCは薬屋です

本日の産経新聞の読者のページに載っておりました。

<茶髪の流行に揺れ動く心境>

友人に「まりちゃんは髪が黒いね」と言われた。一瞬、私は耳を疑った。
小さい頃から髪が茶色くて何度か悩んだことがあったからだ。
しかし、彼女の言葉の意味が段々わかってきた
最近は、白髪でもないのに、髪を染めている若い人が多いからだ。
周囲の人が茶髪にしてくれたおかげで、私は「黒髪の女の子」になった。
小学三年生の時「昆布を食べると髪が黒くなる」と友人が言った。
私は「黒髪の女の子」になりたい一心で、一日十円のお小遣いをためて
酢昆布を買った。
しかし、おさない私には酸っぱすぎて食べにくかった。また、経済的にも
続けられず、「黒髪の女の子」はかなわぬ夢のままに終わってしまった・
また中学生の時職員室で教師に「その髪どうしたの?」注意された。
幸い、昔から私をしっている教師が「彼女は地毛なんです」と助言してくれたが
コンプレックスの髪の色で注意されたのはまことに不快だった。
今になって、私は何の努力もせずに夢を叶えることが出来た。
このまま茶髪が廃れないことを願うべきだろうか

(神戸市21才 大学生)

>「黒髪の女の子」になりたい一心で、一日十円のお小遣いをためて
酢昆布を買った。
しかし、おさない私には酸っぱすぎて食べにくかった。また、経済的にも
続けられず、「黒髪の女の子」はかなわぬ夢のままに終わってしまった


一生懸命に小遣いを貯めて酢昆布を買って食べる少女
しかし、不味い!顔をしかめながらでも食べる少女
だけどそれさえも、経済的理由で続かない。
そんな少女時代・・・

彼女のために、このままずーっと茶髪が続きますように
南無〜〜〜

2002年05月29日09時04分54秒投稿

S.S☆「シェルターにて」☆     あや太郎

 世界の終末がこんなに呆気なくやって来るとは想像もしなかった。
 朝、目を覚ますたびに、すべて夢ではないのかと目をこするのだが、現実は変えよ
うもない。地球文明は瞬間的な高エネルギーと高熱に晒され、地上から姿を消した。
 原因は我らの母なるあの太陽の突発的なエネルギー放射だった。
 その結果、人類は、私が居るこの地下シェルターを除いて、恐らくすべて絶滅した
模様である。
 厳密に言うと、ここも核戦争に備えた核シェルターなどではない。
 日本のとある山のなかに建造された地下空間であった。その目的は宇宙からやって
来る微量な宇宙線を測定する事である。元々この地底五千メートルでも暮らせるよう
に様々な生命維持システムが完備していた。その上、宇宙線を観察する過程で、技術
者の私は太陽からの素粒子放射の異状をいち早く察知する事ができた。それを各観測
所に連絡しなから念のためにトンネル入口付近のシャッターを一時閉鎖したら、次の
瞬間、太陽からの予想不可能なエネルギー放射が地球を襲った。そして人類は絶滅し
た。
 実はこの偶然のシェルターも長くは持ちそうにない事が分かった。太陽からの宇宙
線の変化を観測し続けた結果、あと一年後にはまた太陽内のエネルギーが臨界状態に
なり、今回の数倍の熱量を持ったエネルギー照射が地球を焼き払うのだ。どうやら地
球と人類の完全なる死滅は免れそうになかった。残された道は、入口近辺を融解さ
れ、もはや外部へと出られないこの地底空間で、備蓄食料を食べながら一年間を細々
と生き延びる事だけだった。
 毎朝、目を覚ますたびに私はまだこれが夢ではないかと首を振る。そしていつもタ
メ息をついた。それが日課というか癖になっていた。
 しかしそれは「夢であって欲しい」という思いでもなければ、落胆のタメ息でもな
かった。むしろ「夢なら覚めないでくれ」という祈りを込めたタメ息だったのだ。
 強がりではない。実を言うと、私は今ちょっとした幸運を手にしていた。
 それは一人の女であった。研究所の華と呼ばれる通り、才色兼備で自分より一回り
若い彼女と、私は二人きりの毎日を送っているのだ。たまたま資料整理と見学を兼ね
て、この大深度の研究室に彼女が訪れていた時、あの大パニックが起きた。気がつけ
ば、憧れの彼女と死ぬまで付き合える環境に閉じ込められているではないか。これを
行倖と言わずして何と言おう。
 しかも私には「外部」に夢が無かった。実はこんな地の底に配置転換されたのも左
遷に他ならなかった。それも自分のミスではなく上司の失敗の責任をかぶらされて、
窓際族よりも希望のないこの地下室へと放り込まれたのだ。それでなくとも冷えきっ
ていた妻にはいよいよ愛想を尽かされた。ところが、いざ離婚となれば何かと口うる
さい女でもあった。
 そんな冷たい組織、冷たい妻、出世の見込みもない娑婆の生活にすべてを諦めかけ
ていた時、この一大事が発生したのだ。
 嫌なシガラミから一切手を切れる……しかもたまたまそばには憧れの「華」が咲い
ていてくれた。こんな一発逆転の人生が他にあるだろうか。たとえ生きられるのがあ
と一年だけだとしても、こんな結末なら私は大満足だった。
 但し、そんな結末を本当のハッピーエンドにしようと思ったら、彼女をモノにしな
ければならない。彼女と別々のベッドに寝ながら一年を無駄に過ごすのなら今即死し
たほうが楽だ。
 そしてその場合、肉体的にモノにするだけでは駄目だ。心までモノにしなければな
らない。少なくともある程度までは「妥協」か「納得」か「観念」をしてもらわね
ば、充実した日々は送れないだろう。強引に彼女をモノにして、寝首でも掻かれた日
には目も当てられない。
 そこで私の周到な口説き作戦が始まった。
「あと一年で、地球上の生物は滅亡する。辛くてもこの現実は受け入れなければなら
ないよ」
 彼女も研究者の端くれである。冷静に受け止めてくれた。
「失った家族や友人の事は大事な思い出として、何かの形で遠い未来に残そう。しか
しもう地上では二度と会うことが出来ないという事実もしっかり自覚しよう。残り時
間はたったの一年だ。めそめそしていてはイケない」
 彼女はまた冷静に頷いた。
「そして僕たちの事だが……」
 この地球に残った人間は恐らくこの二人だけ……そして出入口が破壊された今、こ
の狭い地下空間で共同生活を余儀なくされ……二人が仲良く助け合って行く以外、残
る時間を有意義に活用する方法は無い……という言い方で下心を隠しながら私は説明
を続けた。
 何かを言い含めようとしているとか、遠回しに口説いているとか……彼女がどんな
風に受け止めたかは冷静な表情からは読み取れなかった。しかし少なくとも反感は感
じられなかった。
……地上に残した恋人なんかも居ないのかも知れない……
 都合良く解釈して、私はさり気なく諭す作業を終えた。
 ともかく警戒心と反感だけは抱かせてはイケない。いくら二人ぼっちでも、敵対す
れば何一つ「モノ」にはならないのだ。むしろ命の危険さえ発生しかねない。
 逆に惚れた弱みと下心のあるこちらのほうが立場は弱いぐらいのものだ。
 しかし彼女は大人だった。寛容さや諦めの良さもあったのだろうが、間もなく私の
そばへ寄り添うように、二人の共同生活へと入っていった。
 その日から二人は激しく求め合った。
 それまでまるで私に「そんな気」など無さそうだった彼女が燃えに燃え、激しく私
を求めて来た。私も体力の限界など無視してそれに応じた。骨と皮になるまで励み続
ける決意で迷いなく連日連夜の行為に臨んだ。
 本当に、一年たたぬうち骨と皮になってしまうかも知れない……そう感じ始めた
頃、私はフト彼女に聞いてみた。
「キミ……ひょっとしたら以前から僕の事が好きだったのかい?」
 しかし返事は拍子抜けするものだった。
「いいえ、全然」
 ちょっと狼狽しながら私は聞き返した。
「それじゃ……単に慰めが欲しいのかい?それとも、残る時間をフルに使って快楽を
貪ろうというのかい?」
 すると彼女はサラリと答えた。
「前者も…当たりかも知れない。でも、やっぱり後者かな。残る人生は大切に使わな
きゃね」
「意外にドライな人なんだね。そんな見事に割り切るとは思わなかった」
「そうかしら。でも今更ジタバタしたって仕方ないじゃない。地球規模の危機を乗り
切ろうと必死にトンネル掘りをしたところで、助かりそうにはないし、それは無駄な
努力にしか見えないわ」
「まぁ、そりゃそうだが…」
「だから激しく燃えて暮らす事にしたの。たとえそれで二人が一年しない内に息絶え
てしまうとしてもね」
「情熱的と言おうか、大胆と言おうか……。でも、本当にそれで良いのかい?抱き
合っているだけの余生なんてさ?」
「良いんじゃないかしら。…生きるために無駄な努力をして、足掻いて、結局死んで
しまうよりも、死ぬために楽しく生きたほうが賢いと思うわよ」
「さすがに僕が憧れた知的な女だ。実に理詰めな人生観だね」
「褒めてくれたついでに、さぁまた励みましょう。夜は長いけど、余生は短いわよ」
「また…励むのか…」
 骨と皮になった私は、果てし無く燃え続ける彼女にベッドへと引きずり込まれた。
 「こんな幸せな最期はまたと無い」
 そう信じていた私の人生観が少し揺らいできた。
 確かに、いくら生きようと努力したって結局は死ぬのだ。そんな空しい努力をする
ぐらいなら、死ぬために…死ぬほど燃えて生きたほうがマシだと思ってはいた。しか
し体力が心細くなり、限界が見えはじめると、そんな潔さにも翳りが出てきたような
気がした。
……命が惜しくなって来たのだろうか?……
 完全に限定された、それ以上引き延ばされる可能性の無い命なのに、彼女との生活
ですり減って行く様を目の当たりにして、命が愛しくなってしまったのだろうか?
 全く「命」とか「寿命」とかいうヤツは厄介な代物だ。要らない時には捨て場が見
つからず、やっと捨て場が見つかったら、今度は惜しくなってくるのだろう。
 もし、こんなに追い詰められた環境でなかったら、私はとっくに彼女から逃げだし
て、長生きの道を取っていたかも知れない。
 そう考えると我ながら実に情けない。こんな心構え、意志の弱さだから他人の尻拭
いをさせられたり、簡単に左遷されたりしたのかも知れない。
 しかし幸いな事に、泣いても笑っても私と彼女に残された余命はあと数カ月だけ
だった。もう逃げ場も無ければ余生も無い。あるのは彼女との濃厚すぎる関係だけ
だ。
 残る人生を、地獄にするか極楽にするか……それはもはや客観的条件ではなく、私
の心一つに違いなかった。
「さぁ、今日も幸せになろう…」
 今や私は、今宵こそ本当に昇天させて貰おうと残る力を振り絞っている。
                  (完)

2002年05月28日22時16分57秒投稿

S.S☆「改心用ホログラム」☆     あや太郎

「博士……今度はまた何を発明なさったんですか?」
「ホログラムだよ。ほら、見ての通り三次元映像で実にリアルだ。良く出来てるだろ
う」「今時ホログラムですか…。そんなものなら、もうあちこちの企業が開発して、
安上がりな製品が販売されてますよ。今更リアルでHな女性の絵なんか…」
「誰がそんな目的で作るんだ。私はもっと人間の根本的な問題を解決しようと、この
装置を開発したんだよ。問題はソフトのほうだ。映像を作り制御するコンピュータの
感度だよ」
「感じやすくしてくれるコンピュータですか?」
「その方面から離れたまえ。このコンピュータは人間の心を読み、記憶を辿り、その
データを基にして、人間の良心を呼び戻そうという尊い目的で作られたのだ。つまり
人間を善に導くシステムなのだよ」
「それは高邁な理念ですね。善に導くというからには、そもそも悪人を改心させるた
めの機械なんですか?」
「そのとおり。人間に根っからの悪人はおらん。ただ悪事に手を染め、その罪悪感を
ごまかしているだけだ。その〔ゴマかし〕を取り除き、歪んだ良心と正義感を回復さ
せる事こそ、この改心促進マシンの狙いなのだ」
「ますます高尚なお考えだ。それでさっきの立体映像が悪人の改心とどんな風に結び
つくんですか?」
「先ずこのコンピュータに接続された各種センサーで悪人の心と記憶を読む。そして
彼にとって最も大切で愛しい人物を割り出す。大抵の場合それは親とか子供とか恋人
だろう。そのイメージを映像化して彼に生々しく見せてやるのだ。そう……一番効果
的なのは、地獄の風景が良かろう。地獄を覗き見たという設定にして、そこに先立っ
た愛する家族や友人、愛人を投影する。そしてそういう懐かしい人々が地獄の責め苦
に遭っているという映像にするんだ。そして彼らが責め苦に遭っている理由は他でも
ない…その悪人自身の罪を償わされている…という演出だな。そうなれば、もういく
ら悪事を働いてきた人間でも、いたたまれんだろう。そして罪を悔いれば、愛しき
人々への責め苦も無くなると言い聞かせる。そうすれば、さしもの大悪党も深く反省
し、すべての事件は解決、新たなる犯罪も激減するという寸法だ。どうだね、この改
心システムは?素晴らしいだろう」
「なるほど、凄い機械ですね。本当にコンピュータもセンサーも映写機器も計算通り
に機能するんですか?」
「すべて実験済みだ。私を含め、周囲の人間を対象に実験を繰り返したが、コン
ピュータの読みと映像感覚は予想以上だったよ。みんなこれと言って悪い事などして
いない人間ばかりなのに、僅かな良心の呵責を実に上手く突いてきて、ほとんど涙、
涙で罪を悔いてしまった。こんな便利なシステムなら、もっと早く作って、世の犯罪
防止に役立てておけば良かったと悔やんでいるぐらいのものだ」
「自らおっしゃるくらいだから、本当の優れ物ですね。じゃあ、これから大いに実用
に供しましょうよ。一人でも多くの悪人を一日も早く改心させたいところですから
ね」
「全くその通りだ。さて、問題はその悪人どもを連れて来て、機械に掛ける手立てな
んだが、キミ何か良い方法はあるかね?」
「あるかね、と言われても……強引に引き立てて来て、椅子に縛りつけるほか無いで
しょうね」
「いやいや。そんな手荒い事はできん。必須条件は心の安定だ。悪人本人が心を落ち
つけ、心底から改心しようという心境にならない事には、この繊細で緻密なコン
ピュータと映像装置は働かん。ちょっとデータが間違っても画像がブレても、演出効
果は台無しだからな」
「えっ、そんなにデリケートなんですか?でも、悪党になればなるほど、そんな殊勝
な気持ちで実験台にはなってくれませんよ。そもそも、改心しようなんて気のある人
なら、ハナから大それた事はしないでしょうからね」
「そうか……。じゃあ、世の中の悪人たちがみな改心しておとなしくなるのを待つと
するか」
「なんじゃ、そら……?」
                  (完)

2002年05月26日22時14分54秒投稿

S.S☆「夢の中の夢」☆     あや太郎

「よぉ、どうしたんだ?顔色が悪いな」
「うん、実はイヤな夢を見てね」
「夢と言えば、確か君は夢占いが得意だったな。縁起の悪い夢でも見たのかい?」
「そうなんだ。夢のなかでカミさんが死んだんだよ」
「ほぉ、そりゃゲンが悪いなぁ」
「いや、それは良いんだ。その後すぐに新しい恋人が出来て、間もなく結婚という運
びになったしね」
「何て奴だ。しかしそう言えば君ら夫婦は仲が悪かったな。渡りに船のような夢だ
な」
「ところが、結婚してこれから幸せにというところで目が覚めた」
「ふーん…」
「見るとカミさんがそばに座っててさ、どんな夢を見たか問い詰めるんだ」
「何故そんな事を訊いて来たんだ?」
「寝顔がニヤけてたと言うんだ。何か浮気してる夢でも見たんじゃないかと女の勘で
ピンと来たんだなぁ。トボケても追求が厳しくて、つい本当の事を言っちまった」
「気の弱い奴だなぁ。それじゃカミさん、怒ったろう。焼き餅焼きだからな」
「怒った怒った。すぐに恋人を作ったり再婚したりするなん……本性が見えた、私に
も考えがあるって…」
「離婚届を突きつけて来たか?」
「いや、それならまだ救いがある。逆に絶対別れないと念を押した上で、家庭裁判所
に慰謝料請求の訴えを出したんだ」
「おいおい、泣きっ面に蜂だね。しかし今時の事だ。家庭内の問題で慰謝料を払わさ
れるケースもあり得るぞ」
「あり得るどころじゃない……現に払わされる事になったんだよ。それも財産全部」
「なに?貯金だけじゃなくて土地と家の名義もか?そりゃキツイ。身ぐるみ剥がされ
たようなもんじゃないか」
「そうなんだ。いつでも裸で放り出しますよって態勢だよ。そしてついさっき、本当
に裸にされた」
「そう言やステテコ一枚だな。そりゃ大変だ」
「ああ、寒い!……と身震いしたところで目が覚めたんだが、どうも居眠りしてて寝
冷えしたらしい。ヘックショイ…」
「何だ……昼寝の夢かよ。びっくりさせるな」
「いや、それが単に夢で良かったと済ませられないから悩んでるんだよ」
「どうしてだい」
「ほら、君も知ってる通り、僕は夢で将来を予知するのが特技だ。だからさっきの夢
が単なる夢で片付けられないんだよ」
「そうだったな。君がリアルな夢を見た時は、大抵それが現実に起きるって言ってた
もんな」
「そうなんだ。そして今さっき見た夢がこれまでになくリアルだったんだよ。あぁ、
困ったなぁ。とても夢だけで終わるとは思えない」
「今更、夢を書き換える訳にも行かないしなぁ。しかしそんなに落ち込むなよ。まだ
救いはあるじゃないか」
「とこに救いがあるんだ?」
「君が見た夢は二段式になってただろう?最初に一つ夢を見て、次にそれが覚めて二
番目の夢を見た訳だ。確かに夢の中では、一旦死んだカミさんが、目を覚ましたら実
は生きていたってストーリーだが、現実世界では、そんな事はあり得ない。つまり最
初に奥さんが死んだ段階で、二番目の夢は正夢に成りっこないんだ」
「あ、そうか…。つまり最初の〔夢の中の夢〕が正夢になったら、もうそこでカミさ
んとの縁は切れる訳だから、あとの報復を恐れる事はないって事か」
「反対に、最初の夢が正夢にならなければ、あとのモメ事は起きようがない。モメる
原因がないんだからな。それですべては今まで通り……元の鞘だ。まぁ、奥さんと末
永く暮らすのがお望みかどうかは別問題だけどな」
「贅沢は言わないよ。財産全部むしり取られて、裸で放り出されるよりはマシだ。我
慢して尻に敷かれながら、慎ましく暮らす事にするよ」
「つくづく気の小さい奴だなぁ。ご同情申し上げるよ。まぁ慎ましくやりな…」
「持つべきものは友だ。明快な論理で安心させてくれたよ。そうか……カミさんが死
んで再婚するか、何事もなく暮らして行くか…そのどっちかしか無い訳だ。あぁあ、
ホッとした。ホッとしたところで、もうひと眠りするか。ふぁ〜あ……」
 −−−−−−−−−−−
「あなた……あなた……起きなさいったら」
「ふぁ〜あ、良く眠ったな。どうしたんだい、お前。変な顔をして?」
「ずいぶん嬉しそうな顔で寝てたじゃない。何か良い夢でも見たの?」
「いや、今さっき友達が来てね。嬉しい話を聞かせてくれたんで、ホッとした気分で
寝てたんだ」
「ホッとして?一体何がホッとするのよ。あなたまた何か良からぬ事を企んだんで
しょう。ホッとするというのは後ろ暗い所がある時に感じる事よ。さぁ正直にお話し
なさい!」「トホホホホ……そういう事には良い勘をしてるねぇ。とてもお前に隠し
通せる自信は無いよ。実はかくかくしかじか…」
「んまぁあ……そんな不届きな夢を見て、それをまた不届きな解釈で勝手に安心して
たのね。こんなこと許しておけない。お仕置きをして上げるわ。全財産とまでは言わ
ないけど、今後一年間お小遣い無しよ!」
「ヒェ〜、そんなひどい……。それじゃ理屈に合わないじゃないか。二段式の最初の
夢は単なる夢で、二段目の夢だけが当たってただなんて…」
「甘いわねぇ。それはきっと本来、三段式の夢だったのよ。一つ目は逆夢で、二つ目
が正夢で、それから三つ目がオマケ」
「どんなオマケなんだ?」
「正夢の…悪夢よ!」
「キャイン…」
                  (完)

2002年05月25日23時01分47秒投稿

S.S☆「信ずる者は…」☆     あや太郎

 二十一世紀を迎えても、この地上には相も変わらず怪しげなオカルト趣味やカルト
教団がはびこる一方。業を煮やした各国政府はついに世界的規模で宗教団体組織すべ
てをガラス張りにしてしまう「国際破防法」を提案し、採択を目指し協議を開始し
た。
 言うまでもなく、既存の宗教団体からは轟々の非難が巻き起こる。そこで主要各国
政府は、際どい調停案を提出した。
「全世界の全宗教団体が一つ残らず今回の取り締まり法案に反対の意志を表明した場
合には速やかにこれを廃案とする」
 反対しない団体などあろうはずが無い−−そんな自信と、厳しい世論や政治権力と
の折衝疲れで、各宗教組織は一抹の不安を感じつつも妥協案を呑んだ。
 そして案の定、破防法賛成派の宗教団体が出てきた。
 まだ教団創設十年足らずの新興宗教「世界お助け教」だった。
「我々はガラス張りの宗教組織こそ本物の宗教だと信ずる。隠したい教団は疚しい教
団である。すべてを世間に公開しながら修行と人類救済に努める……これ以外に宗教
の存在理由は無い。反対する奴らこそインチキ宗教家である!」
 ここまで言い切られると、曖昧な立場を続けてきた既成の宗教団体は弱い。世論の
後押しが追い風となり、世界お助け教は信者を増やすばかり。一方反対派は総崩れ状
態で、一つまた一つと破防法賛成派に鞍替えして行くほかなかった。
「なんたる惨状…。このままでは思想と信仰の自由はなくなってしまう」
「シッ!そんな事をうっかり口に出されては困ります、長老。世間にはもうそんな理
屈は通用しないのです。…何故ガラス張りでは思想と信仰の自由を保てないのか?…
そう突っ込まれたら、ひとたまりもありません」
「見られたり聞かれたりして困るような事はするな…か。なるほど、返す言葉がない
のぉ。しかし一方では個人のプライバシーだ人権だと声高に叫びながら、なぜ信仰上
の秘密や神秘性にはこんなにも冷たいんじゃろう?」
「今までが今までですからねぇ。ちょっと隠しすぎたツケが回って来たような気がし
ます」
「トホホホ、情けない。わしらの先輩たちがちょっとセコイ脱税や私欲に走ったばか
りに、二十一世紀の宗教界はこんなにも悲惨な目に遭わねばならぬ」
「それにしても、長老。不思議なのはあの最初に寝返った教団です。なぜあの連中は
あんなにも堂々と開き直って、ガラス張り教団に転向できたんでしょう?」
「ふむ。わしも当初は訝ってな、どこかの政府機関が今回の為に作り上げた急造教団
ではないかと、興信所にも調べさせたんじゃ。ところが十年前に出来たどこにでも有
る新興宗教で、それも創立当時はむしろカルト教団に近い危ない団体だったらしい。
警察当局にもマークされ、教祖は脱税や違法財テクの容疑で告発されたり、結構危な
い橋を渡って来ておるようだ。しかも教祖や教団幹部は依然健在で、いまだにかなり
の高収益を上げておるとか」
「すると、いまだに怪しげな所がある訳ですね。ならば真先に告発され、解体される
恐れがある訳だ。……あっ、分かった。解体を逃れるために政治取引で、取り締まり
賛成派に寝返ったんですね?」
「いや、裏情報によると、それも見当違いらしい。警察は喜び勇んで事ある毎に教団
へ乗り込み、金の出入りなどをチェックしたのだが、何故か煙のように証拠が消え失
せ、決定的な不正も発見できずに、検挙は見送りとなったそうな。査察官たちもキツ
ネにつままれたような顔をしているらしい」
「これは一体どういう事でしょう。マークされ、査察され、しかも現に金の出入りは
激しいのに、破防法を受け入れたり、いよいよ厳しい捜索を受けながら、依然尻尾は
掴ませないだなんて…。正に神がかりだ」
「ふむ。ひょっとすると、本当の守り神がついているのかもしれん。ともあれ、もっ
とあの教団に注目してみよう」
 その後も、お助け教団は激しい査察と調査の波をかいくぐり、いよいよ巨大化しな
がらも堂々と優良経営を続けていた。そのうち、同教団からインターネット上に一本
の広告メールが流されるようになった。
「ガラス張りでも裕福に運営する方法教えます。しかも無料で…」
 中小のカルト教団はおろか、世界の大宗教ですらこの申し出に飛びついた。
 しかもその無料マニュアルに則って教団運営を始めたところ、ほとんどの宗教団体
が財政危機を乗り切り、安定運営できるようになった。
「何と凄い運営ノウハウだ。こんな理想的な運営方法を編み出すなんて、あそこの教
祖と幹部は凄い。いや、ひょっとしたら本当の神がかりか……?」
 間もなく、お助け教本部は世界中の宗教のメッカとなった。
「教祖様……どうぞ秘密を教えて下さい。あなたの経営ノウハウは人知を超えていま
す。一体どのように開発されたのですか?」
「皆の衆、言うまでもない。これすべて天の声、天のお告げだ」
「信じがたい事です。なぜ天からそそんな俗っぽいお告げが下されたのですか?」
「他でもない。こうしなければ地上から宗教が滅びてしまうからである」
「では、それを防ぐためにあなたは降臨なさったのか…。つまりあなたは神の子なの
か?」
「いや、私は神の子ではない。実は悪魔の使いなのだ」
「ひぇ〜…何と言う事を…。冗談はヤメて下さい。天の声を伝えに来られたあなたこ
そ、神の子に違いない!」
「いや、冗談ではない。私はレッキとした悪魔の子だ。その証拠に私は何も人々を
救ってはおらん。ただ苦境の宗教界を救っているだけではないか。人を救うのは神の
子だが、宗教を救うのは悪魔の所業だ」
「な、なんて事をおっしゃるのです。それではまるでわれわれが悪魔の手先みたいで
はありませんか」
「そうでないと思っているのかね?これほどまでに長い間、これほどまでに様々な世
迷い言を言い、これほどまでに多くの人間を惑わして来たくせに」
「またまた返す言葉が無い……」
 あの長老が肩をすくめた。
「神は人を救い、悪魔は宗教と宗教家を救う。それで世間のバランスは取れているの
だよ。さぁ、私を信じなさい。信じる宗教は救われる……」
                  (完)

2002年05月24日17時28分31秒投稿

S.S☆「混入経路」☆     あや太郎

 裏通りのカフェテラスでパソコンに向かい、紳士は今進めている大型乗っ取り計画
の段取りを楽しげに考案していた。
 紳士は株の投機家。世界の経済を動かす実力者である。
 この小国の経済と命運を左右するこの一大駆け引きも彼にとっては退屈凌ぎのゲー
ムに過ぎないらしい。
 平然とパソコン画面の数字を眺める紳士の目の前には小さな公園があった。小汚い
子供たちが、やはり薄汚れた鳩の群を追いかけては嬌声を上げていた。
 昼休みでもないのに、何人かの大人が芝生に寝ころがっている。みな失業中なのだ
ろう。無気力な顔ばかりだ。そこへ又一人労務者風の男が紙袋を下げて現れた。ペン
キの剥げたベンチに座り、紙包みの輪ゴムを外すと、昼飯用のパンとトマトが転げ出
た。
 ボサボサ頭を掻き上げながら、左の手でパンを摘み一度二度齧りつく。次にトマト
を摘み上げ、口まで運んだ。果汁でも付いたのか、しきりに指を包み紙に擦り付けな
がら輪ゴムをもてあそんでいる。
「無気力な連中だ。これなら国ごと乗っ取ってやったほうが、奴らも幸せだな」
 うそぶく紳士の目の前で、ボサボサ頭の男はさっきの輪ゴムを指にかけ、伸び縮み
させていた。時々後ろを向き、パチンと鳴らす。辺りにたむろしていた鳩たちがパッ
と飛び上がった。
「鳥をからかっているのか。下品な奴だ」
 紳士は不味そうにコーヒーカップを置き、またパソコンのキーを叩きはじめた。接
続された携帯電話が転送中のランプを点滅させた。
 その様子をベンチの男がボンヤリ眺めている。上物のスーツとブランド物の靴を羨
んているのか、時々ふて腐れたような顔で手元に視線を落とし、また固いパンを齧り
始めた。 その時、カフェの奥からボーイが紳士に声を掛けた。
「只今お電話が掛かっております」
「電話?妙だな…。連絡はこの携帯に入るはずなんだが…」
 紳士は警戒するように周囲を見回した。するとボーイが確認を取る。
「××様ですね?」
「いや、それは私じゃない」
「あ、失礼しました。他のお客様のようです」
「なんだ…」
 拍子抜けした顔で、紳士が椅子に座りなおした。
 弾みでテーブルが動いたのか、カップのコーヒーが少し揺れた。
 そのカップに手を伸ばし、紳士が一口啜る。
「どこから命を狙われるか分からない。余所で電話に出るだけでも二つや三つの危険
性は考えておかねば。先ず受話器周辺の爆発物。それから狙撃。席を外した隙の毒物
混入…」 周囲に危険な匂いが無いか、常に注意を怠らずにここまで生き延びて来た
のだ。
「さて、最後の指令を出すか。この値で買い取ればあの企業もこっちのもんだ…」
 これでこの国の主要企業のほとんどを掌中に収めることが出来る。この小国が彼の
独占物になる時は目の前に迫っていた。
 ポン、ポン、ポン…とキーを叩いて転送ボタンを押そうとした最後の瞬間、紳士は
突然不可解な苦痛に襲われた。
「い、息が出来ない…」
 助けを呼ぼうにも声が出なかった。胸が締めつけられるように痛む。まさか青酸性
の毒物中毒……?
「い、いつ……盛られた……?」
 答えが見つかる前に、紳士は意識を失い、テーブルごとテラスの上に転げ落ちた。
 店員が駆けつけ、救急車が呼ばれ、病院に担ぎ込まれた時にはもうすでに世界を動
かす投機家は絶命していた。
 死因はやはり青酸性の毒物……そして混入経路は特定できなかった。ただコーヒー
カップの中には何故か一本の輪ゴムが沈んでいたという。
(完)

2002年05月23日22時21分17秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

「社会的注目を浴びたかった。」
他人の飼い犬とか猫を殺した男の供述。

ゴールデンレトリバーはほんまに人懐っこい。
ちょっと遊んでやろか?なんて振り見せたらとことん付き合わされます。
例えそれが見ず知らずの人間でも、です。
おそらく散歩や思ぉてホイホイ付いて行ったんでしょぉな。

どぉせ鬱憤晴らしか面白がっての犯行やとは思いますがね。
供述通りの理由やったらもっと強い奴相手にせにゃ世間は注目してくれませんわな。
例えばグリズリーとかアリゲーターとかアナコンダとかフーリガンとかね。
野村さんちのドーベルマンなんかどぉ?
これは手強いぞ。
一生憑いて…いやいや、付いて廻るぞ。
どや、怖いやろ。

2002年05月23日11時46分29秒投稿

S.S☆「バックアップ・システム」☆     あや太郎

 二十世紀末に現れたワープロ、パソコンはその便利さと共に様々な危険を孕んでい
た。それはデータの「うっかり消去」である。
 長時間かけて折角インプットした文章やデータが、うっかり電源を切ったり、ボタ
ン一つ押したばかりに一瞬にして消えてしまう−−こんな恐怖と試練に耐えながら、
初期のユーザーたちは果敢に機械に立ち向かったものである。
 間もなく安易なミスだけではデータが消えない機種が次々に現れ、時には文字表
示、時には音声、また時には何重もの安全チェック機能で極力人為的なミス消去を引
き起こさないようなシステムが次々に組み込まれていった。
 しかしさすがは人間である。どんなに慎重に周到に綿密に神経質に、時には心理の
裏の裏をかくような凝った消去防止システムを組み込んでも、使用者たちは往々にし
て虎の子の重要データをミス消去し続けていた。
「おい、またやっちゃったのかい?今度もボタンの押し間違いか?」
「いや、いくら押し違えても、今の機械は音声で警告してくれるし、それを聞き逃し
ても機械のほうが勝手に停止して、考え直して下さい…のサインが出る。そこからも
う一度ミスると、今度はデータを消去する理由を教えて下さいと来るんで、いちいち
納得の行く説明をしなくちゃならないから、そうこうしてる内には気づくようになっ
てるんだ」
「じゃあ、機械の故障か何かで消しちゃったのかい?」
「いや、今時の機種は自動的にバックアップ…つまり予備のデータを収録しといて、
またそれを外からの影響を受けない所へ仕舞い込んで、滅多に出さないから、本体が
壊れても予備のデータはちゃんと残るんだよ」
「それじゃ、その予備のデータ…つまりバックアップをわざわざ本体から取り出し
て、消去したとか壊してしまったとか?」
「いや、取り出そうとすると専用回線から自動的にメーカー本社のデータベースに転
送されて、そこで改めて保存してもらえるんだ。回線が外れている状態では予備デー
タのディスクは取り出せないようになってるから、それもあり得ないんだよ」
「じゃあ、一体何をどうやったのさ?ハンマーか何かでいきなり機械を叩き潰した訳
でもないだろう」
「そんな無茶しないよ。ただ、いつものようにボンヤリと機械を操作してたら、急に
データが出なくなって、確認してみたら、データは行方不明って文字が出るばかりな
んだ」
「本人でも取り出せないんだから、誰かに盗み出されたって事もないだろうな。じゃ
あ、一体どうなったんだろう?」
「さっぱり分からないよ。近頃の機種はデータ保存が完璧だからすっかり安心してた
のに、こんな事故が起きるなんて大ショックだよ」
「全くだ。みんなボヤボヤしてられないぞ。説明書を読みなおして、研究し直さなく
ちゃ」
 ユーザーたちが解説書に首っ引きで猛勉強していると間もなく各端末のディスプ
レーに忽然と「データ復活」の文字が現れた。
「どうした事だ?まだ何も操作してないのに、何故データと機能が回復したんだ?」
「全く不思議だ。おや…また何かメッセージが出てくるよ 」
 そこには−−「ボンヤリしてないで、たまには操作法の復習を宜しく!」という檄
文が点滅していた。
 どうやら未来のパソコンは、人間の「油断」まで防止する装置が組み込まれている
ようであった。
                  (完)

2002年05月21日22時16分07秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

5月18日 Team火の車稽古場 「第5回ごかいらく落語会」

出し物

●「GOGOダイエット」     桂 あやめ(くまざわあかね 作)
●「対談:狂言ばなし〜酒の粕」 茂山 逸平/進行:桂 九雀
●「産湯狐」          桂 九雀(小佐田定雄 作)

  中 入

●「茶漬えんま」        桂 雀松(小佐田定雄 作)

会場の空気がいつもと少々違う。
狂言ファン…というより茂山逸平ファンが多数来たはったのが原因。
早ぉ言うたら追っ掛けですな。
それも老若男女色々で、私の前には女の子がずらり。
斜め前には年寄りの一団。
デジカメで撮影に余念のないお婆さん、よっぽどのファンなんやねぇ。
後ろにも見なれん顔ぶれが多数座ったはりました。
中には着物姿の女の子も…。
落語ファンとは何となく雰囲気が違いますな。
皆よぉ笑ぉたはりましたけど、やっぱりそこはお目当てが違います。
逸平さんの然しておもろい事も無い一言にえらい反応。
九雀さんが
「やっとまともな人の後に落語出来る。」
前回までのメンバーがメンバーだけに実感でしょぉな。

「茶漬えんま」は枝雀さんの持ちネタ。
好きな噺です。
師匠の空気を損ねる事無く、しかもちゃんと雀松ヴァ−ジョンになってました。
閻魔の庁の役人と松本留五郎の会話。
「もぉじき米朝が来よるし、一昨日小さんが来た。」
「そんな事言うて大丈夫でっか?」
「大丈夫大丈夫、こんだけの人間しか聞いて無い。」
枝雀さんの「代書」の
「とぉ〜めぇ〜。」
も挟み込んで爆笑でした。
狂言ファンには分からんかったよぉですが…。
軽目で乾いた語り口。
新作を語る時のこの人はほんまに上手いと思いますな。
反面古典がもぉひとつと感じてしまうのは何故?

これも枝雀さんのネタ、「産湯狐」。
家出した息子吉ちゃんの無事を祈って、毎日産湯稲荷に陰膳を供える老母。
病を得て寝込んでしもぉた彼女の代わりを、隣の気のええ夫婦が引き受けます。
が、夕方供えた膳を引き上げに行くと中身は綺麗にからっぽ。
気味悪がる女房に神主が言うには、その辺りに住む狐の仕業であろぉと言う事です。
そんな冬の夜中、隣から聞こえるお婆さんの話し声に目が覚めた夫婦。
なにやら会話してるらしいが相手の声が聞こえません。
寝言か?ひょっとしたら苦しんでるのかも知れん。
商売もんのノミで壁に穴を開け見てみると、なんと!
お婆さんの枕元に息子が…。
意見をしてやると息巻く亭主を女房が押し止めます。
「今晩は親子水入らず。明日にしなはれ。」
翌朝訪ねてみると息子の姿は見えません。
「帰ってきてくれて話してたのじゃが、急にうつうつとして寝てしもぉた。
 また出て行ってしもぉたのや無いやろぉか?」
心配顔のお婆さんを亭主は慰めるのでした。
その夜、またまた声が聞こえます。
今夜こそ。
亭主が外に出てみると一面の雪化粧。
戸口で声を掛けても叩いても返答が無い。
業を煮やして戸を開けた瞬間室内の明かりが消えます。
そこにはふとんの中のお婆さんひとりで、息子はいませんでした。
そしてやっぱり話してる内に寝てしもぉたという事。
不得要領の亭主が女房に
「一方口やのに…すれ違ぉた憶えは無いけどな。」
「吉ちゃん出て行ったんやない。見てみ?あんたの下駄の跡しかついてない。」
おそらくどっかで命を落とした息子が母親に逢いに来たのやろぉ。
そぉ納得して寝床に戻る夫婦。
雪の上には産湯稲荷まで小さな獣の足跡が続いておった、とさ。

九雀さんの語り口によぉ合ぉた噺です。
枝雀さんはこの噺を一二度しかやりはらんかったらしい。
その理由は「天神山」の存在では無いか、と思ぉたりしたんですな。
「天神山」で枝雀さんは狐の親子兄弟の情愛を表す場面を登場させます。
そぉいう点で共通項のある両方の噺を集約した。
つまり自分の中で整理した、という事なのかも知れません。
で、より落語的要素の多い「天神山」の方を生かした。
なんです?ちょっと深読みし過ぎ?
そぉですな。
単に気ぃが乗らんかっただけかも…。

あやめさんの「GOGOダイエット」。
まだ完全に憶えて無いと言う言葉の通り、あっちに引っ掛かりこっちでけつまづき。
それが実にあやめさんらしい。
高校生の娘に勧められてダイエットする事を決心した母親。
娘はその道の権威である学校の保険教師に協力を頼みます。
但しその教師も太目で、
「理論派やから実践は伴わん。」
てな妙な理屈を捏ねる人。
ともかく彼女の指示に従って色々奮闘しますが、勝手な解釈からことごとく失敗。
保険教師とは罵り合いの末喧嘩別れ。
そして、慰めてくれた肉屋の奥さんが陰であざ笑わろぉてる事を知った時、切れて開
き直った母親のダイエットは志半ばにも届かん内に終焉を迎えました。
元の自堕落な生活に戻ったある日、見事にスリムになった保険教師が訪ねてきます。
そして肥満の原因がストレスであり、母親に思いっ切り文句を言うたのがきっかけに
なって体内の老廃物が出てしまってダイエットに成功したとの事。
その最終段階、分娩室に入った彼女からは○○がゴロゴロと…。
これが落ちなんですけど、すいません。
○○の部分忘れました。
意志とか決意とか使命とか制約とか、なんかそんなんやったと思いますけどね。
ま、そんな噺です。

茂山一族はほぼ全員狂言師。
嘘つきの血筋やありませんよ。
そんな特殊事情の家系とは一体どんなもんなの?
どんな経緯でこの道に踏み込んだの?
後悔した事は無いの?
和泉某はどんなもんなんじゃ?
九雀さんの質問に、ゆったりした口調ではありますが一部を除いて明確な返答。
頭は良さそぉやね。
ルックスもなかなかそれなりにまずまず…どないやねん。
対談の中に突然湧いて出た茂山逸平対中川家御曹子のトレード話。
一対一では茂山さんとこが承知せんでしょぉな。
まぁ、御曹子も将来大化けするや分からんし、長い目で見てやっていただきたい。

落語ファンという事で「酒の粕」を一席。
結構上手いがな。
やっぱり交換やね。

2002年05月21日14時55分48秒投稿

S.S☆「前科の重み」☆     あや太郎

 一台の車が暴走していた。
 あとをパトカーが追う。
 他でもない、銀行強盗が逃走しているのだ。…犯人は前科十数犯−−筋がね入りの
犯罪者だった。しかしパトカーはぐんぐん追い上げてくる。
「ちぇっ、うるさいパトカーだぜ。俺は運転がイマイチだからな。あれさえ振り切れ
たらこっちのもんなんだが…」
 脂汗を流しつつ必死で走っていると、何とした事かパトカーのタイヤがパンクして
急停止−−−まんまと犯人の車は追跡を振り切った。
「やれやれ、今日はどうやらツイてるぜ」
 ところが安心したのも束の間、ラジオから銀行強盗のニュースが早々と流れだす。
車種や色からナンバーまで、情報は的確だった。
「ちぇっ…余計なところで記憶力の良い奴がいたもんだ」
 愚痴っていると、たまたま後方を走っていた乗用車がその逃走車に気づいた。
「あれぇ…?あの車、今のニュースで言ってたヤツじゃないのか?」
「そうだわ。ナンバーも同じよ」
「どうしよう?…警察に知らせようか?」
「そんなまだるっこしい事してないで、あんた捕まえなさいよ。運転には自信あるん
でしょ?」
「えっ、オレが?…う、うん…やってみる」
 彼女に尻を叩かれ、彼氏のほうも退けなくなった。
 かくして銀行強盗と一般素人の追跡劇が始まった。
「何だ、あの車は?しつこくついて来やがる。警察じゃなさそうだ。ボンヤリ顔の若
い奴だぜ。隣の女は気が強そうだな。それに急かされて追ってきてるのか。迷惑な話
だ。振り切ってやる…」
 と気は焦るのだが、なにせ運転の腕がない。逆に若い男のほうは仕事は出来ないが
軟派用の運転は確かで、ぐんぐん迫ると横に並びかけた。
「くそ〜っ、あっちへ行け!ひどい目に遭わすぞ。こう見えても前科十三犯だ。人も
殺った事があるんだぞ。お前らみたいな若造なんか目じゃねぇんだ。命が惜しかった
ら早くあっちへ行け!……あっ、窓を閉めてるから聞こえないか…。それじゃ窓を開
けてと…おっと、ハンドルを取られる!危ない危ない。チクショー、もうちょっと運
転が上手ければなぁ…」
「おい、何か顔をクシャクシャにして喚いてるよ。何言ってるんだい?」
「お願いだ、逃がしてくれって言ってるんじゃないの?弱そうよ、あの犯人」
「何だ、見逃してくれって言ってるのか。どうやら気の弱い奴みたいだな」
「そうよ。あんな情けない犯人を逃がしたら恥だわ。しっかり捕まえなさい。もし逃
がしたら私もあんたから逃げちゃうから」
「わ、わかった。任しとけ−−」
 彼女に焚きつけられて彼氏もいよいよテンションを上げるほかない。
「おおおおっ…。車を寄せて来やがった。こら、やめろ−−ぶつかるじゃねぇか!
あっ、横は土手になってる。落ちたら、どうするんだ、この野郎。ひどい目に遭わす
ぞ。おれは前科十三犯…」
 言い終わらないうちに追ってきた乗用車の車体が逃亡車と接触し始めた。
 一回二回と軽い体当たりを繰り返し、犯人の車を路肩に追い詰める。
「な、なにをしやがる。ぶち殺すぞ!…あ、やっぱり聞こえないのか。くそ〜、声さ
え聞こえたら震え上がって逃げだすのに。何てったって、こちとら前科十三犯なんだ
ぞ…」
 泣き言を言っていても始まらない。逃亡車はスピードを上げスピードを落とし、何
とか追跡車をやり過ごそうとするが、生憎と若い男は運転が達者だ。どこまで行って
もピタリとついて来るではないか。
「キャー、素敵!あなたってやっぱり運転が上手なのね。わたし見直しちゃったわ」
「ヘヘヘ。そりゃそうさ。一時はプロのレーサーになろうと思った事もあったんだか
ら」 A級ライセンスのテストに落ちた事も忘れてニヤけている。それでも運転の腕
は彼女の手前冴えに冴えた。
「し、しつこい野郎だ。おっ、また寄せてきた−−わっ、わっ、わっ−−−ドアが外
れた。この野郎、今度来たら、ぶ、ぶ、ぶっころ…」
 …してやると言いたい所で車はあえなく土手の下へと転げ落ちた。
 何十メートルか転がったが、緩い傾斜だったので何とか体は無事だった。
「まだ運が残ってた。これなら逃げられそうだ。よし−−」
 現金入りのトランクを抱えて逃げだそうとすると、驚いた事に追跡車の若い男が土
手を駆け降り、追ってきた。後ろからは無論彼女の声援が…。
「チクショー、どこまでしつこい奴なんだ。しかし車を下りたらもうこっちのもん
だ。前科十三犯、伊達に修羅場をくぐって来たんじゃねえや。えーっと、ピストル
は…?ナイフは…?」
 どちらもひしゃげた車体の隅っこに巻き込まれて取り出せない。
 ぐずぐずしている間に若い男が追いついて、トランクを持って逃げる犯人に踊りか
かった。
「く、くそ〜、邪魔をするな。こっぴどい目に遭わせるぞ。こう見えても俺は前
科…」
「ジェンカがどうした?この強盗野郎め!」
 思い切り振り下ろしたパンチが、両手の塞がった犯人の顔面にまともにヒットし
た。
「ゲッ…」
 あえなく銀行強盗は昏倒した。
 手錠を掛けられ引き起こされて、ようやく目を覚ました犯人の前方で、あの追跡
カップルが誇らしげに警察関係者の賛辞とマスコミの取材を受けていた。
「勇気ある追跡劇でしたねぇ。怖くなかったですか?」
「いやぁ、無我夢中で、気がついたら犯人を張り倒してました。他愛ない奴でした
よ、ハハハハハ」
「やっぱり、あなたって素敵だわ。カッコイイ!」
 連行されて行く犯人もさすがにキッと睨みつけた。
「誰が他愛ない奴だ。おれはレッキとした前科…!」
 そこで手を引かれてまた転んだ。
 それを見たあのカップルと野次馬が爆笑する。
 その笑い声を聞きながら犯人は、もう誰にも聞こえないようにそっと呟いた。
「情けない…。一体何の為にここまで前科を重ねて来たんだ?」
                  (完)

2002年05月20日23時09分17秒投稿

下駄屋の喜六

このところ、某大正区民氏がよく阪神ファンに悪態をついております。「阪神ファン
はアホばっかりや」という声も耳にしたことがあります。別にオチがあるわけでもな
く、阪神ファンならずとも愉快な光景ではありませんが、不思議でならない。純粋に
近鉄とパリ−グを愛するのであればセリ−グの事は無視して然るべき、ほっといたら
ええやないの。

思うに、この悪罵はねじ曲がったひがみとやっかみ根性が原因するのではないでしょ
うか。強くても優勝してもさほど観客が入らない大阪ド−ム、一方弱くても最下位で
も客が入る甲子園、今年のように好調ならば動員数は以前にも増して増加の一途。テ
レビ中継は巨人や阪神以外の試合はあまり放映されず、ラジオにしてもOBCが頑張る
ぐらいで、メイン民間放送局であるABCやMBSも阪神優先。新聞のスポ−ツ欄の扱いも
近鉄よりも阪神のほうがスペ−スが広く掲載されていて、近鉄よりも阪神が優勝した
ほうが経済波及効果ははるかに大きい。これらは客観的な事実でありますが、そうい
うことを総合的に考えればやっかむ気持ちも分からないでもありません。

しかし冷静に考えて、やはりあのプチフ−リガンぶりは見当外れの八つ当たりであり
まして、上記の諸問題はパリ−グ人気の底上げで全て解決できるものであります。そ
のための建設的な提案を二つほど。まず、パリ−グはDH制や予告先発を廃止するべき
である。もう一つ、公式戦にセリ−グとの交流試合を採用すべきである。二つ目はナ
ベツネが猛反対しておりますが、ナベツネの反対することをどんどん実現させる、こ
れが世のため人のため、ひいては野球界のためと存じますが、某大正区民氏の反論や
いかに?

2002年05月20日08時01分50秒投稿

S.S☆「あと一人…」−2☆     あや太郎

 長らく繁栄した地球人類もついに種としての生命力を失い、今しも絶滅しようとし
ていた。その最後の生き残りもすでに百才を大きく越え、老衰のため死の床に伏して
いた。
 そこへ銀河各宙域から数々の高等知性体が見舞いに駆けつけた。
「頑張れ。君は最後の地球人なんだ。きみが居なくなれば地球人はもうこの銀河から
姿を消してしまうんだぞ。そんな事になったら長らく付き合ってきた他の星の種族た
ちも淋しくてしょうがない。何とか頑張って持ちこたえてくれ」
「ありがとう…。しかしもう長くはない。名残惜しいがこれまでだ」
「気の弱い事を言うな。みんな君の回復と地球文明の存続を願っているぞ」
 しっかりと手を握ると異星人たちは、客間へと引き揚げて行った。
「それにしても淋しい光景だねぇ。折角の豪邸もガランとしちまって、もうすぐ主も
居なくなるのか」
「そうだなぁ。頑張って生き続けろとは言ったものの、こんな所で一人だけ生き残っ
て、淋しく生きつづけるほうが辛いかも知れないなぁ」
「そう考えると、なまじ延命を祈るのも酷だな。いっそあの世へ行って先祖や仲間の
地球人達と一緒に暮らせるほうが幸せかも知れない」
「どうせそうなるのなら、むしろ湿っぽくしてるより、明るく景気良くあの世へ送り
出してやるほうが親切ってもんだな」
「よし、そうしようじゃないか。もう余命いくばくもない人間にお為ごかしの念仏を
唱えたってしょうがない。みんなで景気良く送りだしてやるとしよう」
 気の好い異星人たちは、また老人の寝室に赴くと、ベッドサイドで威勢良く手拍子
を打ちながら、精一杯明るく囃し立てた。
「♪あと、ひとり〜…あっと、ひっとり〜…」
                  (完)

2002年05月19日23時18分52秒投稿

おはようございます。元姫路市民です。
今8時50分、私は甲子園球場で並んでいます。というのも昨日当日券とれませんでした。三ノ宮に着いた時点で駅に「甲子園球場の券は売り切れました」と張り紙が貼ってありました。一応甲子園に行きましたが代わりに並んでくれた友達も券取れず。ダイエーでカッパを買うだけに終わりました。
リベンジで朝5時30分に起き、8時に甲子園に着きました。雨です。一端やみましたが友達に「雨やんだ」とメール送るとまた振りました。試合どうなることやら。

2002年05月19日09時05分26秒投稿

S.S☆「あと一人」☆     あや太郎

 銀河系各宙域から様々の種族、様々な科学者が集まり、額を寄せ合っていた。
「ついにこの時が来てしまったか…。まことに残念で言葉がない」
 今やこの星の種族は滅亡の瞬間を迎えようとしていたのだ。
 文明の爛熟期を迎えた頃から急激な少子化が始まり、ようやく宇宙各地の先進種族
と邂逅を果たした時には、すでに人口を盛り返すだけの生命力は無くなっていたとい
う。
「クローンや人工合成による子孫の増殖を否定した誇り高き種族よ。例え君達が滅び
去ってもわれわれは永久に君達を忘れはしない」
「あ…有り難う…」
 各種族の代表が、今や老衰の極にある最後の生き残りに語りかけると、もう何百才
にもなろうという老人も虫の息ながら辛うじて返礼を送る。
「それにしても、極めて珍しい例だな。潔いというか諦めが良すぎると言うか、大抵
は科学技術を駆使して種族の存続を図るもんだが、彼らの場合はこういう道を選んで
しまった。少々私も驚いたよ」
「全くだ。しかしお蔭でわれわれも珍しい機会を得た。世にも珍しい、高等知性の滅
亡を観察する機会だよ。もう何万年もこんな酔狂な…いや、こんな静かな最期を迎え
る種族は居なかったからな。それを観察できる我々は幸せ者と思うべきだろうな」
「全くだ。これは千載一遇の幸運だよ」
 学者たちがカゲでそんな事を囁いていると、とある星の老科学者が幾分疲れた様子
で話に加わってきた。
「油断しちゃイカンよ。私もそう思ってわざわざこの星までやって来たんだが、それ
についちゃ、些か頭を悩ませてるんだ」
「そりゃ何故です、先生?」
「もうあの老人が死にそうだ死にそうだと言いだしてから、実は百年以上経つんじゃ
よ」「えっ、百年!そんなにしぶといんですか?」
「ここの種族は元々長生きでね。その上に長寿のための医学が発達していたため、全
宇宙でも希有な長寿族になってしまった。だから余り人が死なない−−−その結果、
人口を増やせなくなって少子化に拍車が掛かり、とうとう絶滅の時を迎えたという訳
だ。不思議な進化の過程を経たもんだよ。というより、進化の皮肉と言うべきか…」
「じゃあ、今亡くなりかけてる老人はもう何才ぐらいなんです?」
「そうさなぁ…ざっと百万歳ぐらいかな」
「百万歳!そ、そんなに長生きしたんですか?」
「しかもそれは平均寿命とほぼ同じなんじゃ。だから我々も慌てて最期を看取りに駆
けつけたんだが、見通しが甘かった。平均寿命には当然ながら誤差があるからな」
「と言う事は、百年ぐらいのズレがあってもおかしくないという事ですね?」
「百年どころか、一万年や二万年−−いや、十万年ぐらいは充分あり得る」
「ヒエ〜…。我々普通の種族は寿命がせいぜい何百年の単位ですよ。それじゃとて
も…」「どうやら最期まで付き合えそうにないな。君達も早いめに見切りをつけて
帰ったほうが賢明かもしれんよ」
「よく教えてくれました。それじゃ我々は早々に引き揚げます。さようなら」
 ところが間もなく、その最期の生き残りが息を引き取った。観察しそこねた学者た
ちの怒るまいことか。
「先生−−おっしゃる通りに諦めて引き揚げたら早速臨終の知らせとは…なんたる皮
肉でしょう。お蔭で立ち会うチャンスを逃してしまいましたよ」
「ハハハ。お蔭でわしは数少ない立会人になれた。あっさり引き揚げてくれた人達の
お蔭じゃよ」
「何だか一杯食わされたような気分だなぁ。あれは本当だったんですか?−−寿命が
百万年もあるとか、危篤状態が何万年も続くとか…?」
「本当さ。今回はたぶんあの日がちょうど百万年目だったんじゃろう」
                  (完)

2002年05月18日13時12分48秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

5月14日 太融寺「千朝落語を聴く会」

出し物

●「手水まわし」 笑福亭 喬若
●「向う付け」  桂 千朝
●「猿後家」   桂 米輔
●「花筏」    桂 千朝

「向う付け」の阿倍野斎場帳場。
文字とは縁の無い二人が苦肉の作で
「故人の遺言でめいめい付け、向う付け。」
最初に来た浪花屋徳蔵さんが知り合いの商人二三人の分を記帳した処で
「これでは私が帳場になってしまうがな。あんたら勝手にやりなはれ。」
そんなこんなで無事終わり掛けた処へ又兵衛が駆け付ける、というのが従来の形。
千朝さんは浪花屋さんの次に元学校の校長という人物を登場させますな。
この人の綺麗な文字を見て出入りの職人が
「恥ずかしゅうて横に書けまへんがな。わたいのんもお願いできまへんか?」
よしよしと言うて書いてやりますと、後に続く職人連中が皆頼み出します。
快く引き受けてる内に自ら帳場に座ってしまう、という趣向。
無筆な人間が珍しゅうない時代の噺です。
まして職人さんあたりには自分で書けと言われても無理な人も多かったでしょぉ。
そんな人達の分はどぉ処理したのか。
千朝さんはそれを一気に解消。
その後はお馴染みの展開と落ちとなります。
別に今まで通りの筋立てでも然して不都合は感じんのですけどね。
ま、発展的変化というとこですな。

淀み無い流れの「花筏」。
言葉の端々まで神経が行き届いてきっちりしたお仕事。
千朝さんはほんまに上手いですな。
何を今さら、ですけどね。
3月の大阪場所でゲストの米朝師匠に付いて行かはった千朝さん。
北の湖理事長の脚の太さと佐渡が嶽親方の顔の大きさに感心しはったそぉです。
やっぱり舞の海でも大きいんでしょぉなぁ。

米輔さんがみっちり語らはった「猿後家」。
しんどかった、笑うとこ探すのに。

落語界の松坂大輔、喬若さんは初見参。
そない言うたら似てますな。
因に年収は7桁違うそぉです。
「手水まわし」で、女子衆は田舎言葉やのに旦さんと板場の喜助が大阪弁。
近郊である事は確かですな。

この日は何時に似ず超満員。
途中で喬若さんが前に詰めるよぉ要請する程でした。
ひょっとしたら小さん師匠死去の前兆であったのかも…。
う〜ん、取り敢えずアンビリーバボー。

2002年05月17日16時23分43秒投稿

S.S☆「モモクリ三年」☆     あや太郎

 二つの国は仲が悪かった。侵略や戦争の歴史が長く続き、その結果生まれた民族対
立や文化摩擦も根強く残っている。
 世界的に平和が続いている昨今、時期や良しと互いの政治家や皇族が親善訪問の計
画を立てたりもするのだが、すぐに慎重論やら気まずいムードが台頭し、いつの間に
か立ち消えになってしまうのだった。
 民間交流や文化使節の交換も当たらず触らずの物ばかりで、到底両国の国民感情が
改善されるところまでは進展しそうにない。そんなある日、一方の国に住む一姉妹が
思わぬ事を思いついた。
「私ら二人で、あの国を旅してみよまいか」
 二人は有名な双子姉妹だった。名前を「モモ」に「クリ」と言った。揃って百才を
越え、元気で愛嬌のある人柄は長寿の象徴として、国内外でも愛されていた。
「今年で私らも百五才。もういつまで生きられるか分からんし、またいつ死んでも悔
いは無い。それなら残る命を使うて、私らに会ってみたいという人達に会いに行こう
じゃないかいな」
 周囲が留めるのも構わず、双子姉妹は大胆にも、僅かな添乗員だけ連れて、隣の国
に旅立った。
 国同士は仲が悪かったが、どこに行っても人々は年寄りに親切だった。
 世にも目出度い長寿の姉妹に会いたいと次から次へ人が駆けつけ、どこへ行っても
二人は引っ張りだこだった。手厚い持てなしのあとは、また隣の町からお呼びがかか
る。翌日はまた隣町、その次の日もまた隣の村と姉妹は休む間もなく隣国を旅し続け
た。
 当初、年寄りの気まぐれぐらいに考えていたマスコミも、旅し続ける百才姉妹に関
心を持ちはじめた。行く先々で取材合戦が巻き起こる。特番も組まれる。老姉妹は疲
れて居眠りしながらも相変わらず元気良くインタビューに応じて、みなを笑わせた。
 三年の月日が経った。モモ婆さんとクリ婆さんはついに隣国の端から端まで踏破し
たのだった。もうひと巡りしたいという希望もあったが、さすがに医師団と家族が留
めた。
 かくして双子姉妹は三年ぶりに帰国する事となった。
 帰国の前日、二人はついに大統領の官邸へ招かれる事になった。両国の国民がテレ
ビの前で長寿姉妹の姿を見守った。明日誕生日を迎える二人に大統領からプレゼント
が贈られた。
 記念品でもなく政治的意図もない、二人の好物のお菓子だった。
 ふたりもそれが嬉しかった。
 翌日、モモ婆さんとクリ婆さんは機上の人となった。
 三年ぶりの帰国だった。ひょっとするともう帰れないかとも覚悟した故国だった。
 すべての仕事を終えた気分でホッとした二人は、飛行機が母国に到着する寸前、息
を引き取った。
 故郷では知らせを聞いた家族と国民が悲しみの対面をした。
 ついさっきまで滞在していた隣国でも、姉妹の大往生を悼み、多くの国民が名残を
惜しんだ。
 翌年からモモクリ姉妹の誕生日は、記念日になった。
 二人の命日でもあるこの日を、両国が一致して「長寿の日」とし、長く語り継ぐ事
に決めたのだ。
 ようやく両国の間に、しんみりと語り合える日が来ようとしていた。
 今、二つの国は初めて同じ悲しみを共有する事が出来たのだから 。
                  (完)

2002年05月16日22時01分22秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

5月13日 TORII HALL「雀三郎みなみ亭」

出し物

●「八五郎坊主」   桂 雀五郎
●「らくだ」     桂 雀三郎
●「四人癖」     桂 つく枝
●「神だのみ初恋篇」 桂 雀三郎

「らくだ」で、酔いの廻ってきた屑屋の独り語りの件。
先妻の娘が雨の中を遠い方の酒屋まで晩酌の酒を買いに行きます。
「雨の中をぴしゃぴしゃ帰って来る足音聞くたんびに何たる親やと思うけど…
 これだけは止められん。」
最も屑屋に言わしたい台詞でしょぉ。
ここは、このやたけたで荒っぽい噺の中に米朝師匠が挟んだウェットな場面。
雀さんのはやや軽めのウェットティシューですな。
剃り残しの毛を毟り取るとか酒と一緒に含んだ髪の毛を口から引っ張り出すとかに加
えて、米朝師匠のには無い部分…六代目はこれを実にあっけらかんと言うたはった…
漬けもん桶からはみ出した足を
「遠慮せいでもボキッと折ったらええねん。」
まで盛り込んで大判振舞い。
米朝師匠はこの噺を落ちまでやらはりません。
桶を担ぎ出す処で
「伊勢音頭を唄う奴があるかい。おなじみらくだでございます。」
雀さんは
「そぉ〜れんじゃぁそぉれんじゃぁ らくだぁの〜そぉ〜れんじゃぁ。」
ときたんで、仕舞いまでやらはるのかと思いました。
ここで戸口に桶をぶつけて底が抜けます。
で、伊勢音頭になってデンデ〜ン。
ほんま、大盛りで満腹。

「神だのみ初恋篇」は、ひょっとしたら残っていける噺かも知れませんな。
そぉ急に古びてしまうテーマでも無いし、きっちり語ったらかなり笑いは取れます。
が、言うてもシリーズの内のひとつ。
どぉせ受け継ぐのやったら全部セットでお願いしたい。
これだけってぇのはご勘弁くだせぇ旦那。
でねぇと然程出来の良くねぇあれとこれが…ぐすん…不憫でならねぇんだ、おいら。
嘘です。
ええもんだけ残っていったらええし、またそぉあるべきですな。
また、ひとつ残ったら後がその恩恵を被る事も有るでしょぉ。
これを芋蔓式…とは言わんか…。

丸い体型、両頬のエクボが可愛いつく枝さん。
以前保育園でのお仕事があって
「ははぁ保母さん保父さんの前で落語するんやな。」
と思ぉたんやそぉです。
ところが、依頼の条件がオーバーオールを着て来てくれというもの。
なんやけったいやなと訝り乍らも現地に向かいました。
着くなり園児全員揃ぉてどらえもんコールでお出迎え。
同行のメガネを掛けたマネージャーがのび太の位置付けなってます。
で、仕事内容がなんと園児の前で落語をして欲しいというもんでした。
せめて小学生ならともかく、保育園児に落語は無理やろぉ。
しょぉがないんで色んなもんを食べてみせる事にしたんですな。
「おいしそぉ。」とか「お腹減った。」とか反応は上々。
「僕もぉ。」てな訳の分からんのもあったそぉです。
焼き芋を食べてサービスにブッと言うた途端、うんこコールの大合唱。
帰り際にまたまた園児総出で
「また来てねぇ、どらえもぉん。」
遂に仕舞いまでどらえもん扱い。
「どんな仕事か、よぉ確かめてから受けなあきませんな。」
は実感やね。
明瞭快活軽快な語り口。
結構期待出来る人かも…。

雀五郎さんの「八五郎坊主」。
寺の庫裏の戸を開ける時に横移動。
これは雀さんもやらはりますな。
「一門の伝承芸になってます。」
の台詞もきっちり入ってました。
この噺が身に合ぉてるのかテンポ良く溌溂と語ったはりましたな。
そぉなれば持ち前のとぼけた味もより一層活きます。
いよいよ本領発揮の時が到来したか?
今後の成長を楽しみにしましょ。

不必要にハイテンション、無駄にでかい笑い声の客がひとり。
演者さんの言葉を繰り返すのがひとり。
あぁ〜ぁかなわんかなわん。

2002年05月16日15時35分23秒投稿

【end of file】