過去のドンドコ掲示板
2002年04月16日〜30日

こんちゃ〜14番森田です.

大阪ウメダの駅前ビルの中の楽器屋で、30代サラリーマン風の男が
楽器店の人に話しとったと思て下さい.

「僕ね、来週、グァム行きますねん」
「ほー、よろしいねえ」
「それが全然ええことあらへん.親父が倒れて大変なんですわ.
 もっと違うとこ行くつもりやったのに、そんなんで、3日ほどで帰ってこれるとこ
 ちゅうのでグァムにしましてん」 やて.

親 倒れたんやったら家にいといたれー.グァム行くな、っちゅうねん.

2002年04月29日19時56分43秒投稿

S.S☆「隣の喧嘩」☆     あや太郎

 ついに取り立て屋がやって来た。
 借りている男のほうも無計画に借りて、なかなか稼ぎが追いつかず、何となくだら
しなく返せずにいたから到底同情される債務者ではないのだが、貸している金融業者
のほうもそれに輪を掛けて評判の悪い高利貸しだった。そのまた取り立て係だから、
その強面ぶりと言ったら並大抵ではない。どやしつけられ脅かされて首を吊った債務
者も何人か出ていたが、それを逆手に取って、ますます荒っぽく取り立てる筋金入り
だった。
「おい。いつまで返さないつもりなんだ。借りた金を返さんのは泥棒だぞ!」
 借り手のほうは、陰気な顔で部屋の隅で小さくなって何やら手作業をしていた。
「何だ……人の話もロクに聞かないで失敬な奴だな。何をしてるんだ?」
「パ、パソコンを少々」
「ケッ、パソコンなんかして何になるんだ。ちゃんと働け」
「へへへ。これでもレッキとした内職なんです」
「何…内職です?湿気た仕事してやがるなぁ。そんな事で返済できるのか?」
「いえ、あんまり儲かりません。趣味も兼ねてるもんで…」
「何ぃ、趣味だとぉ?一人前の口を利きやがって…。趣味なんて言葉は借金を返して
から口にしろ」
 借り手のほうはまだキーボードをピコピコやっている。
「この野郎−−俺はそういう機械が嫌いなんだ。そんな辛気臭い事やめちまえ」
 言った時、安アパートの隣室から、野太い男の声が聞こえた。
「おうおう−−俺の女に手を出しやがって、この落とし前はどう付けてくれるんだ
よぉ!」
 似たような業種の男がやはり隣室に乗り込んで来ているらしい。
「チェッ、うるさい部屋だなぁ。それでお前さん、本職のほうは順調に行ってるんだ
ろうな?」
「いや、あんまり良くないんですよ。なにせ不景気なもんで」
「それならそんな仕事、やめちまえ。もっと手っとり早く金の入る方法があるだろ
う」
「えっ、そんな仕事があったら教えて下さいよ」
 すると取り立て屋は待ってましたというように、怖い笑顔で答えた。
「目玉を売るんだよ。腎臓を売るんだよ。臓器売買でも何でもやって金を作れ」
「目玉に内臓?…で、でもそんな事したら痛そうだなぁ…」
「なにぃ、痛そうだとぉ?−−知った事か!こっちは金さえ戻れば良いんだ。お前が
痛かろうが、壮絶死しようが痛くも痒くもねぇや」
「そ、そんな乱暴な…。エヘヘヘ」
 ごまかし笑いしながら、またパソコンをピコピコやっている。
「しぶとい野郎だなぁ。いつまでその辛気臭い機械を放さない気だ。死んでもパソコ
ンは放しません、か?そんな根性があるんなら、目玉でもモツでも売り飛ばせ!」
 そう凄んだところで、また隣の部屋から怒鳴り声が響いて来た。
「いいかげんにしろ〜!ぶち殺してやろうか、このガキ!この匕首は伊達じゃねぇぞ
!」 聞いた取り立て屋のほうもさすがにギョッとした顔になった。
「あんなに怒鳴らなくても良いのによぉ。ご近所に迷惑だぜ」
 それが分かってるなら…という顔で借り手のほうも様子を伺う。
「じゃあ、また日を改めるという事で、どうでしょう?」
 しかし取り立て屋はそんなに甘くない。
「ふざけるな。静かに紳士的に取り立てりゃ良いんだ。さぁ、どうやって金を作るか
具体的な話を聞かせてもらおうじゃないか」
「と言っても、こんな儲からない仕事しかしてないから…」
 度胸が無いのか有るのか、借り手はまだパソコンをピコピコ叩いている。
「だから、手っとり早く金を作れって言ってるだろう!彼女は居ないのか?風俗の店
なら紹介してやるぜ」
「そ、そんなもん居ませんよ。そんな甲斐性もないし…」
「ケッ…。湿気た野郎だ。それなら仕方ない−−お前が身売りしろ」
「えっ、僕が?どこに売るんです?」
「いろんな組同士で抗争してるだろう。鉄砲玉が欲しくてしょうがないんだとさ。命
を張って、やる気なら、まとまったギャラぐらい入るさ」
「イ、イヤですよ、そんな物騒な事…」
「それじゃ、目玉や内臓をくり抜かれたほうがまだマシって事か?おい、どうなんだ
?ハッキリしろい!」
 また怒鳴ったのと呼応するように、隣の部屋でも大きな声が響いた。
「この野郎〜…目玉をくり抜いてやろうか!内臓を掴みだしてやろうか!原型が残ら
ないほどズタズタにしてやろうか…」
 ビシッ…バシッ…ボコッ…ガツン〜…
「ほら、首がちぎれかけてるぞ。頭が吹っ飛ぶぞ。いっそバラバラにしてやろうか、
このガキ……」
 またこっちの取り立て屋が無口になった。
「ど、怒鳴るのは勝手だが、あんなに騒がしいと、め、迷惑だなぁ…」
 警察に来られても困るし、その前にこっちのやり取りが聞こえたら難癖を付けられ
かねない。
「きょ、きょうはこれぐらいにしてやるよ。あんなにうるさくちゃ気が散って取り立
てもできやしない。じゃあ来月までには金を作っとけよ。あばよ…」
 取り立て屋が引き揚げたあと、天井の通気口に仕込まれたスピーカーが、借り手の
パソコンに合わせてホッとタメ息をついた。
                  (完)

2002年04月28日21時31分44秒投稿

          『雪女の告白』   ヘーパイ

 実はわたし・・雪女なんです。
 父や母は何も教えてくれませんでした。でも物心がついて成長するうち
に判ってしまったんですああ、私は雪女なのだな≠チて。
 もちろん友人達は誰もこの事実を知りません。別に知られたって構いやしな
い、と思わない訳でもないんだけど、だからって殊更に吹聴する必要もないんじ
ゃないかなって思ったりもしてるんです。
 ただ、これまで何度か友人達に正体がバレそうになった事もありました。正体
がバレてもいい、なんて思いながらもやっぱりそういう時にはその友人達との付
き合い方を変えてしまいますネエ。彼女達とチョットだけ距離を置くんです。
 いえ、特別に彼女らを避けたりする必要はないんです。四六時中べったりと
一緒だと云う様な付き合い方さえしなければ良いんです。

 チョッピリ暗い青春時代だったんじゃないの、なんてお思いの方もおいでか
しら。お生憎様、ちっともそんな事ないんですよ。それが証拠に私のこと、好き
だって言ってくれる彼氏も出来たし。
 彼ったら私の正体が雪女だとも知らずに結婚してくれ≠ネんて言うんで
す。恋って云うんでしょうか、恐ろしいものですよね、恋のチカラって。彼は完全
に舞い上がっている様子でした。そして私もそんな彼に心臓をわしづかみにさ
れてしまって、自分が雪女であるにも関わらず、すっかり熱く、熱くなってしまっ
たんです。答えを出すのに時間は掛かりませんでした。桜満開の春の日に私達
は友人達に祝福されながらお式を挙げました、まるで普通のカップルのように。

 春、夏、秋の季節は二人にとって夢見る様な楽しい新婚生活でした。でも当
然ながらその後には私が内心怖れている冬、と云う季節が待っていたのです。

「キミ、スキーはしたことあるの?」ああ、なんて事を・・
 冬を迎えるなり彼は私に問い掛けるのでした。
「雪山には行った事はあるんだけど・・まだ滑った事はないの」
 心の動揺を隠しつつ答えた私の言葉を耳にした途端、彼は凄まじい饒舌家
へと変身したのです。
 雪のゲレンデがどれほど素晴らしいものか。粉雪の敷き詰められたゲレンデ
を一息に滑り降りる時の堪らない爽快感。滑り降りたあとに自分の描いたシュプ
ールを振り仰いで見た時の感動。そのシュプールの鮮やかさは他の芸術とは比
べ様もないほど素晴らしい、と彼は力説するのです。
 不覚でした。短期間の付き合いで、突き上げる衝動に負けて結婚してしまっ
たせいです。私は彼がこれほどまでにスキーフリ−クであるとは考えもしなかっ
たのです。油紙に火がついたように喋り続ける彼。そんな彼を見て私はチカラ
無くうなだれて諦めました。きっと私は彼の勢いに押し切られて、次の休日には
長野あたりのスキー場に連れて行かれるに違いありません、彼の運転する車に
乗って。でも結果は見えているのです。私達はスキーなど出来やしません。
いや、目的地のスキー場にさえ辿り着けないかも知れないのです。

 例えば私の友人の中にこんな人達がいます。旅行やキャンプに参加すれば
何故かその日は雨に祟られて、楽しいはずの予定を台無しにしてしまう人達。
そんな彼らの事をみんなは雨女、雨男≠ネどと呼びます。
 私の場合はと云うと、参加したスキーツアーはことごとく記録的な大雪に見舞
われて途中の高速道路は通行止め。やっと辿り着いたゲレンデは吹雪で閉鎖
状態。私達一行は虚しくロッジでトランプゲームをして引き上げる、なんて悲惨
な状況になるのです。今度の彼とのスキーでも同じ運命が待ち受けているに違
いありません。ええ、きっとそうなります、これは動かし難い事実なのです。
 だって私は雪女≠ネのですもの・・・・。
                      ―しまい― 

2002年04月28日17時34分00秒投稿

S.S☆「スター」☆     あや太郎

 スターがいた。ハリウッドのヒット作につぎつぎ主演し、莫大なギャラを手に入
れ、富豪の令嬢とめでたく結婚した。しかし栄光はいつまでも続かない。間もなくス
ターの主演作品は不発が続き、めっきり仕事も減りだした。映画界の栄枯盛衰は激し
かった。
「あなた−−最近まるで元気が無いですわね。どうなさったの?」
「充実した仕事が出来なくなってね。稼ぎも良くないからキミにも苦労を掛ける」
「生活の心配なんかなさらないで。結婚の時に持ってきた貯金がまだまだ残ってます
し、あなたが五年六年遊んでくれても大丈夫よ。それでも足らなければ実家から幾ら
でも援助させるわ」
「有り難う。実に不甲斐ない亭主で申し訳ない。何とか新しい仕事を探して頑張る
よ」
「またそんな水くさい事を……。そんなお金の事より、落ち込んだ姿を見てるほうが
辛いわ。あの光り輝いていたアナタはどこへ行ったの?私は情熱的で前向きでキラキ
ラ輝いているアナタが好きなのよ。そんな弱気な顔をするアナタはイヤ」
 売れていようと落ち目になろうと、しっかり家庭を支えてくれる良い妻だったが、
そんな健気な姿を見るのがスターには却って辛かった。
 いつしか家にも戻らなくなり、やがてスターは失踪した。
 場末の酒場に、尾羽打ち枯らしたスターがいた。もうほとんど誰にも気づかれぬほ
ど落ちぶれたスターに、一人のホステスが声を掛けた。
「あなた−−あのスターじゃないの?どうしてこんな所にいるのかしら」
「仕事がないからさ」
「あら……。でもこないだあそこの映画館であなたの映画を見たわよ。あの場末の小
屋だけど」
「ずいぶん古い映画を観てるんだな。あれは俺の過去の栄光さ」
「じゃあ今は違うの?」
「知らなかったのかい。俺はすっかり落ちぶれちまったんだぜ」
「あら、そうだったの。映画の世界も私たちと同じ水商売なのね」
 それでも気の好いホステスとスターは仲良くなった。何度か飲んだり愚痴ったりし
ている内にもっと親密になった二人はいつの間にか同棲を始めていた。
「こんな安アパートに、あのスターが住んでるなんて誰も思わないでしょうねぇ」
「いや、ここに住んでるほうが落ちつくよ。もう俺に豪邸は似合わないし、良家の妻
もふさわしくない」
「そう言えば、大富豪のお嬢様だったわね、あなたの奥さん。しかも良く尽くしてく
れたそうじゃない。それなのにどうして奥さんの所へ戻らないの?」
「荷が重くなったのかなぁ。どうやら俺は気の小さい男らしい」
「そんな事はないわ。きっとあなたは優しすぎるのよ。過去の栄光にしがみついて見
栄を張ってる人より、綺麗に身を退く人のほうが私は好きよ」
「そう思ってくれるかい。そんな女に出会えたって事は、俺にもまだ運が残ってるっ
て証拠だな」
 二人の気だるいが呑気な暮らしが一年ほども続いた頃、偶然出会った昔の映画仲間
から仕事の話が来た。
「中途半端な仕事なら、もうしないぜ。今更二枚目俳優でもないんだから」
「そうじゃないよ。すさんだ顔して、腹にも贅肉の付いた、お前さんにピッタリの
〔よごれ役〕だ」
「ふん。俺もついにヨゴレになっちまったか。しかしそれも面白いや。いっぺん冷や
かしにやってみるか…」
 遊び半分で演じた悪役が意外な好評を呼び、スターはいきなり助演男優賞を獲得し
てしまった。主役を張っていた頃にさえ貰えなかった評価である。
 その後もぞくぞくとスターの所へ、悪役、性格俳優、渋い老け役などの仕事が回っ
てきた。いつヤメても良いという気で肩の力を抜いていたせいか、そのどれもが名演
と評され、また様々な賞が与えられた。名だたる俳優たちを凌ぐ存在感で、スターは
再び映画界の頂点に上り詰めてしまった。
「不思議なもんだ。もう要らないと思った頃になって、仕事も金も思いのままとは
な。しかし今は素直に喜ぼう。落ちぶれていた俺を食わせてくれたお前に楽をさせて
やる金ができたんだからな」
 しかし、スターがあのホステスを振り返った時、彼女はもうスターの許から立ち去
ろうとしていた。
「私は、落ちぶれ果てて欲も得も無くなったアナタが好きだったのよ。今のアナタは
充実してキラキラ輝いてるじゃないの。そんなアナタにはもうついて行けないわ。そ
れにアナタにとっても私はもう似合わない女よ」
 呆然と見送るスターの前から、ホステスは風のように立ち去った。
 止むなくスターは元の夫人の所へ戻った。そして妻も寛大にスターを迎え入れた。
「別れてからどんな暮らしをしていたか、凡その事は分かっています。でもそんな事
は気にしていないわ。こうしてまたキラキラと輝くアナタが帰ってきてくれたんです
もの。こんなに幸せな事はどこを探しても見つからないわ」
「有り難う、キミ。そんな優しく寛大なキミにまた厚かましい願い事があるんだ」
「それは何?」
「どうか改めて、正式に僕と離婚してくれないか」
「えっ…。それはどうしてなの?」
「君は僕が光り輝く姿を好きなのかも知れないが、僕は落ちぶれた姿に惚れてくれた
あの女を忘れられないんだ。だからもう一度わがままを聞いてくれ。僕に仕事とキミ
を捨てさせてくれ。もう一度…もう一度…お願いだから……」
                  (完)

2002年04月27日22時59分30秒投稿

S.S☆「変わらぬ思い」☆     あや太郎

 結婚が暗礁に乗り上げているカップルがいた。
「お嬢様−−ご両親も許して下さらないし、このままじゃ私たち二人は一緒になれそ
うにありません」
「そうねぇ。やっぱり実らない恋だったのかしら」
「この世で結ばれないのなら−−−あの世で一緒になりましょう」
「ええ。生まれ変わったら一緒になりましょうね」
「それじゃ、行きますよ」
「あら、何をするの?二人の手をくくり付けたりして…」
「この川に飛び込むんですよ。そしてあの世で一緒に…」
「まぁ、そういうつもりだったの?わたしは又生まれ変わってからかと思ってたの
に」
「そんな時間のかかる遠い先の話じゃ我慢できません。それじゃ、一、二の…」
「あっ、待って−−まだ心構えが−−キャッ…」
 あえなく二人は深い川の淵に沈んで行った。
「お嬢様−−お嬢様−−!」
「あら、ここはもうあの世なの?」
「そうです。期待通り二人そろって、あの世へ来られたようですよ。喜んで下さい、
お嬢さま」
「と言われてもねぇ。まだこっちの世界の要領も分からない事だし−−しばらく冷却
期間を置いてから行く末を決めましょう」
「そう言えば、心の準備も出来ない内に無理心中させてしまったような気もします。
少し落ちついてから、二人の将来をじっくり考えましょうか……」
 しばらくして、どちらも「あの世」の生活に慣れた頃、ぼちぼち正式結婚の話を進
めようと男が娘の所へ行ってみると、一通の書き置きが−−
「ちょうど生まれ変われる〔空席〕があったので、一度生まれ変わってみます。今度
は平凡な家庭の娘なので、親の反対もなさそうよ」−−それだけ書いてある。
「勝手に生まれ変わっちまうなんてお嬢さんも気まぐれだ。しかし生まれ変わって、
改めて結ばれるほうがケジメが付けやすいかも。じゃあ俺も空席を探すか−−」
 何年か待たされたが、男にも適当な空席が見つかり、見事生まれ変わって「この世
に」戻った。しかし成長してお嬢さんを捜し当てた時、悲しいかな娘はすでに早逝し
ていた。「なんて不運だ。いや、やはり二人は〔この世〕で添えない身の上なんだろ
う。こうなれば何の迷いもない…」
 男はまたあっさりと川に身を投げ、娘のあとを追った。
 あの世では首尾よく、すぐに娘を見つけた。しかし−−
「あら、もうこっちへ来てくれたの?もっとゆっくりしてくれてても良かったのに」
「何を言うんです。一刻も早くあなたを迎えに行こうと思い切りよく引っ越して来た
んですよ」
「誠意は嬉しいけど−−。何だか、この世とあの世を行ったり来たりでせわしなくっ
てねぇ。もう少し生活が落ちついてから改めて二人の今後を考えましょうよ」
「何だかジレったい気もしますが、まぁここまで手間ヒマ掛けたんだから今更焦って
も仕方ありません。また落ちついたら来ます」
 そうこうしている内に、娘はまたひょいと〔生まれ変わり臨時便〕に乗って違う世
界へと行ってしまった。
「何て気まぐれな人なんだ。でもぐずぐずしてられない。急いで生まれ変わらない
と…」 男も何とか切符を手配し、またこの世へと舞い戻った。そしてまた大人に成
長した二人は運命の出会いを果たすが、今度は男の家が名士で庶民の娘と一緒になれ
ない。
「あなた、どうしてまた身分違いになってしまったの?」
「急いでいたもんで、何でも良いと生まれ変わったら、金持ちになってしまったんで
す」「今度はあなたのほうが名士なのに言葉は昔のままね」
「僕にとって、お嬢さんは永遠にお嬢さんなんです。さあ、今度こそは駆け落ちしま
しょう」
「またそんな後ろめたい生活するの?何だか気が乗らない…」
 躊躇している娘を強引に引き連れ、男は国際線の飛行機に飛び乗った。
 金も持ってきた。当分は遊んで暮らせるし、海外まで追ってくる事もないだろう。
 しかし何たる皮肉か、二人の乗った旅客機は、着陸に失敗し大破した。
 奇跡的に男は助かったが娘は案の定、若い命を散らしてしまった。
「何て事だ。どこまで行っても二人は結ばれないのだろうか…」
 それでも折角拾った命だ、男も一旦は彼女の分まで長生きしようとも考えたが、や
はり残るのは彼女と添えない恨みだ。
「中途半端は駄目だ。やはりまたあの世まで付いてゆこう。それが真の愛というもの
だ」 かくして男はまたまた川に飛び込み、あの世へ渡ると早速彼女のもとへ駆けつ
けた。
 すると何とした事か、彼女は他の男とイチャイチャしているではないか。
「お、お嬢さん!何て事をしてくれるんです?今更裏切るなんてあんまりだ!」
「あなたこそ何よ。これだけ何度も生まれ変わり死に変わりしたというのに、今更ま
だ付き合えって言うの?折角新しい恋人が出来たんだから少しぐらい自由にさせて
よ。心の狭い人ねぇ」
「何てひどい事を…。何度生まれ変わったって僕の気持ちは変わらない。どこまでも
お嬢さんについて行きますよ」
「もうウンザリよ。私は私で勝手にやって行くわ。さようなら」
 あの世の「勝手」にも詳しくなったのか、彼女は新しい恋人とひょいとどこかへ逃
げてしまった。
「逃してたまるか」
 間もなく男はまた彼女の所へたどり着いた。
「懲りない人ねぇ」
 また彼女は逃げた。
 逃げては追い、追いついては逃げ、あの世からこの世へ、この世からあの世へと二
人の追いかけっこは延々と続く。そして何十度目かの再会の折り、ついに彼女が警察
に逃げ込んだ。
「しつこい男に追われてるんです。助けて下さい」
 間もなく、男も警察へ飛び込んできた。
「お嬢さんに会わせてくれ。彼女は僕のフィアンセなんだ!」
「しかし、女性のほうは、キミを嫌がっているようだよ」
「そんな筈はない。だって僕は生まれ変わり死に変わりしても、ちっとも気持ちが変
わっていないんだから」
「何?何度生まれ変わっても気持ちが変わらないだって?」
「ねっ、ヘンな人でしょ?」
「ふむ……これは確かにちょっと偏執的だな」
「なんて事を言うんです?僕は気持ちが変わらないんですよ。どこが悪いんです?一
途な思いだと褒めてほしいぐらいのもんだ」
「しかしねぇ、キミ……いつまで経っても気持ちが変わらないというのはむしろ不自
然な事だし、少なくとも進歩してないって事だろう」
「そ、そんな言い方はないでしょう、失敬な!とにかく僕は昔と同じようにお嬢さん
を愛し、幸せにして上げたいと思ってるんです。だから何と言われようと、これから
も追い続けますよ。何十回、何百回、生まれ変わろうとも…」
 苦笑する警官に、タメ息をつきながら彼女が言った。
「こういうのって…ストーカー?」
                  (完)

2002年04月26日22時59分54秒投稿

 こんにちは、会員番号245番です。
 体脂肪率 40、1パーセントです。
 目下ウォーキングと水中ウォークの講座に通っています。先生は本当にいい方で、
ものすごくアドバイスも、熱心にしてくれはります、マシントレーニングのプログラ
ムなんかも、考えてくれはります。しかし、40年以上肥満と、戦ってきてずーっと
負け続けてる私、痩せる事は、無理かもしれませんね、先日美人リスナーさん達と、
お会いした時、皆自分が、人間ブヨブヨやと思っていたのには、驚きました。
 ドンドコのおねいさん方は、謙虚ですね。謙虚だけでは痩せません、どないしょ。

2002年04月24日22時57分52秒投稿

S.S☆「賢者の暮らし」☆     あや太郎

 働いて働いて大物にノシ上がった男がいた。
「ああ、我ながら良く出世したもんだ」
 尚も働きつづけるその横で、ネコがアクビしながら気持ち良さそうに背伸びする。
「ああ、あいつはいつものんびりやってるなぁ」
 ネコは餌を少々つまむと、また居眠りを始めた。
「あぁあ……つくづく羨ましいなぁ…」
 男は書き上げた書類をカバンに詰め、また寒空へと出ていった。
 ようやく独りになったところで、ネコが薄目を開けながら、呟いた。
「ふん……働かなくたってザッとこんなもんさ」
                  (完)

2002年04月24日21時45分26秒投稿

 ゴールデンウイーク

 4月29日は天皇誕生日でした。
 5月3・4・5日の連休は めったになかった。
 国民の休日も、振り替え休日も なかった。

 昔は せっせと働いていたんですねぇ。
                 (明石のメリケン粉)   

2002年04月24日20時46分08秒投稿

S.S☆「賢さの証明」☆     あや太郎

「お父さん−−−霊長類って、なぁに?」
「それは人間と一部のサルの事だよ。人間は霊長類・ヒト科に属するんだ。ゴリラや
チンパンジーも霊長類の仲間だよ」
「霊長類って呼び方は何だか他の分類名と雰囲気が違うね。なぜなの?」
「そりゃあ、他の動物たちより桁違いに知能が高いから、一種尊敬の念を込めて、そ
んなネーミングをしたんだろうな」
「でも、イルカやシャチも類人猿に負けず賢いんでしょう?」
「そうらしいな。人間の次はチンパンジーかオランウータン。その次ぐらいにゴリラ
やイルカってとこかな」
「じゃあ、犬やネコはもっと下なの?」
「そりゃあ、もっと下さ。人間はおろか普通のサルと比べても格下だな。まぁ、牛や
馬よりちょっと賢いぐらいじゃないか」
「でも、ウチのタマなんか結構賢いよ。名前を呼んだら鳴いて返事するし、おなか
減ったらエサの催促もするし」
「そりゃ背に腹は代えられないからね。飼い主にはちゃんと愛想しないと家に置いて
もらえないし、エサだって忘れられたら困るから必死で催促する。本能的な行動だ
な。まぁあんまり何も考えてはいないと思うよ」
「あっ、タマがアクビしてる。寝ころがってクッションを引っ掻いて…もう寝ちゃっ
た。本当だ…何にも考えてないみたい」
「そんなもんさ。特にネコは躾けても覚えないし、ほとんど何も考えてないんじゃな
いかな。だから芸を教えたって無駄だよ」
「もっと賢い動物だと思ってたのに、幻滅だなぁ…」
 そんな会話が途切れた頃、タマは薄目を開けて、だれも居なくなったのを確認する
と、ゴロゴロ呟いた。
「賢くなくても、それで食えてるんだから偉いもんじゃないか。賢くても食えない人
間が多いご時世なのにさ。おっと、余計な口は慎まなくちゃ。うっかり聞かれて追い
出されでもしたら、当節再就職のアテもないからな……」
 少なくとも景気の動向には犬も猫も敏感に違いなかった。
                  (完)

2002年04月23日23時18分19秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

〈三井不動産〉事件。
「逮捕しなければ身内に甘いと批判されていた。」
検察が自らを処する矛。
「調活疑惑について新たに調べるつもりはない。」
これは盾。

2002年04月23日13時05分54秒投稿

S.S☆「理想主義」☆     あや太郎

 砂塵巻く荒れ果てた大地の彼方から数えきれぬほどの人間が隊列を作り行進して来
た。 戦闘服を着た者もいれば、農民や工員らしき恰好の者もいる。
 しかし皆一様に武器のような物を携えていた。
 ひと目でそれとわかる革命軍−−−人民蜂起であった。
 革命軍の隊列が町に入ってきた。町中が訳も分からず興奮している。
 政府軍支持か革命軍支持か−−どちらが政権を握ったほうが良いのか握らないほう
が良いのか−−そんな事は関係なしに、町の住人たちが、国全体が、沸き返ってい
た。
 髭づらだが未だ若そうなリーダーが、目抜き通りの十字路に立ち、演説を始めた。
「我々は貧しい者のために闘っている。我々自身のために闘っている。そしてこの国
から貧しさを無くすために闘っている!」
 聴衆はまたひたすら盛り上がり、歓声が沸き上がった。
 聞いているだけで、主義主張に関係なく燃えてくるような演説だった。
「我々は尚も戦い続ける。貧しさと不正と不公平のない国を造り上げるまで。理想の
国家を作り上げるまで!」
 聴衆はより一層沸き立った。
 しかしここで一人の男が冷やかな顔でそっぽを向いた。何か白けたと言わんばかり
の表情だった。
「みんな、我々革命軍について来てくれるか?」
「オー!」
 住民の大半が手を挙げ拳を振った。身体の動かぬ年寄りと赤ん坊以外すべてが熱狂
の渦中に居た時、さっきの男だけが聴衆の群から離れ、建物の中へ戻ろうとしてい
た。
 それを見とがめた革命のリーダーがおもむろに背後から声を掛けてきた。
「見たところ、あなたも貧しい暮らしのようだ。あなたも同志ではないのか?なぜ
我々の仲間に加わらない?」
 男は恐怖心を抑えながら、こう答えた。
「確かに私も貧しい。共感もする。しかしキミたちにはついて行けない」
「それは何故だ?」
「それは−−−成功するとは思えないからだ」
 聴衆から怒号が巻き起こった。
 男は袋叩きになる前に素早く建物の中に逃げ込み、鍵を掛けた。
「臆病者は去れ。勇気ある者だけ、さぁ行こうではないか!」
 革命軍と新たなる賛同者たちはぞろぞろと行進を再開し、間もなく町を出ていっ
た。
 ほとんど人けの無くなった町で、僅かに居残った老人たちが男を見つけ問いかけ
た。
「あんたはまだ若そうだし身体も強そうだ。それなのに何故一緒に闘おうとしないの
だ?共感しているのに闘わないのは、やはり怖いからなのか?」
「いや−−損だからだ?」
「なぜ損すると決めつけるんだ?負け戦とは限るまい。むしろ革命軍はどんどん勢力
を増やしている。このまま行けば恐らく政府軍を倒せるはずだぞ」
「たぶんそうだろう。恐らくは現政権を倒せるだろうな。しかし問題はそのあとなん
だ」「そのあと?」
「そうだ。思い返してみなよ。長い人間の歴史で、革命や政権奪取に成功した人間は
どんな人間だったかを」
「みな命知らずの野心家だろうぜ」
「そうさ。そしてその中で長く政権を握りつづけたのはどういうタイプの人間たちだ
と思う?」
「そりゃ用心深い人間だろう」
「そうだ。そしてそういう息の長い権力者たちの中に、果して理想家は居たと思うか
い?」
「理想家か?そう言えば見当たらないな」
「だろう?高い理想を持って革命を始めた人間は、一旦政権奪取に成功しても、その
あとの国民の生活はなかなか良くならない。そして政権の寿命も短い。つまり不安定
で余計貧しい生活が待っているということさ」
 それに引き換え、山賊や海賊上がりの権力者は最初のうちこそ強盗、略奪を繰り返
すが天下取りを意識してからは徐々に民衆の人気取りを進め、いざ天下を取ってから
は慎重に基盤作りをし、長い政権と安定した社会を実現する事も珍しくない……と男
は冷めた目で付け加えた。
「だから…?」
「そうだよ。だから、理想主義者たちの革命には参加したくないという訳さ」
 これまで散々貧しさに喘いで来たのだ。得にならない事はもうしたくないという本
音に違いなかった。
「じゃあ、お前さんはこれからどうするんだい?海外へ脱出でもするのかい?」
「そうだなぁ−−−当分は海外に避難でもして、時々海外のマスコミの肩章でも付け
て取材がてら帰国するよ。そして革命政権が倒れ、国連軍が統治するようになってか
ら、この故国に腰を据えてじっくり執筆でもするさ。…なぜこの革命は失敗したかっ
てな」
 その時、近辺で戦闘でも始まったものか、何発かの銃声が鳴り響いた。そして次の
瞬間、何とあの男が倒れていた。流れ弾がたまたま男の心臓を貫いたのであった。胸
から大量の血を吹き出させ、男は呆気なく絶命していた。
「やはりな……」
 老人たちは何故か大して驚きもせずに、ただ悲しげな顔で男の死骸を見ていた。
 その死に顔にも何故か口惜しさより、むしろ穏やかな苦笑が浮かんでいた。
−−−そんな理想的で虫のいい人生など、理想主義の実現よりももっと許されざる事
なのだ。
 年寄りたちと死者は、まるで意見の一致を見たとでも言いたげに同じ表情で同じ感
慨に耽っていた。
                  (完)

2002年04月22日22時49分25秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

19日掲載記事。
「北海道警鑑識課警部補、警察犬を妊娠させて訓戒処分。」

上司「君、なんでまた犬を…?」
部下「愛し合ってるんです。なぁお前?」
妻 「わふん♪」
上司「どぉせ破たんするのは目に見えとる。」
部下「愛は不死鳥。」
上司「犬やろぉが。」
部下「ほな不死犬。」
上司「ちょっちゅねぇ。」
部下「さ、帰ろ。」
上司「すまんすまん。ちょっとしたお茶目さん。」
部下「僕らは真剣なんです。ちゃかしたりしたら噛み付きますよ。」
上司「かなり影響されとるな、嫁に。あ、嫁て…。」
部下「とにかく僕は彼女と可愛い8人の子供達のために一刻も早い入籍を…。」
上司「ちょっとまてぇ!何時産まれたんや?」
部下「夕べですけど。軽いお産で良かったです。なぁお前?」
妻 「わふふん♪」
上司「そ、そない言うたらお腹へこんでるがな。
   あっちゃぁ、手後れかぁ。
   そ、それで…あの…いったいどんな…その…お、お子達やった?」
部下「半分は僕そっくりで半分は彼女似ですね。」
上司「つまり、4人が人間で4匹…人がお犬様なのか?」
部下「いえ、上半身と下半身。」
上司「気分悪ぅなってきた。」
部下「写真見ます?」
上司「いらんわ!そんなおぞましいもん。
   世界の話題医学の謎やないか。
   人間のクローンでも大騒ぎやというのに。
   警察機構の信頼失墜に繋がりかねん事態や。
   まだ信頼されてりゃぁの話やが…。
   も、も、もぉとにかく即刻辞職したまえ!」
部下「そしたらなんですか?
   ほんわずか外見が異なるもん同士が愛し合ぉたっちゅうだけですよ。
   只それだけの事やのにそない一方的に横暴な態度に出ると言うんなら、不本意
   ではありますが法的手段に…いやまてよ。
   この場合は世論に訴えた方がええな。
   マスコミ文化人焚き付けたらきょう日一般常識なんかすぐ捏造出来るもんな。
   そぉや、欧米の動物愛護自然環境保護いっちょ噛み団体ちゅうのも手ぇやな。
   彼等からしたら他所の国の他民族の事やから無責任に扱えるわな。
   地球生命進化の自然な流れを歪めるジャップの傲慢、とかなんとか言うて…。
   ちょっとムカつくけどな。
   内外からプレッシャー掛かったら政府も議会もすぐ折れよるやろぉし。
   そやそや、そないしょぉっと。」
上司「い、いやまってくれ。言い過ぎた、すまん。
   これ以上過激な事は差し控えてくれ。
   儂もそない物の分からん男や無い。
   何とかしてやりたい気持ちは充分持っとるんや。
   けど、正直言うて入籍は無理違うか?
   我が国にはこんなん許す法律はないやろぉ、おそらく。
   え?哺乳類皆兄弟?
   そらまぁ、カツオノエボシとかクモヒトデから見たら人間に近い事は確かや。
   しかしなぁ…。」
妻 「くぅ〜ん。」
部下「心配せいでもええ。何としてもお前達を守ってみせるぞ。」
妻 「くふんくふん。」
部下「もちろんや。僕も愛してるよ。」
妻 「わふふ〜ん♪」
上司「秘密の会話すな、じゃらじゃらと。
   とにかく儂の一存では如何ともし難い。
   公にするとしたら本部の意向も聞かにゃならんし。
   そぉなったら諮問委員会の召集となるわな。
   かなり厳しい状況やが…これ乗り切れるかえ?」
部下「はい、僕は鑑識彼女は犬です。
   シモンの扱いはお手のもん、ちゅうて…。」
妻 「わんわん♪」

内容の解釈等、多少事実と異なる部分があります。

2002年04月22日13時13分46秒投稿

S.S☆「雪女」☆     あや太郎

 ヒョウ太はベテラン猟師の叔父に連れられ、山へと入った。
 初めての本格的な狩りだった。
 しかし経験の無さが出た。はるか年長の叔父よりももたつく足で行程は遅れる一
方……結局、山を下りる時間になっても猟は上がらず、帰り道には日がとっぷりと暮
れてしまった。「雪じゃ。間の悪いときはしょうがないのぉ」
 叔父に引きずられるように休憩用の山小屋へ飛び込んだ。
 外は雪になった。それが夜半には激しい吹雪に変わっていた。
「薪が無い。うっかり寝ちまうと凍え死ぬかもしれんぞ」
 言っていた叔父のほうが先にウトウトし出した。ヒョウ太も我慢できずに居眠りし
かけた……その時、小屋の中にヒューと冷たい風が走った。
「戸が開いたのか?」
 しかし戸も天窓も、それらしい隙間も開いてはいない。
 ますますひどくなる寒さに二人がいよいよ動けなくなった。その時、信じられない
光景がヒョウ太の目に映った。いつの間にか真っ白い装束の女が小屋の中を漂ってい
るではないか。それは時には白く、時には透き通り、また時には小さく、時には小屋
一杯に大きく見えた。
「幽霊か?化け物か?」
 凍りついたように動かなくなったヒョウ太の目の前で、女は叔父に近づくと顔めが
け、フッと息を吹きかけた。その途端に叔父の体が凍りついたように見えた。全身が
氷のように透き通っている。
「お、おそろしい…。人を凍え死にさせる……雪女だ…!」
 思っている間にも女はヒョウ太のそばまでやって来ていた。
「なんと可愛げな少年…。お前は殺したくない。だが私に会った事は誰にも言うでな
いぞ。もし誰かに言えは……誰かに言えば……!」
「い、言いません……!」
 そう言いながらヒョウ太は気を失った。
 明くる日、捜索にやって来た村人たちに助けられヒョウ太は息を吹き返した。しか
し叔父はすでに凍死していた。ヒョウ太はもちろん雪女の事を誰にも言わなかった。
 何年かの月日が経ち、ヒョウ太もどうやら一人前の猟師になっていた。そろそろ嫁
娶りの話が出掛けた頃、一人の旅の女がフラリとヒョウ太の家へ舞い込んできた。
 旅の疲れで倒れた女はそのまましばらく寝込んだあと、何となくヒョウ太の家に住
み着いてしまった。ヒョウ太も憎からず思うようになり、いつしか二人は夫婦になっ
た。間もなく子供も生まれ、三人はささやかながら幸せな生活を送っていた……と言
いたいところだったが、なにせ単調な山里の暮らしの事、二人は正直な所、倦怠期に
入っていた。
 そんなある日、不意に雪が降り出した。それが夜半になって吹雪に変わった。
「おかしいなぁ。こんな季節に吹雪だなんて…?」
「本当ね。でも私、雪が好き」
「へぇ、そうかい。変わったヤツだな。俺は雪に良い思い出が無いんだ。そう、あれ
は二十年も前だったか……叔父と二人で山へ猟に行ったとき吹雪に巻き込まれて
なぁ。可哀相に叔父貴は死んじまった。俺だって、危うく凍らされるところだったん
だ……あの女に」「えっ……あの女って?」
「うん、実はな、たぶん雪女じゃないかと思うんだが……」
 ヒョウ太はペラペラと、その時の一部始終を話してしまった。
「あなた……重大な告白をするわ。実は私……あの時の雪女なの」
「えっ、やっぱり」
「やっぱり?じゃあ薄々気づいてたのね」
「何だか昔そんな話を聞いた事がある。だから、ちょっと反応を見ようとお前に話し
かけてみたのさ」
「まぁ、ひどい人。私はあの時、誰にも言わないでって頼んだはずよ」
「うん。それもちゃんと覚えてる。大体、魔性のモノは正体を知らせると、もう人間
とは暮らせなくなるんだろう?実はそれが楽しみだったんだ。何てったって、倦怠期
だからなぁ……生活を変えたくてウズウズしてたんだ」
「まぁ、なんて薄情な人!それでわざと話を持ち出しただなんて、許せない」
「許せないなら尚更好都合だ。出て行きたければ、いつでもどうぞ」
「そうすればさぞかし満足なんでしょうね。でもそうは問屋が卸さないわよ。実はあ
の時言い含めた因果はまだ続きがあったのよ」
「えっ?どういう事だい?」
「もし誰かに言ったら!…このあとのセリフはね……一生取り憑いて離れないわよっ
ていうのよ!」
「ゲッ……じゃあ出ていってくれないのか?」
「そう簡単に出て行くもんですか。子供まで出来たっていうのに。どんな事があって
も一生別れて上げないわよ!」
 外には、雪女が夫の心根を試すため降らせた季節外れの雪がまだ降り続いていた。
「しまった……」
 ヒョウ太は今頃になって気がついたのだ。
−−−雪女であろうとなかろうと、妻というものは「魔性のモノ」に決まっている事
を。                  (完)

2002年04月20日23時09分23秒投稿

元姫路市民ですぅー。
さて、毎日放送ラジオで朝やってる「歌のない歌謡曲」ですがあれは録音ですか?
というのも19日の放送で森川さんが「道頓堀で真珠を作る会があるそうです。真珠を作るあこや貝には水を浄化する作用がありますので、汚いと言われる道頓堀をきれいにできます。その上真珠一つにつき一口50000円、二つなら7000円になります。2006年には真珠ができるので親子、恋人同士で楽しみに待つのもいいですね」とおっしゃってました。
しかしその15分前に菊水丸と三島ゆり子が「阪神が勝って道頓堀とびこんでる人がおるけどバイクや電化製品がほってある。ささるで。大腸菌も普通の10倍以上ある。死ぬで!」
そんな道頓堀にはたしてアコヤ貝が育つのか。森川さんの熱弁聞いても真珠一口のろうとはだれも思わないでしょうね。

2002年04月20日00時31分23秒投稿

S.S☆「魔性のモノ」☆     あや太郎

「不思議だ……」
 星野博士は首をひねった。
 今夜こそは、夜空の中にこの宇宙の謎を解く重大な鍵を発見できるはずだったの
だ。
その為に建設された月面の超遠距離反射望遠鏡を覗いた博士は、掴みかけては逃げて
行く〔宇宙の果て〕を空しく捜索したあと、大きく深いタメ息をついた。
「やはり見えない。前回見えかけていた宇宙の地平線がまた遠のいてしまった。宇宙
の膨張速度を計算に入れ改造をしたというのに……」
 大気による乱反射が無い月面の、しかもハッブル望遠鏡よりも遙かに巨大な地上施
設でつぎつぎと反射鏡を付け足し、倍率と解像度を増すことのできる言わば史上最強
の天体望遠鏡を使い、宇宙の謎を観測し始めて三十年……五十回の改造を経て望んだ
「宇宙の果て観測」だったが、今回も空しく宇宙の地平線に逃げられてしまった。
「捕まえたと思ったら、また逃げられたか……」
 「また」と言うとおり、たどり着きかけたゴールを見失ったのは、今回が初めてで
はなかった。と言うより、過去の三十年間…五十回の望遠鏡改良の度に、見えるはず
の宇宙の果てが見えなかったのだ。
「当初は不慣れだったし、計算が甘かったと反省したものだったが…」
 経験を積み重ね、様々な傍証や国際的な共同研究の結果を踏まえて計算し抜いたに
も関わらず、その後の数十回の改良と観測は何故かことごとく「宇宙の果て」まであ
と一歩の感触で、失敗に終わっていたのだ。ここまで来ると、もう観測態勢の不備や
計算違いという理由だけでは割り切れない。
「やはり宇宙の果ては……解けない謎のままなのだろうか……?」
 またタメ息をつきながら博士が椅子に座り込んでいると、地球の実家からテレビ電
話が入った。
「もしもし……あなた?研究は上手く行ってらっしゃるのかしら?」
 見飽きた妻の厚化粧の顔が愛想笑いしながら語りかけて来た。
「上手く行って…らっしゃらないよ。また壁に当たってしまってね」
「あら、それは残念ですこと。でも早く成功させないと研究資金も渋られるし、学会
や世間のほうも白けムードですわよ。わたしもパーティの席なんかで肩身が狭くっ
て、活躍なさってる先生方の奥様にも何やかやと言い訳をしてはゴマかしてるんです
から。早く埒を明けて下さいましね。じゃあ頑張ってちょうだい……プツン」
 人の気も知らないで注文だけして電話を切った。しかし気のいい博士はそれも妻の
励ましだと受け取ることにした。実際、世間の風は冷たくなっているようだった。
「あいつも少し痩せたな。あれでいて気に病んでるんだなぁ。段々濃くなる厚化粧
も、みんなヤツレを隠すためだろう。泣かせるじゃないか」
 浮世離れした研究生活はしていても古女房の苦労ぐらいは分かる博士だった。
「思えば昔から厚化粧の女だった。世間に疎い私はそんなもんだろうと思って一緒に
なったんだが、よく考えると、まだアイツの素顔をちゃんと見たことがない。そう
だ、宇宙の果て観測に失敗して天文台長をクビになったら、地球へ戻って古女房の素
顔をじっくり観察してみようか、ふふふふ」
 しかし、悪戯っぽく笑ったあと、博士はまた真顔になり首をひねった。
「待てよ……やっぱり化粧の下を見ようなんて無粋で無慈悲な事はしないほうが良い
のかも知れないな。あいつの厚化粧した顔と結婚した訳だから、案外このまま正体を
見ないで添い遂げたほうが良いのかも知れんぞ。おとぎ話にも良くあるじゃない
か……見てはイケない正体を見て、一生の別れになってしまう夫婦の話が。いわゆる
魔性のモノだ。魔性のモノは正体を見られたら、もう会えなくなる。ウチの妻も、一
生手放したくない…と言うほどのモンじゃないが、かと言ってこの年で逃げられた
ら、孤独な老後は大変だ。やっぱり別れる破目になりそうな事は避けておこう。それ
が人間の知恵というものだろう。……いや、ひょっとすると宇宙の謎だって、同じよ
うなものかも知れない。もし宇宙が魔性のモノだとしたら…」
 博士はまた悪戯っぽく笑うと、達観した表情で再び望遠鏡を覗き込んだ。
「「正体を知らぬ内が華……いや、むしろ知らないほうが身のためかもよ」」……
 果てし無く続く星空が、そう囁くようにウインクした。
                  (完)

2002年04月18日22時44分04秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

4月16日 TORII HALL「雀三郎みなみ亭」

出し物

●「貧乏花見」  桂 雀五郎
●「饅頭怖い」  桂 雀三郎
●「崇徳院」   桂 雀五郎
●「わいの悲劇」 桂 雀三郎

愛弟子によりぎょぉさん実戦の機会を与えよぉという師匠の恩情か、ゲストの都合が
付かんかったのか、はたまた3席語るのが面倒やった雀さんの計略か。
真相は不明ながら、今回は師弟共に2席勤めた親子会。

「饅頭怖い」の冒頭、好きなもん嫌いなもんの尋ね合いの場面。
ひとりが
「わたいは蛙の背中にあるよぉなブツブツが嫌いですねん。」
その隣は
「わたいは蛙とか金魚の腹みたいにツルッヌメッとしたのが嫌やね。」
「いやぁブツブツ見たらぞっとします。」
「ツルッとしたのが嫌いで…。」
散々二人で言い合いした挙げ句
「ほれ見てみぃ。ツルッとしたもん考えただけでさぶいぼ出て来た。」
「わぁブツブツ!わっわっわぁ!」
「おい、お前ら二人だけで遊ぶな。皆で遊ぼ。」
…て、文字にしたらもぉひとつやな。
ほんまはごっつぅ面白いとこなんですよ。
ここは雀さん印のオリジナル。

小佐田先生作「わいの悲劇」。
ここんとこ以前の新作をちょいちょい掛けたはりますな。
この噺とか「雨月荘の惨劇」なんかおそらく他に誰もやり手は無いやろぉしね。
たまには自ら虫干ししとかんとね。
因に次回には「神だのみ」シリーズ中最高傑作「初恋編」が登場します。
これは楽しみ。

雀五郎さんの「貧乏花見」。
それぞれ持ち寄る食べ物の中に柿の種が登場します。
「柿の種?結構な酒のアテやがな。」
「甘い。カマゾコにハソォメンやで。
 きっと柿食べた後でなんぞにしよぉと思ぉて取っといたほんまの種やで。」
言うてる処へ笊を持って戻って来ます。
布巾を取ってみると
「わっアブラムシやないか!」
「そや、手足取ったら柿の種。」
このアブラムシを花見の現場にまで持って行ってるとこが面白い。
貧しい乍らも洒落たぁると思うか、おぞましいと思うかは意見の別れる処やけどね。
見た目故か、下手すりゃ嫌な場面も妙にしっくり。
得やなぁ、雀五郎さん。

まだいっぺんに2席はしんどかったか。
少々流れが平板で緩急に欠けてた「崇徳院」。
ただ最後の場面に一工夫ありました。
探し求める娘が見付からず、放心状態の熊五郎が何度も訪れた散髪屋で休憩中。
そこへ娘の家に出入りする男が飛び込んで来て本家の大騒ぎについて話します。
経緯を聞いた散髪屋の大将
「しかしなんやな。あんまり男前に生まれるのも…。」
この辺りから出入の男と散髪屋の大将は音声無しの口ぱくのみ。
若旦那の命を救い、親旦那の信頼を得て栄えある将来を我が物に…。
そんな目論見故の苦心惨憺も実らず諦めかけてた現実が、偶然とは言え一気に好転。
その衝撃から熊はんの脳神経は外界の音をすべて遮断します。
視覚のみの情景認識から我に帰って感情の爆発。
そして噺は大団円へ。
この無音の部分で客の目は熊はんの視線になりますな。
一瞬にして客観が主観に変化する映像的演出。
これが本日の、やぁれ秀逸秀逸。

毎度お馴染み、お詫びと訂正のコーナー。
4月15日投稿「桂 枝雀一門会」感想文の本文3行目〈PIC UP〉は〈PICK UP〉の誤り
です。謝ります。すまんすまん。
しかし〈K〉が抜けるやなんて、こら枝雀さんのお導きかいな。
としたらこの感想文も危ないな。
毛ぇ…いや、気ぃつけよ。

2002年04月18日12時44分02秒投稿

元姫路市民です。
祝!ぜんじろう「それでもオレはアメリカに行った」出版&ミナミのジュンク堂で4/29サイン会決定記念替え歌(売れたわけでもないのにこの盛り上がり)
テツ&トモの大ネタ「なんでだろ〜」の替え歌。「なんでだろ〜」を「ぜんじろう〜」に替えたものです。

自称福山雅治のマブダチ ぜんじろう〜
オール巨人の弟子なら即丸坊主 ぜんじろう〜
CDでたら「何十枚買うたらええ?」と姫路のオカンから電話かかってくる ぜんじ
ろう〜
天素の幻のリーダー ぜんじろう〜
電車の余興をラジオやからといって ずっと「明石家さんま」で通した ぜんじろ
う〜
見た目と声さんまでもハートはのりおの ぜんじろう〜
上岡門下の一番弟子のテントさんに「上岡一門は実力主義やから実質一番弟子俺や」
といいだす ぜんじろう〜
入試にベレー帽かぶって「見えたものがすべて芸術です」で芸大合格 ぜんじろう〜
今では信じられないが毎日放送っ子だったよ ぜんじろう〜
小学校5年まではおやつに鼻くそ ぜんじろう〜
夜中の番組終了後〜頼みもせんのに「朝まで生金谷」をする ぜんじろう〜
嘉門達夫に2万円で「鼻から牛乳」を売った ぜんじろう〜
たいぞうにも1万円で「ぺろぺーろ」を売りつけた ぜんじろう〜
十年付き合ってた彼女に捨てられた ぜんじろう〜
念願の〜番組名に〜自分の名前が入る それは「ぜぜぜのぜんじろう」 最初で最後
! すぐ終わる!
どうもありがとうございました。
ジャンジャン。

2002年04月17日23時04分24秒投稿

S.S☆「氷の星から来た女」☆     あや太郎

 雪と氷の惑星ナノキウスを探査していた地球観測隊は予想を遙に越える猛吹雪に襲
われた。ロケットは凍りつき、気温が上がるまでは飛び立てない。船内に閉じ込めら
れたまま、天候が緩むのを待っていた隊員たちだったが、吹雪は激しくなるばかり、
気温も下がる一方で、貧弱な暖房設備では凍死の恐れさえ出てきた。
 ありったけの防寒服や毛布を着込み、身体を寄せ合ったまま隊員たちは余りの寒さ
に意識も遠のき、一人また一人と眠りに落ちて行く。
「眠ってはイカン。起きろ、ボージャ!」
 艦長が一番若い搭乗員に檄を飛ばした。ボージャが目を覚ましたのと入れ代わるよ
うに今度は艦長が崩折れるが如く眠りに落ちた。
「もうダメみたいだな。あえなく全滅か……」
 彼がそう思ったとき、船内を何か白い影がよぎった。
「ヘンだなぁ…」
 もう動ける乗員はいないはずだ。光が差し込むような窓もない。何かと思って眠い
目をこじ開けると、何とそこに白いレースのような衣装をまとった女の姿があった。
「ゆ、幽霊か?……それとも雪女か……?」
 まだ探査も進んでいないこの星には未知の生物が存在するのかも知れない。
 その白く透き通るような顔を隊員の一人一人に近づけると、その女はフッと白い息
を吹きかけた。何とその度に、隊員たちはつぎつぎと凍りついて行くではないか。
「なんて恐ろしい……」
 そしてついに一人残ったボージャのところへも雪女が近づいてきた。
 逃げだしたくても冷えきった身体はもう動かない。第一、どうせ逃げる所もないの
だ。ボージャは観念して目を閉じ、最後の瞬間を待った。
 すると白い女のタメ息と、微かな思念が彼の心に伝わってきた。
「愛しい少年。死なせたくない……」
 そんな声ならぬ声を聞きながらボージャは意識を失った。
 気がついた時には、救助船の中で介抱されていた。どうやら生き返ったらしい。
「やはり若いというのは素晴らしい。他の隊員は全員凍死したのに、君だけは辛うじ
て生き延びた。救助に手間取って三日も仮死状態だったというのにね」
「三日も?それなのに助かったんですか?」
 ボージャがようやく我に帰り問い返した。
「心臓はほとんど止まりかけてたんたが、暖めるとまた動きだしたんだよ。他の隊員
は冷凍状態でもう回復しなかったんだが、キミはまだ辛うじて冷蔵状態でね。ほら、
ちょうど魚や蟹を輸送した時みたいな要領さ、ハハハハ」
 魚と一緒にされるのも妙なものだが、ともあれ唯一の生き残りに成ったのは幸運と
しか言いようがない。ボージャは身体の回復と共に、また他の惑星の探査へと飛び
立って行った。
十年の月日がたった。銀河系のあちこちを調査旅行したあと、サーシャは再びあの雪
と氷の惑星探査を命じられた。
「君にとってはイヤな思い出のある星だが、あの事故以来ほとんど探査が進んでいな
い。この宇宙域でも唯一の未探査惑星となってしまったし、このまま放置しておくの
は我々の面目に関わる。そこで経験のある君に今度は調査隊チーフとして探査をして
貰いたい。以上だ」
 惑星探査局長官じきじきの指令では仕方がない。またあの星で殉職した仲間のため
にも、再探査はぜひ成功させたい任務でもあった。
 かくして一行を乗せた新型探査船はあの星に着陸した。
「今度は寒さ対策にも万全を期してある。マイナス二百度になっても動く非常脱出エ
ンジンも備えてあるから二度と立ち往生はないだろう。みんな安心して探査に励んで
くれ」
 準備さえ万全なら事はスムーズに運ぶものだ。今回は厳しい気候変動もなく、惑星
探査は滞りなく完了した。
 早々と地球へ帰還する探査船の中で、一つだけ異常が発見された。
「重量が細かく変動してます。その度に微かな生命反応が……」
「生命反応?そんな筈はない。あの星では結局生命体は発見されなかった。持ち帰っ
た物と言えば鉱物資源と太古の生命体の化石が含まれているかも知れない岩石標本だ
けだ。無論、途中から宇宙生物が乗り込んだ形跡もなかったぞ」
「あっ、また生命反応が消えました。ひょっとするとセンサーの不調かも知れません
ね」「長旅のあとだからな。また地球へ帰ってから点検するとしよう」
 その後は何事もなく探査船は予定通り地球に帰還した。
 すべての任務を終え、隊員たちが休養を取っていた頃、ボージャの元へ一人の女性
記者がやって来た。顔も身体も真っ白な魅力的な女性だった。以前からボージャの仕
事ぶりを聞き、取材を願っていたという。不思議な魅力に惹かれ、サーシャはいつの
間にかその女性と深く付き合うようになっていた。
 間もなく二人は一緒に暮らすようになり、やがて子供も生まれた。ボージャは地上
勤務を選んで親子三人仲良く暮らす日々が続いた。
「幸せだなぁ。宇宙を飛び回っている時は、こんな面白い仕事は他にない……結婚な
んて窮屈でイヤだ……なんて思ってたけど、やはり年かなぁ……キミと暮らしてみ
て、僕は本当の幸せを知ったよ」
「私も幸せよ。平凡だけど、子供の成長を見守りながら、あなたと暮らせるだけで宇
宙で一番幸福な暮らしだと思えるわ」
「もう二十年近くも前の事だが、もしあの時、あの星で凍死してたら、こんな幸せな
生活は味わえなかった。僕は幸運だったよ。それにしても不思議だなぁ……みんなあ
の寒さの仲で冷凍状態になっていたと言うのに、僕だけはその一歩手前の冷蔵状態の
まま保たれていたそうだ。そのお蔭で息を吹き返したんだが、なぜ僕だけ冷蔵状態
だったんだろう。まるで魚や蟹の美味しい保存法みたいだって、皆にからかわれたも
んだよ、ハハハハ」
「そうかも知れないわよ、あなた」
「何が、そうかも知れないんだね?」
「冷蔵になった訳よ。ひょっとしたら、味が落ちないようにわざと冷蔵にしたんじゃ
ないかしら……誰かさんが」
「えっ、誰かが?……よせよ、気持ちの悪い…。伝説の雪女じゃあるまいし。それ
も、あとの楽しみに冷蔵保存しておいたって言うのかい?」
「そうかも知れないわよ。あの時、食いっぱぐれた雪女が、はるばる地球まで追いか
けて来てるかも……」
 その時、ボージャの脳裏に化石分析に関する「噂」がよみがえった。
−−あの星から持ちかえった化石にはかなり進化した生物の痕跡があった。ところが
成分分析すると、何故かその痕跡が跡形もなく消えてしまうというのだ。スルリと幽
霊のように抜け出る姿を見た者さえいるというのだが……。
「ひょ、ひょっとして……君は本当に……?」
「本当に、雪女だったら怖い?」
「そりゃそうさ。取って食われるだなんてゾッとしない」
「ホホホホ、冗談よ。心配なさらないで」
「な、なんだ……脅かすなよ。そりゃそうだよな。そんな話、冗談に決まってるさ」
「そうよ、冗談に決まってるじゃないの。折角、苦労して鮮度を保ったのに、一口で
食べてしまっちゃ勿体ないわ。これからも末永くアナタを味わわせてもらわなく
ちゃ…」
 ボージャの恐怖感は、もはや雪女かどうかとは別の所に在った。
                  (完)

2002年04月17日22時13分22秒投稿

S.S☆「期待」☆     あや太郎

「もうすぐプロ野球も開幕だ。さぁ、我らがチームにも頑張って優勝してもらおう」
「ダメダメ。我がチームながら戦力は乏しいし、戦略にも策がない。今年もまたBク
ラスだ。最初っからダメだね」
「そんなこと言わないで応援しようよ。期待しなけりゃ、チームも強くならないぜ」
「いいや、期待はしない」
「なぜだよ?」
「期待すると…裏切られるからな。あとが辛い。だから期待はしたくないんだ」
「そりゃおかしいだろう。そもそも期待は裏切られるものさ。裏切られる恐れがない
のなら、それは期待じゃなくって〔お約束〕じゃないか。そんな最初から決まってい
るものなら最初から観戦したり応援したりする必要はない」
「そう言えばそうだな」
「折角これまで空しいながらも応援して来たんだから、今更〔期待外れ〕を恐れて
ファンを辞めるなんて情けないよ」
「なるほど……アテが外れたり裏切られたりするからこそ、期待なのか。それじゃ
あ、期待外れを楽しみに今年も応援するか」
「そうだよ。それでこそ真のファンだ」
「じゃあ、ついでに止めてた競馬も再開するか」
「それはヤメとけよ。また大損をするぜ」
「いや、大損や大負けを期待して再開するんだ。そうすれば期待外れで大儲けできる
かも……」
「いや、それは駄目さ」
「なぜだ?」
「それは不純な期待だからさ。そういう下心のある期待は外れない。見事に外れるの
は本当に心の底から期待だけさ。どうだい……期待したり外れたりするって味わい深
いだろう?」「ふーむ。厳しいんだなぁ……期待するって事は」
                  (完)

2002年04月16日22時07分51秒投稿

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