
過去のドンドコ掲示板
2002年04月01日〜15日
S.S☆「遠くて近い」☆ あや太郎
娘は青年に辛い別れを告げようとしていた。
「ごめんなさい。どうしても家族や親戚が許してくれないのよ。古臭いって言われる
かも知れないけど、こんな田舎に住んでると、身内の反対を押し切れなくて……。だ
から御免なさい。私の事はもう諦めて」
「そんな……。いや、たとえ何と言われようとも、僕のほうは諦めないよ。キミが身
内の反対を押し切って、きっと僕の後をついて来てくれると信じているから」
「そんなこと言わないで。未練が残ってしまう。あなたがキッパリ諦めてくれたら、
私も決心がつくってものよ」
「自分の心に正直に生きようよ。思うがままに行動するんだ。そうだ……試しに二人
の将来を占ってみよう。僕が先に帰るから、君は一分遅れて歩き始めるんだ。道は同
じだから、もし僕が帰宅するまでにキミが追いつけば、やはり二人には縁があるって
事だ。きっと結ばれる。だが、もし家に帰り着くまでに君が追いつかなかったら、縁
が無かったと諦めよう」
「何だかヘンな占い方ね。男の足のほうが速いに決まってるのに、遅れて歩きだした
ら追いつく訳ないじゃないの。…それとも、気持ちを吹っ切る儀式のつもりなの
?……あっ、行っちゃった…」
単調な田舎の一本道を青年はテクテクと歩いて行く。一分たってもまだ彼の後ろ姿
は見えていたが、それでももうかなり遠くを歩いていた。
「私が走って追いかけるとでも思っているのかしら…?」
そんな気持ちが無いでもなかったが、娘は努めていつもの歩幅でゆっくりと歩き出
した。五分ほど歩いた頃、前を行く彼に少し近づいている事に娘は気がついた。
「ひょっとしたら時々立ち止まってるのかしら」
歩きながら、ようく確認してみたが、青年に足を止めている気配はない。それどこ
ろか何故かいつもより一所懸命、足早に歩いているようにさえ見える。
そして二人の距離はますます縮まって来た。実に不思議な間隔と感覚だった。
青年の後ろ姿はもう目の前に迫っていた。
「こんな事ってあるのかしら…。このままじゃ追いついてしまうかも」
娘はまた意識的にゆっくり歩こうとしたが、距離はやはり狭まってくる。夕闇の中
とは言え、彼が「後ろ歩き」している様には見えなかった。
果して、家に帰り着くまで余裕を残して、二人は横並びに歩いていた。
「やっぱり追いついて来たね。二人は縁が有るんだ。結ばれる運命にあるんだよ、
きっと」
「本当にそうかも知れない。私は決して足を速めた訳じゃないのに、こうやって追い
ついてしまったんだから。でも何故なの?SFみたいに時間や空間が縮んだ訳でもあ
るまいし」
「ハハハ。時間も空間も、僕の足も縮んじゃいないさ。ただ歩き方にちょっと苦労し
たけどね」
「歩き方って言っても、別に後ろ歩きはしてないみたいだけど……?」
「薄暗いから見えにくいかな。明かりの下で良く見てごらん」
一本道の端に立っている街灯の下で、何と青年はムーンウォークを混じながら、
ゆっくりゆっくりと前進していた。
「まぁ……こんなトリックを使ってたのね」
思わず娘が吹き出した。
「こんなにも苦労してるんだぜ。もう足が攣りそうだよ。早く返事を聞かせておく
れ。そうでないとアキレス腱が切れちまう…」
「じゃあ今度は……私が走るのについて来て頂戴。もし家に着く前に追いついたら、
駆け落ちでも何でもして上げるわ!」
勢い良くダッシュする娘のあとを、足をもつらせながら青年も必死で走りだした。
二人が本当に結ばれたのかどうか、すべては夕闇の中であった。
(完)
2002年04月15日22時36分39秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
4月12日 ワッハ上方演芸ホール「桂 枝雀一門会」
出し物
●「七度狐」 桂 紅雀
●「しらみ茶屋」 桂 文我
●「親子酒」 桂 九雀
●「宿替え」 桂 雀三郎
〈中 入〉
●桂 枝雀とその仲間・その2
南光/雀三郎/雀松/雀々/九雀/文我/む雀/紅雀/こごろう/雀喜
●「愛宕山」 桂 枝雀(DVD枝雀落語大全・ABC枝雀寄席より)
会場でDVDを販売してたんで帰り際一番別嬪な人の前に行って覗いてみました。
言うときますけど別に他意は無いんですよ。
それは落語大全そのものをDVD化したんや無しに、19演目をPIC UPして10枚のディス
クにまとめたもんなんですな。
売り場で見たら分かるしチラシも渡されて知ってたんですけどね。
念には念をという訳で一番別嬪な人に確認したんです。
ほんまに他意は無いんですよ。
その一番別嬪な人が言う事にゃ、全部をそっくりDVD化する予定は無いとの事。
「これはちょっと半端な企画やないかいな。
なんで同じ内容にせなんだんです?
メディアの選択肢を増やしたら家庭事情に合ぉた買い方出来まっしゃないか?
確かに音楽とか映画なんか程には売れんでしょぉ。
在庫抱えてしまうリスクは大きいでしょぉ。
けどそれやったら最少ロット決めて受注生産にしたらええんちゃうの?
そぉでしょ?違うか、ええ?
そのままの形やったら万難を排して、例え借金踏み倒してでも買い求めたんや。
きっとDVDになると思ぉて去年から楽しみにしてたんやで。
そ、その私の…うぅ…夢と希望と憧れを踏みにじるよぉな真似して…ぐすん…
ええと思ぉとるのか君は!」
ちょっときつぅ言うてやるとその一番別嬪な人は目に一杯涙を溜めて
「ごめんなさい。みんな私が悪いの。お詫びに今夜…。」
てな事になったらええなっちゅう話ですがな、は・な・し。
えー、そぉいう僥倖に浴する事も無く
「そぉなんですかぁ…。」
「そぉなんですぅ…。」
で、その場を離れよぉとする私にその一番別嬪な人が言いましたな。
「また後日にでもお申し込み下さい。」
会話の流れとか雰囲気で、こいつは買いそぉにないなって分からんかえ?
そんなこっちゃ一人前の商人にはなれまへんえ。
思わず振り向いて言うてやりました。
「はぁい。」
まぁ一番別嬪な人やからね。
快い嘘ついて帰途にもついたのでありました。
今年の枝雀さんの出し物は「愛宕山」。
小判は欲しいし飛ぶのは恐いしで幇間一八が煩悶する場面。
目を瞑り歩数を計って飛ぼうとします。
「1、2、3、4、5、パッ。これやな。
1、2、3、4、5、パッ。1、2、3、4、5、パッ。」
自らによぉ言い聞かせておいて助走開始。
「1、2、3、パッ。あ、なんやこれ。あかんがな。」
これは枝雀さん独自の表現。
必死さがよぉ出ていて好きなとこです。
この噺の落ちは
「上がって来よったがな。えらいやっちゃぁ。それで小判は?」
「忘れて来た。」
枝雀さんのは最後の一八の台詞は無し。
言葉にならん声を発し乍ら身振りで谷底に置いて来た事を表します。
ショックの大きさがよぉ分かりますな。
果たして一八は再度チャレンジしたんでしょぉか?
むざむざ諦めるとは思えんのですがね。
枝雀さんの印象があまりにも強い「宿替え」。
それでも雀三郎さんは徐々に自分の物にしつつありますな。
濃厚な枝雀味に違和感無くピリッと効く雀三郎風香辛料。
こらもみない筈が無い。
「桂 枝雀とその仲間」のコーナーで末席に座ってた雀喜さんにいきなり
「師匠はお前嫌ぉとったな。言うてた。」
周り全員があたふたするよぉな爆弾発言。
しかも公衆の面前で…。
なんぼ自分のお弟子さんや言うたかて無茶しますな。
けど、そこはさすがに師匠です。
後のフォローも怠り無く
「俺は好きやけどな。舌の廻らんとこなんか…。」
果たして雀喜さんの心にはどっちの言葉が強く残ったんでしょぉか?
禍根を残さねば良いが、と思う今日この頃であります。
これも面白かった九雀さんの「親子酒」。
息子の酔っ払いとうどん屋の絡みの場面を初め、そこここに独特の乾いたギャグを仕
掛けながらも本筋を外す事無くしっかり語ったはりました。
「しらみ茶屋」の文我さん。
この人の噺、聴いたら聴いたでええんですけど、ことさら聴きたいとも思わん。
嫌いっちゅう事や無いんですけどね。
♪なぁ〜んでか。
分かりません。
もぉひとつ合わんとしか言えませんな。
また理由を言える程聴いた事が無い。
聴いたら聴いたでええんですけど、ことさら聴きたいとも思わん。
嫌いっちゅう事や無いんですけどね。
♪なぁ〜んでか。
分かりません。
もぉひとつ合わんとしか言えませんな。
また理由を言える程聴いた事が無い。
聴いたら聴いたで…。
〈以下、好きなだけリピート〉
紅雀さんの「七度狐」は超短縮版。
然して重要で無いと思われる部分でも、いざカットされてみるとなんや物足りん感じ
がします。
ところで紅雀さんは犬顔ですから狐がよぉ似合いますな。
眉間に皺寄せて大きい目ぇを釣り上げたら如何にも怪し気。
これはちょっとした武器ですな。
当日DVDシリーズ全巻購入の人にはおまけディスクが付いてました。
雀々さんと共演した狂言とか三人分を一人で唄ぉた長唄の発表会とかの未発表映像。
X-TVでの〈緊張の緩和〉の解説編も入ってました。
大スクリーンに写し出された在りし日の枝雀さんと上岡さん。
感無量ですな。
んで、このディスクだけは…なんぼ?
2002年04月15日17時07分55秒投稿
毎度、丸浜です。
昨日、久しぶりにラジオを聞きました。
小林大作、桶村久美子の「メモリーオブユー」
淡々としてて、良いね〜
この番組と言えば「安達晴彦氏」を思いだし、「バンザイ歌謡曲」と次々に思い出し
て懐かしンでたら、「森原久三」さんの名前が聞こえてきた。
すごいね〜まだ頑張ってリクエストしてはるんやね。
2002年04月15日08時37分48秒投稿
S.S☆「想像の中身」☆ あや太郎
「ねぇねぇねぇ……私が何を考えてるか分かるぅ?」
「分からねぇよ」
「ちょっと頭の中を覗いてみたくない?」
「別に」
「私の想像の世界には素晴らしいイメージが広がっているのよ」
「へ〜…」
「ねっ、覗いてみたいでしょ?」
「いいや、別に」
「照れなくても良いじゃない。話してあげても良いのよ」
「聞きたくないったら」
「また強がり言って。そんな筈ないじゃない。私の想像の世界で一緒に遊びたいくせ
に」「誰がだよ?そんなの要らないよ」
「あなたってヘン」
「何がヘンなんだ?」
「だって……恋人同士なんだから、相手の心のなかを知りたいって思うのが当たり前
じゃないの」
「いいかげんにしろよ。俺たち……恋人でも何でもないじゃないか」
「んもう、また照れちゃって…。あなたの気持ちぐらい分かってるのよ」
「それは君の思い込みだよ」
「うーん、じれったい…。もう私の心を覗きたいって素直に白状しなさいよ」
「じゃあ素直に白状するよ。……あっちへ行け!」
(完)
2002年04月14日21時22分08秒投稿
S.S☆「夢の中の夢」☆ あや太郎
友人が男の家を訪れると、その彼が独りしょんぼりと座っていた。
「どうしたんだ?顔色が良くないぜ」
「うん。実は女房が死んだんだ」
「なに?こないだまであんなに元気だったのに。事故かい?」
「いや、心臓発作でね。何の前触れもなくポックリいっちゃった」
「そりゃショックだなぁ。気を確かに持てよ。俺がついてるからな」
「有り難う。でも気落ちしてる暇はないんだ。すぐに次の恋人が出来ちゅってね。結
婚の約束までしちゃったんだ。もう幸せ一杯ってとこさ」
「おいおい、何て奴だ。まだ奥さんを亡くして間もないってのに…」
「そんな幸せの絶頂で……目が覚めたんだ。あぁ、つまんない」
「何だ、夢かよ…。驚かすない。じゃあ奥さんは元気なんだな?」
「生憎と元気で俺を揺り起こしやがった。しかも俺の寝顔を見てて、何か勘づいたん
だろうな。どんな良い夢を見たの?…って詰問された」
「それでどう答えたんだい?」
「うっかり、本当の事を話しちゃった。するとカミさんの奴、怒ったねぇ」
「そりゃそうだろう。奥さんが死んだ途端に恋人が出来て、すぐ再婚だなんて」
「だけど夢の話だぜ。単なる夢だ……怒る事はないだろう……と言ったら余計怒りだ
した」
「ご機嫌を損ねたな」
「単に機嫌だけじゃ済まなかったんだ。何と慰謝料を要求するって言いだしてね。
困ってるんだよ」
「今時ありそうな話だ。居直ると話がもめるから、ここは一つ穏便に済ましといたほ
うが無難かもよ。小遣いをやるとか、バッグの一つも買ってやるとかさ」
「そんなもんじゃ済みそうにないんだよ。何と…一千万円も要求して来た」
「何と一千万!そりゃシャレにならんなぁ。どうする気だい?」
「こういうご時世だろう。女の権利が強くなってるし、旦那が浮気の夢を見ただけで
も、それぐらいの慰謝料を巻き上げられるかもしれん。今更あの話はウソだったとシ
ラを切る度胸も無いしなぁ。頭を抱えたよ」
「相変わらず気の弱い奴だねぇ。それでどうなったのさ?」
「悩んでいる時に、君が訪ねて来て目が覚めた」
「何だ……また夢だったのか?」
「そうなんだ。先ず夢の中で女房が死んだ夢を見て、それが醒めたあと、女房にとっ
ちめられる夢を見たらしいんだよ」
「呑気なこと言ってるよ。ぜんぶ夢なら良かったじゃないか。何事も無くて何より
だ」
「いや、それがそう簡単には収まらないんだ」
「まだ何があるってんだい?」
「実はさぁ、以前キミにも言った事があるだろう?……僕は夢で将来を予知できるっ
て」「あぁ、確かそんなこと言ってたなぁ。普段はカラーで夢を見るのに、たまに白
黒の夢を見る……その時は大抵正夢だって」
「そうなんだ。滅多に白黒の夢は見ないんだけど、さっきまで見てた夢は白黒で、し
かも珍しいぐらいハッキリした夢だった。だから、今までの経験から言って九分九厘
正夢だと思うんだよ」
「じゃあ、君は夢の通りに、奥さんが死ぬ夢を見て、そこを起こされて、慰謝料を取
られるって筋書きになるのかい?」
「問題はそこなんだ。事の始まりは、夢の中で見た夢だろう?普通の夢ならともか
く、夢の中で見た夢まで予知夢だなんて事があるんだろうか?」
「そんな事知らないよ。僕にはそんな超能力はないからね」
「いや、希望を言えば、最初だけが予知夢であって欲しいんだよ。あの口やかましい
女房がポックリ逝って、新しい恋人と結ばれて……そのあと眼が覚めて、とっちめら
れるという下りは単なる夢だった…てな具合にさ」
「厚かましい奴だなぁ、虫の良いこと言ってさ。しかし、そんなに奥さんがうとまし
いのかい?」
「あぁ、口うるさくて、鼻について、単に古いだけの古女房だ。年を取るほどイヤに
なる。何とかポックリ逝ってくれないもんか」
と愚痴っている所で、男はまた夢から覚めた。目の前にはその古女房が……
「あなた。今どんな夢を見てたの?」
「あ、いや、何も……夢なんか見てないよ」
「ウソ言っても駄目よ。寝言で全部聞かせてもらったわ。正直におっしゃい」
「いや、実はこれこれこうで……」
「まぁ、そんな夢を見てたの?ちっとも知らなかったわ」
「えっ……寝言で分かってたんじゃないのか?」
「誘導尋問にまんまと引っ掛かったわね。それにしても何て人でしょ!妻を冒涜する
にも程があるわ。この上は、家庭裁判所に訴えて慰謝料を巻き上げてやる。そう
ねぇ、一億円は貰わないと気が済まないわね」
「うわぁ、悪夢だけ正夢だ〜…」
と、うなされている所で目が覚めた。その顔を覗き込むように古女房の顔が……
「寝言でぜーんぶ訊いたわよぉ。慰謝料十億円むしり取ってやる〜!」
(完)
2002年04月12日16時40分10秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
どぉしたんですかね、タイガース。
これはもぉ異変やね。
龍角散飲まにゃいかんね。
〈中島みゆき「地上の星」流れる。〉
華やかな快進撃を陰で支えた一人の男がいた。
それはいったい誰?
それはね、私です。
何を隠そぉ、私が観たり聴いたりした試合の勝率は低い。
タイガースの状態如何に関わらず低い。
そらもぉ若草山か真田山、はたまた金権議員小役人共の犯罪意識並に低い。
んで、開幕前にテレビラジオの中継を封印しよぉと決めたんです。
そぉしたらご覧なさい、この大躍進ですわ。
どぉだこのやろ。
そんな私にも連勝故の気の緩みがあったんでしょぉな。
それは4月7日のスワローズ戦。
そぉっとラジオのスイッチを入れるや否やいきなりペタジーニの満塁ホームラン。
あぁ!星野監督コーチ選手御一同様、タイガースとイカ焼き以外殆ど売り目の無い阪
神グループ関係各位とその眷属の皆様、その他ファンやファンみたいな一般人の方々
に対し奉り一体なんと言うてお詫び申し上げれば良いのか。
ごめんね。
やっぱり自分で誓ぉた禁は破ったらあきませんな。
それで9、10日と知らん振りしたらまた連勝ですわ。
今や私はタイガースの命運を握る男やね。
阪神百貨店に告ぐ。
優勝したかったら商品券送りなさい。
然も無いとテレビ中継観ながらラジオ聴くぞ。
彼の不屈の魂の物語は伝説となった。
〈中島みゆき「ヘッドライトテールライト」流れる。〉
イヘン!イヘン!ほんと、タァイヘン。
2002年04月12日13時49分46秒投稿
S.S☆「やった者勝ち」☆ あや太郎
独り暮らしの老人の家へ強盗が入った。念の入った事に三人がかりで、それぞれが
刃物を持っている。間違っても失敗しないようにとの備えだ。
「おい、爺さん−−−おとなしく金を出せ」
しかし年寄りは予想外に頑強だった。
「だ、だれが虎の子の金を渡すもんか。出ていけ!警察を呼ぶぞ」
「電話線は切っておいたし、辺りには人家も無い。誰も助けになんか来ないぜ」
「ク、クソ〜…。しかし金は出さん。お前らに渡すくらいなら捨てたほうがマシだ」
「憎たらしい事を言う爺いだ。どうしてもイヤだと言うのなら代わりに命を貰うぜ」
「やれるもんならやってみろ。俺を殺したらお前らは死刑だぞ。そんな危険まで冒し
て、年寄りの小金を盗んで引き合うと思うのか!」
「そんな心配してくれなくても良いよ。この国の刑法は甘いもんだ。うっかり捕まっ
ても生活に困って止むなく盗んだと言えば情状酌量が付くし、殺す気はなかった…騒
がれて慌てて揉み合ってるうちに…って言やぁ極悪人にもならずに済む。中には社会
が悪い、環境が悪かった、と同情してくれるお人好しもいるしな。今時、滅多に死刑
にゃならねぇんだよ。要するに、やった者勝ちって訳さ、ヘヘヘヘ」
「チクショ〜…何て奴らだ。こんな極悪非道な奴らに襲われるなんて…」
「今更ボヤいても遅いよ。さぁ、金庫の鍵を出すか、命を差し出すか!」
「仕方ない。今カギを出す……」
老人が腹巻の中に手を入れ、何かを抜き出した時、思わぬ事が起きた。パン!…と
いう銃声と共に、強盗の一人が倒れたのだ。
「な、なんだ、この爺い…。何をするんだ!」
老人の手にはしっかりと小型の護身銃が握られていた。残る二人がナイフを持った
ままあとずさる。すかさず老人の銃が火を吹いた。
「ゲッ……!」
心臓を撃ち抜かれた男が崩れ落ちた。一人だけになった生き残りが呻く。
「ま、待ってくれ!ナイフは捨てる。ほらこの通りだ。命だけは助けてくれ…」
「しかしここで助けると、また仲間の復讐に来るかもしれんしなぁ」
「そ、そんな事はしねぇよ。警察に自首する。刑務所でおとなしくしてるから…」
「だが、下手な証言をされると、過剰防衛にされちまうかも」
「何も言やしねぇから助けてくれ……」
老人が一瞬考えた隙に、強盗は扉に向かって走りだした。とっさに老人の銃が火を
吹いた。また見事に心臓を撃ち抜かれて、あえなく強盗は絶命した。
「まぁこのほうが面倒が無くて良い。銃の不法所持だって心証が悪くなる。そうだ…
ちゃんと後始末をしとかないとな…」
老人は撃ち殺した強盗に近づくと、何と自分の銃を死体の手に握らせた。
「こうして指紋をしっかり付けて、強盗が持ってきた銃って事にしとこう。それを揉
み合いの末、奪い取って、つぎつぎと刃物で切りかかって来る強盗どもを無我夢中で
撃ち倒した……そういう事にしとけば、無条件で正当防衛になるだろう。ちょっとヤ
リ過ぎたような気もするが、まぁ元はと言えば身を守るためなんだからしょうがない
か。つくづく思うねぇ……世の中、本当にやった者勝ちだって」
(完)
2002年04月11日23時08分01秒投稿
S.S☆「恐竜のプロフィール」☆ あや太郎
「ご存じのように恐竜にも様々な種類がありまして、白亜紀の巨大なものは草食の巨
大種で、全長三十メートル以上。体重五十トンにもなったと見られています。一方肉
食恐竜は有名なTレックスでも全長十メートル以下、体重七、八トンで、やはり俊敏
に動き回るにはこのサイズが限界だったようです。これが海竜となりますと体長三十
五メートル、体重百トン近い肉食竜が生息しており、現在の鯨類よりも大型でした。
それに比べると、やはり地上では大きさに限界があるようですね」
「この大きな卵の化石は何ですか?」
「これは最大級の草食竜の卵です。こちらには同じ種類の恐竜の化石がありますが、
これだけの大きさですから一日の半分は水に入って過ごしていたとも言われています」
「体重はどれくらいですか?」
「普通は四十トンぐらいですが、これは四十五トンくらいありそうですね」
「特別に大きい固体なんですか?」
「いや、これはメスで体内に卵を抱えていた痕跡があります。産卵期には栄養分を蓄
えていますから、四十五トン……いや、五十トンくらいあるかも知れませんね」
「まぁ……ずいぶん大雑把ですのね。四十五トンと五十トンでは大違いですわよ。
もっと厳密に推定できないんですの?」
「これは厳しいご指摘ですね、奥さん。ちょっと細かい計算をしてみましょう。答え
が出ました。……四十五トンから四十七トンの間だと思われます」
「まだ粗い数字だわぁ。もっと正確に出せないんですか?」
「なにせ太古の化石ですし、図体がデカイですからね。一、二トンの誤差は許してく
ださいよ」
「それは無神経だわ。私たちなんか一キロ二キロの増減で一喜一憂するのよ。一トン
も二トンも誤差があるなんて失礼過ぎるわ……女性の恐竜に対して」
(完)
2002年04月10日22時31分26秒投稿
S.S「怪人2001面相」☆ あや太郎
「怪人2001面相」なる怪盗が犯行予告を各放送局に送りつけた。
「私は小説の怪人二十面相や中途半端な怪人二十一面相とはモノが違う…二千一の顔
を持つ本格派だ。二十一世紀にふさわしい世界一の怪盗である。これから日本中、世
界中のお宝を次々と盗みまくってやるから楽しみにしておきたまえ。それでは仕事に
備え、変装の練習でもしておくか……ムハハハハハ」
そして間もなくその怪人2001面相から第二のメッセージが届いた。
「この二十一世紀の世に颯爽とデビューしようと思っていが、一身上の都合で中止す
る。変装の技を磨き、連日百面相を繰り返していたら、あと少しで二千面祖という敵
に、顔が肉離れを起こした。顔面神経痛もひどく肌も化粧荒れで台無しだ。回復する
までにかなりの時間がかかりそうなので、怪盗デビューは当分見送る事にした。また
人前に出られるような顔に戻ったら再登場するとしよう。それでは諸君、その日まで
サラバだ。ムハハハハ!……あぁ、笑うと顔が痛い…」
(完)
2002年04月09日22時10分57秒投稿
S.S☆「ポパイ」☆ あや太郎
夜道を女がひとり歩いていた。
そこへ怪しげな男が立ちふさがる。
「ねえちゃん。ちょっと付き合ってくれないか?」
「だ、だれなの、あなた?近づかないでよ」
「そんな愛想ないこと言うなよ。さぁ、一緒に行こう。悪いことはしないからさ」
「わざとらしいわね。お断りよ。魂胆は分かり切ってるんだから」
「それなら逆らうとドウなるかも分かってるだろう。さぁ来い。痛い目に遭わされた
いのか!」
「腕を掴んで何するのよ。お断りったらお断りだわ」
「おっ、気の強い女だなぁ。ここは人っ気の無い裏通りだ。一対一で俺様に対抗でき
ると思ってるのか?」
人並み以上に逞しい身体の男は、凄みながらいよいよ迫ってきた。
「あなたこそ良い度胸ね。腕力で私をモノに出来ると思ってるの?」
「なにぃ…?そんな細腕で抵抗できるとでも言うのか」
「見損なわないで。こう見えても私は…女ポパイと呼ばれてるのよ」
「なに、ポパイだと?馬鹿馬鹿しい。ほうれん草を食べたら強くなるとでも言うのか」
「いいえ、ほうれん草の代わりにこれを食べるのよ……」
女はバッグから何か丸い物を取り出すと、二つ三つ四つ五つ…アッと言う間に十個
近くもそれを平らげてしまった。
「何だ、それ…。早食いで驚かそうと言うのか?」
「私の身体をよくご覧なさい……」
見ると、さっきまで中肉中背だった身体がむくむくと膨れ上がってきた。
「何だ、こりゃ…?」
男が気味悪がっていると、不意に女が気合をかけた。
「エイッ!」
その気合と共に、何とした事か、丈夫そうな太いベルトがブチンとちぎれ飛んだ。
「うーん……」
ますます力を込めると…ベリベリッ!…上から下まで衣服が破れ、何とあちこちか
ら身体の肉がはみ出して来たではないか。
「ゲッ……き、気持ち悪い……。さっき食べたのは何なんだ?」
「あれは、甘ーい甘ーいマンジュウよ。私は甘い物を食べると贅肉が爆発するの!」
「ウエ〜ッ…。マワシの緩んだ相撲取りみたい……」
襲う気力もすっかり萎え、痴漢はあたふたと逃げ去った。
あとには、日頃甘い物を控え、シェイプアップに励み、ワイヤーとコルセットと太
いベルトで締めつけられていた肉体が、怒りと甘味で爆発したまま、薄闇の中で蠢い
ていた。
(完)
2002年04月08日22時47分59秒投稿
S.S☆「教え魔」☆ あや太郎
「またあいつ、下手な事してる。あの作業はこうやるんだ。あんな風にやってちゃ、
いくら作っても不良品としてハネられちまう」
「うるさいなぁ。言ったところでしょうがないだろう。黙って見てろよ」
「黙って見てられるか。……あっ、パソコンの入力を間違えた。また書類作ってから
チェックされてやり直しだ」
「いいじゃないか。好きなだけ繰り返せば」
「そんなジレったいこと我慢できん。……こっちのレジも勘定を間違えてる。金も数
えられんのか?あとで客に文句言われてモメるのが分かりきってるのに」
「気づかないかも知れんじゃないか。知らぬが仏で上手く行くかもよ」
「あっ、また底の厚い靴を履いてあんな凸凹道を歩いてる。転ぶのは時間の問題なん
だよ。何でスニーカーを履かないんだ」
「ほっといてやれよ。好みなんだから」
「あぁ、子供がヨチヨチ歩きだした。母親は気づいてない。溝に落ちたらどうするん
だ。危ない危ない!……おっと、手を出しても届かないのか…。エーイ、じれった
い。何でこんな不便な事になっちまったんだ?」
「しょうがないじゃないか。俺たちもう死んじゃったんだから。今はあの世とこの世
の間にある待合室にいるから、生きてた世界の様子が手に取るように見えちまう。だ
けど、それは見えるだけで触れたり動かしたりは出来ないんだから仕方ないよ。潔く
諦めな」
「でもジレったいじゃないか。こうやって全部見えるのに何も出来ないなんて」
「見えてたって、それはもう過去の世界…戻れない世界さ。未練たらしい事はやめよ
うよ」
「別に未練は持っちゃいないがね。ただジレったいんだ。ああやれば上手く行くの
に、こうやれば危険を避けられるのに、そんなもどかしさの連続なもんだから」
「でも、それを教えて、指導してやっても必ず上手く行くとは限らんだろう?まして
やそれが当人の幸せに繋がるかどうかなんて、まだ神仏になってない我らには分かり
ようがないよ」
「うーん。それでも教えたくてしょうがないんだ。上手く行くか、幸せになるかどう
かよりも、ただ教えて思い通りにしたいんだ」
「何だ……それじゃ自分の勝手で言ってるだけなのか?」
「自分の勝手?なるほど、言われてみれば、俺は我を通すためにこんなイライラして
たのかな?」
「いわゆる仕切り屋とか教え魔って部類だな」
「そうか……俺には教え魔の性癖があったのか」
「教え魔と言おうか、教えンマと言おうか…」
「そうか、そりゃ気づかなかったよ。こりゃ気を付けないと煙たがられるな。危ない
とこだった」
「でも良かったじゃないか。今の内に気づいてさ。閻魔様の前に行く前に心を入れ換
えておけば、また良いお沙汰が下るかも知れん。閻魔様はそういう人種が一番嫌いだ
からな」「へぇ……そうなのかい。でもなぜ閻魔様は仕切り屋や教え魔がそんなに嫌
いなんだ?」「そりゃ簡単さ。閻魔様自身が仕切り屋だからさ。だから同類の人間を
見ているとムカムカして、ライバル意識を燃やして痛い目に合わしかねないんだ」
「そうか。じゃあ運良く天国へ行ってから、また仕切ったり教えたりしよう」
「いや、そりゃ絶対ダメた。もっと危険だぜ」
「どうしてだい?」
「だって天国には、仕切り屋と教え魔の親玉がいらっしゃるじゃないか。我々のいた
宇宙と、地獄極楽のすべてをお造りになった究極の仕切り屋がさ……」
(完)
2002年04月07日23時00分32秒投稿
1年1組 たかさごの穴子
春の遠足に行きました。
畑の「しだれ桜」と「MIHO MUSEUM」に行きました。
りりぃ先生と、仲良しの、めりけんこちゃんとまるはまちゃんと一緒に行きました。
とっても綺麗でした。とっても楽しかったです。
お天気も良かったです。
ミホミュージアムでは次の日から始まる展示のための内覧会が行われていました。
「細川家の名宝」展というのが始まるとのことで、丁度その内覧会が終わった頃行っ
たところ、細川のお殿様…つまり元首相の細川護煕さんとさかき莫山先生ををお見か
けすることができました。
しかも、内覧会が終わったということで、一般の閲覧も出来るとのこと。じっくりと
細川家の名宝を見せてもらいました。
りりぃ先生が「これはみんなの日頃の行いが良いためよ」と教えてくれました。
細川の殿さまと莫山先生に会えたのは日頃の行いやなあと思ったけれど、雨が降らな
かったのはタイヤキ君が欠席だったからだろうと、私は思いました。
それにしても、あんなに綺麗な桜が見れるのもあと80回ぐらいかなあ?
(それにしても、あの国宝の壺、オークションで売ったらなんぼほどの値がつくかな
あ?……あわわ)
2002年04月06日20時37分58秒投稿
『パラレルワールド』 ヘーパイ
通いなれぬ街で、素性も知れぬ飲み屋の扉をくぐると云う無鉄砲は止し
た方が良いだろう。それをやってしまった私は今大変な目に遭っている。
夜の心斎橋界隈は異形の者が跳梁している。魑魅魍魎の巣窟さながら
だ。そこでは白黒抹茶、小豆コーヒー柚子さくら、と色とりどりの髪の色
をした人間が見られる。彼らは平気で顔に穴をあけ、そこに光り物をぶら
下げる。服装はと云えば、テレビ東京系のアニメファンのコスプレを遥か
に越える賑やかさだ。何も知らず、そんな場違いなところに足を踏み入れ
てしまった私は逃げるように脇道に飛び込んだ。
何とか筋と名付けられているであろうその通りの幾つ目かの辻に“ゴロ
ー”の看板が掛かったショットバーを見つけた。私は何故か発作的にその
店に入っていた。
カウンターだけが有る細長い店の内部である。狭いカウンターの内側
は、やたら図体の大きな眼鏡の男が占領している。おそらくこの店のマス
ターだろう。私はそこでグラス三杯のバーボンを乾してから腰を上げた。
店を出る時になって一瞬戸惑った。出口のドアが二つ並んでいるのだ、
入り口は一つだったのに。こんな二者択一を迫られた場合、私は迷わず左
を選ぶ。イデオロギーでは無く生理的な行動なのだ。心臓の位置にも理由
があるのかも知れない。その夜も私はいつもするのと同じ様に左側のドア
を押して外に出た。その瞬間強烈な不安感が全身を圧迫した。めまいがし
て動けなくなった。だが、それはすぐおさまった。あたりを見渡したが、
特に違和感は無い様だった。ただ、振り向いて見る店の外側の扉はやはり
一つだけだった。終電間際の地下鉄とJRを乗り継いで家に帰り着き、布
団をかぶって寝た。ここまでは何の問題も無かった。
翌朝の新聞紙上に異変は起こっていた。
有ろう事か阪神タイガースが勝っていたのだ。新聞はスポーツ欄を占領
してタイガースの勝利を高らかに謳い上げていた。記事によると勝利は一
つや二つでは無く阪神は開幕以来負け知らずの六連勝なのだそうだ。
めまいを感じた私は昨夜ショットバー“ゴロー”で覚えた不安感を思い
出していた。あの時、私は選ぶべき扉を間違えて外に出たのではないの
か。ここは本来、私が住むべき世界では無いのではなかろうか。そんな考
えが脳裏をよぎった。
私が住んでいた世界と同時間帯に、幾つもの世界が別に存在している、
と云う考え方がある。その類似はしているが少しづつくい違った内容を持
つ、平行して存在する世界。あのショットバー“ゴロー”はそんな交わる
はずの無いパラレルワールドの交差点ではなかったのか。
もう一度私は紙面に目を落とした。この時確信した、ここは異空間だ
と。だって星野仙一が阪神の監督をしているのだ。バカな、星野は中日の
ものだ。打撃コーチが田淵幸一だと、これも私の世界では有り得ない。田
淵とフロントの間にはマリアナ海溝並みの溝が存在するはずだ。選手達の
名前を確かめた。
赤星?片岡?ホワイト?!浜中?沖原?誰だこいつらは。この世界のタ
イガースには和田や新庄は居ないらしい。よもや長嶋一茂がリリーフエー
スでは、と紙面を隈なく見た。さすがにそれは無かったが、代わりにすご
い物を発見した。新庄剛志がサンフランシスコジャイアンツの所属になっ
ている。オーマイゴッド!インクレディブル!
兎に角、こちらのタイガースは無敵だ。このままではえらい事になる、
オールスター明けには縦じまユニフォームの星野仙一が選手どもの手によ
って宙を舞ってしまう。するとどうなる。興奮したタイガースファン過激
派のメンバー達が夜のキタやミナミへ繰り出して、捕まえたタクシーを次
々にひっくり返し炎上させるのだ。大阪の空は紅蓮の炎に焦がされ、道頓
堀はかどわかされたカーネルサンダースの土左衛門で埋まるだろう。
その時、騒ぎの張本人であるタイガースの選手達は、と云えば全員が頭
からビールを浴びてずぶ濡れの泡まみれになるのだ。その恐ろしい光景は
まるで1985年の10月16日夜の再現ドラマさながらなのだ。
私はこんな恐ろしい世界に住む事は出来ない。早速今夜にもミナミへ行
き、名も知らぬ筋の辻にあるショットバー“ゴロー”を探し出して、今度
は間違いなく右のドアを選んで外へ出ねばならない。そして弱いタイガー
スの待つ懐かしい自分の世界へ帰るのだ。
♪鉄腕強打 幾千たび 鍛えてここに 甲子えーん♪
おおっ、浮かれた奴が早くも六甲おろしを口ずさんでいる。事態は急を
告げている、一刻の猶予もならない。急がなければ・・・。
―しまい―
2002年04月06日12時20分53秒投稿
S.S☆「知ってるッ!」☆ あや太郎
とある職場の昼飯どき……
「あら、もう食べないの?折角の愛妻弁当なのに、ずいぶん残しちゃって」
「嫌いな物が多いんだよ。冷えた焼き魚なんか苦手でねぇ」
「まぁ、魚はカルシウムが豊富だし、肉類よりも良質の蛋白が取れるのよ」
「知ってるよ。でも喉を通らないんだから仕方ないさ。さぁ、仕事仕事…」
「あら、課長もサンドイッチをずいぶん残してらっしゃるわね。サラダ菜やレタス
や、それにデザートのバナナも」
「青い物は嫌いなんだ。果物も一口くらいが良いな」
「でも、菜っぱや果物には繊維質がたっぷりで腸の働きを助けるんですよ。バナナの
炭水化物は消化吸収が良いからエネルギーに変わるのも速いですし」
「知ってるよ。女房もよく言ってる。でも無理やり詰め込んでも胃が凭れるからね。
さぁ、仕事仕事…」
「あーら、純ちゃん。あなたのランチもバランス悪いわねぇ。ラーメンとお握りとア
ンパンだなんて。炭水化物ばっかりじゃないの。それじゃ栄養が偏っちゃうわよ」
「分かってるんですけどねぇ、先輩。家で用意するのも面倒だし、ついつい手軽に買
えるものになっちゃって」
「美容にも良くないから、考えなくっちゃねぇ。あら、山下さん。またホカ弁のおか
ずを残してる。漬物だけで済ましちゃ駄目よ」
「分かってるよ。初めての店なんだが、味付けが悪くてね。とても食う気にならな
かった。だから茶漬けで済ませたって訳さ」
「野菜も玉子も海草も残しちゃって……。野菜はビタミンC、玉子は蛋白・脂肪、海
草はヨード分を補うのに最適だって言うのに」
「知ってるよ。僕だって別に嫌いじゃないけど、味付けが口に合わないんだからしょ
うがない」
「不味くても栄養があるんだから食べなくちゃ」
「栄養だけ考えて食事する気にはならないよ。僕にだって味覚はあるんだからね」
「でも栄養素は健康に不可欠だから…」
「知ってるったら!うるさいなぁ、あんたも」
どちらからともなく、その場を離れた。彼女が憮然たる表情で歩いていると、友人
のOLが見つけて話しかけた。
「どうしたの?あら、また栄養の話をして気まずくなったのね」
「ひとが折角バランスの良い食事を勧めてるのに、あの人たちったら聞いてくれない
のよ」
「何度も同じこと言うからよ。いくら学校で栄養学を習ってたと言っても、そう何回
も聞かされちゃねぇ」
「でも健康にとって栄養のバランスは何よりも大切よ。ひとが心配して言って上げて
るのに」
「まぁまぁ、カッカしないで。お茶をおごったげるから、気分を直しなさいよ。ボー
イさん、ケーキもひと皿ずつね。甘い物を食べると気が落ちつくわよ」
「本当にうちの課の人達は食事の心得が成ってないわ。あんな食べ方をしてたら次々
身体を壊す人が出て、仕事だって捗らなくなるって言うのに」
「まだ怒ってる。そんな怖い顔してたら余計話を聞いてくれないわよ」
「ほっといてよ。私は生真面目でお芝居が下手なのよ。あぁ、ムカムカする。ボーイ
さん……ケーキお代わり」
「あら、あんたもう七個目よ。そんなにケーキばかり食べちゃ太っちゃうわ。生ク
リームはカロリーが高いんだから……」
「知ってるわよ!人間は栄養計算だけじゃ生きられないのよ!」
(完)
2002年04月04日22時43分39秒投稿
こんにちは、会員番号245番です。
行ってきました、私の大好きな近藤典子先生の、トークショウです。
カリスマ主婦、収納の女神様の、お話。場所は、甲子園都ホテルです、本日4日の午
後12時から、ランチ。1時30分から、トークショウでした。
ランチは、創作フランス料理か、日本料理のいずれかを、選びます。わたしは、フ
ランス料理を選びました、生ハムのオードブルから始まって、むつ海老蛤の乗った西
洋風茶わん蒸しサフラン仕立て、鱸のポワレ、アイガモのロースト、いちごのムース、
コーヒー、パン。でした。お味は、そこそこ。
トークショウは、キッチンの収納について、先生の書いてる本や、テレビで言って
る事と、だいたい同じです。しかし実物は、綺麗な人やし、細い、わけのわからんハ
ンサムな男の子も、機械の操作にでてくるし、100円均一の品物を、使った実演と、
大変役に立つことばかり、しかし聞いたからといって、実行にうつすかは、本人次第
です。
ごはんつき、笑いあり、結束バンドのお土産つきで、税金サービス料込みで570
0円は、雀々の会6300円とくらべたら・・・・・。
2002年04月04日17時44分13秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
4月2日 ワッハ上方レッスンルーム 「第8回 桂 吉弥のお仕事です。」
出し物
●「御挨拶」 桂 吉弥
●「胴斬り」 桂 吉坊
●「東の旅・発端〜煮売屋〜七度狐」 桂 吉弥
中 入
●「佐々木裁き」 桂 千朝
●「つる」 桂 吉弥
今年になって「東の旅・発端」は4回目。
ニューフェースの佐ん吉さんは当然ですけどね。
他は米二さん米左さん今回の吉弥さんといずれもとても新人とは言い難い。
皆さんそない初心に戻らにゃならん事情がござるのか?
今更乍ら「発端、煮売屋、七度狐」はひとつの噺なんやと確認。
この後「軽業、矢橋船、宿屋町〜瘤弁慶、三十石」と続きますな。
因に ここに↑伊勢神宮に参内する噺があります。
1回だけ聴いた事があるんですけどタイトルも内容も憶えてません。
やる人が居らんのは然程面白い噺では無いという事ですな。
「七度狐」のべちょたれ雑炊の場面。
「藁みたいなもんやて。笑わしよんな。」
吉弥さんもこのギャグを使ぉたはりました。
しかも然して受けなんだ。
止めにゃいかんね。
しかし、流石にこれだけ長いと疲れますな。
吉弥さんも最後の方がちょっと息切れ気味。
おそらく後悔の念がちらちらと…。
米二さんも言うたはりました。
もぉ二度とやりません、て。
古典落語数多有る中で一際惨然と輝く名作…と、一部で評判の「つる」。
その名前の因縁を聞かせに訪ねる友達の職業は大工ですな。
が、どぉも鉋を掛けてる手に力が入って無い。
どんな上等の板でもあない撫でるよぉにはいきません。
槌で刃を調節する手付きもかなり怪しい。
さては吉弥さん、鉋掛けた事無いな?
それやったらそれで米朝師匠とか吉朝さんの高座をよぉ観にゃいけませんな。
所作はもちろん、それと連動した台詞の抑揚も勉強していただきたい。
決して疎かにしてええよぉな些末な事や無いですもんね。
千朝さんの「佐々木裁き」。
実を言いますと、私この噺もぉひとつ好きやありません。
主人公の四郎吉がどぉも気に食わんのですな。
大人嬲りするにしても「鋳掛け屋」とか「馬の田楽」の子供みたいな可愛気が無い。
そらもぉ往年の上岡少年も斯くやと思わせる程ですな。
ほんま嫌な奴っちゃ…いや、四郎吉の方ですけどね。
「胴斬り」の冒頭に登場人物が唄う場面があります。
♪赤襟さんでは年期が長い
婀な年増にゃ間夫がある
もちろん吉坊さんも唄いましたけど、あの声と容姿ですからね。
ほとんど遊び人の中学生でした。
けど、使いよぉによったら強力な武器になりますな。
吉弥さんが応募していたワールドカップ会場ボランティア。
見事採用と相成って配置が「北スタンド一次廃棄」なんやそぉです。
具体的な内容は分からんのですけど、関連の情報から推察するにどぉもスタジアム内
の仕事や無しに場外での持ち物検査係らしい。
応募の動機が只で試合を観たいというもんなんで、かなりがっかりしたはりました。
そこで手段変更。
今コカ・コーラに付いてるシールを集めたらチケットが当る…可能性があるらしい。
そぉいう事情やったら協力しましょ…と言いたいけどコーラは嫌いです。
精々飲み捲って肥満してがんばっていただきましょ。
2002年04月04日17時43分35秒投稿
S.S☆「眠り薬」☆ あや太郎
「どうしたんだい?顔色が良くないよ」
「近頃よく眠れなくてねぇ。頭が痛いやら、重いやら」
「そりゃイケない。睡眠薬でも飲んでグッスリ寝といたほうがいいよ」
「色々飲みすぎて何を飲んでも効かないんだ」
「それなら、僕が持ってるのを分けてやろう。ほら、引き出しの奥にこんなに入って
る」「なるほど、たくさん有るなぁ」
「病院で山ほど出してくれるからね、結局ほとんど余っちゃうんだ」
「大抵そうだよな。あれ?でもここにあるのは胃の薬や風邪薬ばっかりだよ」
「だけど、睡眠薬代わりにもなるはずだぜ。こっちの戸棚にも入ってるよ」
「どれどれ……こっちは二日酔いの薬に便秘薬に消化剤だ。どこにも睡眠薬なんか無
いじゃないか」
「いや、ぜんぶ眠り薬だよ。それもかなり年季の入ったヤツばかりだ」
「年季?年季の入った薬って、どんなの?」
「長〜いこと引き出しや戸棚に【眠っていた】薬さ。並の睡眠薬よりよっぽど効き目
がある思うよ」
(完)
2002年04月03日22時28分19秒投稿
下駄屋の喜六
十数年ぶり、久しぶりに株を買っちゃった。キャピタルゲインで大儲けしよう、そん
なさもしいスケベ根性で買ったのではありません。一株主としてこの企業の行く末を
凝視し、社会の一員としての企業のあるべき姿を株主総会で語ってみよう・・・これ
でもないんやな。
本当はね、株主優待券が欲しかっただけ。ここは外食産業でありまして、半年に一度
優待券が送られてくるのであります。やっぱりスケベ根性やろか。
無欲の気持ちが思わぬ好結果を招くってよくあること。ところがのう、買った途端に
株価は下落の一途なんじゃ〜。やはり無意識のうちの欲がワザしよるんかいのう〜。
あ〜あ、辛いのう〜、横山。今はどこで何をしておるんじゃ〜横山。お前もスケベ
やったんじゃのう〜横山のイサム〜。
2002年04月03日01時07分42秒投稿
S.S☆「回転ドア」☆ あや太郎
「恥ずかしいんですけれど、実はわたくし、回転ドアが通れないんです」
「ほぉ、それはご不便ですなぁ。いや、たまにはおられるんですよ。決してお気にな
さらないように」
「どんな練習をすればくぐり抜けられるようになるでしょうか?」
「まぁ、焦らないで。またゆっくりとコツをお教えしましょう」
顔を赤らめながら上品な婦人は心理療法士のもとを辞した。
あとに残った療法士もなぜか顔を紅潮させていた。そして怪しげな笑みを浮かべ
た。
「いい話を聞いた。これは使えるな。あの婆さんも近頃渋くなって来たし、ぼちぼち
まとまった金を巻き上げてトンずらするか…」
婦人は某百貨店の社長夫人だった。もともと気の弱い質で、夫の出世に伴い心労も
重なったせいか、近年精神的なストレスが溜まって、社交界の噂を頼りにカリスマ的
と言われるこのセラピストのもとへ通院していた。しかし無免許とも噂される療法士
の腕では効果を上げるのも所詮は初期症状の改善程度……つまり気休めの話し相手に
なるのが関の山で、深刻な悩みとなると大した成果は上げられるはずもない。それに
も薄々気づかれ出したか、社交界の客も目減りする一方で、赤字もかなりの額にの
ぼっていた。
「借金を返して、高飛びするなり商売替えするなりせんとイカン時期だ。幸い騙され
やすいあの婆さんには、上手く健康診断を受けさせ、大型生命保険を掛けておいた。
なるべく早くポックリ逝ってもらって、荒稼ぎさせてもらおう」
ついさっき耳にした「回転ドア」の弱点を、療法士は早速悪用する事にした。
「奥さん−−さぁ、試しにこの回転ドアから入ってみましょうよ」
婦人の夫が経営するデパートの入口で、セラピストは誘った。
「でも、わたし、上手く通れないんですのよ。いつも恥をかいてしまうからイヤなん
です」
「何をおっしゃってるんですか。折角ご主人が社長をなさっているデパートに来てい
るんですよ。それなのに、中にも入れないだなんて、そのほうが恥ずかしいじゃあり
ませんか。ご主人の為にも、さぁくぐってみましょう」
背を押されて婦人はおずおずと回転ドアの中へと入ってゆく。しかし何としたこと
か、婦人の身体はまるで絡め捕られたように回転ドアに張りつき、クルリと一回転し
て、また建物の外へと出てきてしまった。
「ほら、人が見て笑ってる。あぁ、恥ずかしいったら有りゃしない。わたしもうイヤ
だわ」
「それくらいで挫けてどうするんです。そこで諦めるほうが恥ずかしいですよ。
さぁ、もう一度、入った入った……」
しかし何度やっても婦人の身体は回転ドアの中を一周して、きっちりと外に押し出
されてくる。大汗をかき苦闘する婦人を眺めながら、しかし療法士は笑いをかみ殺し
ていた。「なるほど、このままでは何回やっても同じのようだ。しかし練習すれば必
ず上手く通り抜けられるようになりますよ」
それでは稽古場へ行きましょうか……と尤もらしい事を言いながら、療法士は婦人
を人けのない裏通りのビル工事現場へと連れていった。
「今日は工事も休みです。誰も見ていないから何度失敗しても笑う人なんか居やしま
せん。ここで思う存分練習して、是非とも回転ドアをくぐれるようになりましょう。
なぁに、周囲の眼を気にせずリラックスしてやれば、すぐ出きるようになりますよ。
今まで出来なかったのは、体裁やプレッシャーのせいだったんですから」
「そう言われてみると、何だか出来そうな気がしてきました。そうですよね……回転
ドアをくぐるぐらいの事、誰だって出来ますよね。じゃあ私、練習してみますわ」
「その意気です。さぁやってみましょう。簡単なもんですよ」
簡単に出来なくても良い……まぐれで一度でも成功してくれれば……そう腹のなか
で呟きながら療法士は婦人の背中を軽く押した。
婦人が回転ドアに吸い込まれて行く。ゆっくりドアが廻るのを療法士は固唾を飲ん
で見守った。それもその筈……このドアの向こう側にはまだ床が張られておらず、地
下三階まで素通しになっているのだ。その上に周囲と同じような色の壁紙を張り、
ちゃんと床があるように偽装しておいた。言わば落とし穴である。
今日は明かりも消えているので中は暗い。回転ドアをくぐり抜ける事に専念している
婦人には中の様子も分からないだろう。上手く回転ドアを通り抜け、一歩建物内に踏
み入れた途端、彼女の身体はあの世まで急降下する寸法である。
クルリ…とドアが廻って婦人の姿が見えなくなった。いきなり成功か……と思った
ら、暗い屋内から間もなく婦人の姿が現れた。やはりガラス戸にへばりつくように、
こちら側へと押し返されてきた。
「あらん……やっぱり駄目だわ。ちゃんと抜け出たつもりだったのに」
「やれやれ……」
当てが外れたのと落とし穴に気づかれてない様子に安心したのとで苦笑が出た。し
かし楽しみはこれからだ。繰り返し試している間には必ず向こうに出る時が来る。
「ちょっとスピードを上げてみましょうか」
婦人が回転ドアに入るや否や、療法士はドアの一方を軽く突いて勢いを付けた。
「アララララ……おぉ、危ない。転びそうになったわ」
却って回転軸に巻き込まれるような形で、婦人は勢い良くこちら側へと飛び出して
来てしまった。
「これも駄目か…。じゃ今度は思い切りゆっくり廻ってみましょう」
考えれば、このほうが成功率が高いはずだ。ゆっくりタイミングを計ってドアから
出られるのだから。
「あらまぁ……やっぱり駄目ねぇ。今踏み出そうと思った瞬間にまたドアに巻き込ま
れてる。不思議だわ。何故なのかしら?」
……お前が鈍感だからだ!……
と腹のなかで毒づきながら、顔はもちろん笑みを絶やさない。嫌気が差して帰られ
たら計画が台無しだ。
「じゃあまた普通の速度で何度か繰り返してみましょう。そうすれば今度こそ……」
奈落の底へと落ちて行くはずだ。療法士は根気よく婦人の後押しを繰り返した。
しかし何の加減か、幾度繰り返しても婦人の身体はこちら側へ戻ってくる。
「あら、駄目だわ。何度やっても……あらまあ……ホホホホ……あぁおかしい」
機嫌良く続けてくれるのは結構だが、小一時間もやっていると、さすがの療法士も
ジレて来た。それにこれだけ長引くと、幾ら気の長いおばさんでも飽きるか諦めるか
するに決まっている。ついに療法士は強行手段に出る事にした。
「そうだ。今度は私が一緒に回転ドアに入り、良いタイミングであなたを押しましょ
う。そうすれば確実に向こう側に行けますよ。ゆっくりとやれば転ぶ心配もないし、
大丈夫ですったら。そうしましょうそうしましょう……」
療法士は殺気を笑顔に隠し、猫なで声で婦人をエスコートした。
「お手数かけて申し訳ありませんねぇ」
「いえいえ、最後まで責任を持つというのが私のモットーですからな」
もはや笑顔は引き攣りかけていた。緊張感も集中力も限界に近づいている。
療法士は婦人に寄り添い狭いドアとドアの間にもぐり込むと、ゆっくり慎重にドア
を回転させた。
「二人入ると何だか廻りにくいですわねぇ…」
何を思ったのか、今度は婦人のほうが強くドアを押そうと前進した。
「あああ、急いじゃ駄目だ。あぶない!……」
ドアはすでに半回転していた。もう婦人を中に突き出すタイミングだ。療法士が慌
てて婦人の背を押そうとした時、彼女の身体はもう「帰り」の方角へ向いていた。ド
ンと突かれた婦人は屋内ではなくドアに押しつけられ、療法士だけが回転ドアの遠心
力で一歩二歩屋内へ踏み込んでいた。
ベリッ……。予想どおりの音がして、療法士の姿が消えた。反動で屋外へ転がり出
た婦人の前に、もうあの療法士が戻ってくる事はなかった。
「どうしたんですか?ここは工事中で危険なんですけど……」
巡回中の警備員は事態を察知すると慌てて警察に通報した。事情聴取を受けた婦人
は涙ながらに、しみじみと同じ言葉を繰り返していた。
「あの人は本当に立派な療法士でした。言葉通り最後まで私を救って下さった…」
(完)
2002年04月02日22時46分59秒投稿
今日は、亀虫ぷっぷです。
3月29日 太融寺「千朝落語を聴く会」
出し物
●「鷺取り」 桂 紅雀
●「江戸荒物」 桂 千朝
●「つぼ算」 桂 米二
●「高津の富」 桂 千朝
「高津の富」は境内での騒き(ぞめき)から落ちまで淀み無い流れ。
辰ノ八百五十七番を持ってる男の思惑の場面。
夢枕に立った神さんの声が
「高津の〜二番は〜お前に〜やる。
楽しみに〜待ってぇ。待ってぇ。待ってぇ。待ってぇ。」
木霊し乍らフェードアウト。
新町の馴染みの女…これがなかなか色っぽい…との絡み(あ、やらし)では
「一杯飲んで、おいちょっと寝よか。」
言い乍ら手付きが抱く形に(わ、やらし)…。
其処此処にちりばめられた細かいギャグも秀逸でした。
迫力の点で六代目とか枝雀さんには及ばんよぉに思います。
が、中だるみせず客の集中力を切らす事無く引っ張って行く構成力と豊富な表現力、
なにより毎回期待を裏切らん安定感をベースにまだまだ上昇しそぉですな。
先日の染左さんに続いての「江戸荒物」。
やっぱり近年この噺はあんまり掛けられて無いんですな。
昔はよぉ聴いたんですけどね。
特に笑福亭一門の人がよぉやったはったらしい。
それこそ「江戸荒物」をやらずして笑福亭に非ずっちゅう位やったそぉですな。
千朝さんは例の方言の枕でオーソドックスに。
が、そこはこの人の事です。
今時の言葉に因んだもんも盛り込んで古臭さを排除したはったのは流石でした。
今回は後の大ネタの事もあってか短縮版。
炭屋のおやっさんはカットされてました。
面白い場面なんですけどね。
ラス前のほんまもんの江戸っ子との絡みの後に
「なんでこの近所にあんなんが住んでるねん。おかしいやろ。」
ほんまやね。
風邪が抜け切らん米二さん。
言葉の合間にぐすぐす言うたはりました。
間の長い処ではまだしも、瀬戸物屋の番頭がパニックになる場面では喋らにゃならん
わ鼻すすらにゃならんわで忙しいのなんの。
「親に電報打ってくれ。息子はもぉ長ぉない、て…。」
この台詞なんか真に迫ってましたな。
紅雀さんの「鷺取り」も短縮版。
天王寺さんに駆け付ける群集の俄の部分が削除されました。
演者さん独自の工夫が聴けるんで楽しみな処やのにね。
その替わり途中に仕掛けが…。
五重の塔の九輪に掴まって言いますな。
「捕らせるだけ捕らしといてこんな事するやなんて、詐欺に遭ぉたみたいや。」
下座の太鼓がドンドォン。
「まだ下げやおませんで。」
爆笑。
けど二回は効かんよ。
2002年04月02日12時04分57秒投稿
滅多に新聞を読まない私が午後10時を過ぎてから朝刊を探しまくった。
一言掲示板に書かれた伝言の文字に 「今日はエプリルフールやで〜」
と思いつつも気が付けば A新聞 を 前からめくっていた。
おまけにラインマーカーを手にして総合面なんかを読んでいたりするもんだから
ファン心理というのは、本当に不思議だ。広告には目を通していたんだけど。
滅多に切り抜きをしない私が2年前の同じ頃の記事を探していた。
「芝居小屋から復活かぁ?」 と、怪しげに証拠物件として置いておいたのに
なぜかどこかへいってしまうのだからうちの家はミステリーハウスだ。
アフリカには 「年寄りが1人死ぬのは図書館が1つなくなったのと同じ」
ということわざがあるらしい。確かサンコンさんの言葉だったと思うけど
明日は、ケニアに行ってみよ〜っと、・・・コーヒーを飲みに!
P.S
髪をべりー・ショートにしました。
まるびー。
2002年04月01日23時35分53秒投稿
S.S☆「アリとキリギリス」☆ あや太郎
キリギリスは春夏秋と楽しく遊び暮らし、冬を迎えた。
アリは暑い夏もコツコツと働き、秋には蓄え、そして冬を迎えた。
ある雪の日、遊び人のキリギリスと働き者のアリがばったり出会った。
「よぉ、アリ君。今年の秋は豊作だったらしいね。冬の食糧備蓄も怠りなしだろうな」
「あぁ、これで一冬ぐらいなら遊んで暮らせるよ。それに引き換えキミはどうするん
だい、キリギリス君?遊んでばかりいて蓄えなんかないんじゃないのか」
「うん、まるで無いよ。だって必要ないもの」
「な、なぜだ?…ハハーン、さてはボクの蓄えを狙ってるな?そうは行かんぞ」
「ヤだねぇ。だから貧乏人はイヤなんだよ。俺には食べ物なんか必要ないのさ」
そりゃどうして?」
「だって、俺達、一年で寿命が来るように出来てるんだもん。それにさっさと卵も産
んで、この後する用事もないんだよ」
「そうか。それであんなに退廃的な人生を送ってたのか。その点、僕らは計画的かつ
建設的に生きてるなぁ。ちゃんと将来のために食料を蓄えて…」
「ふん。自分で食べられるのなら、まだ良いけどさ」
「ど、どういう意味だ?」
「忘れたのか?キミら働きアリは大体、半年で寿命が尽きるんだぜ。しかも子供を生
むのは女王アリだけだろ。せっせと貯めた食べ物も誰が食べるのかしれたもんじゃな
い。そんな読めない将来のために、身を粉にして働き続けただなんて、気の毒にも程
があるよなぁ、全く」
「クソ〜〜、考えればそうだ。何と、僕ら働きアリは他人のために命をすり減らし、
働き通したのか。ム、無念だ〜〜・・・コトッ」
余りの落胆に、働き者のアリ達は次々と憤死してしまった。
それを見届けながら、キリギリスはようやく冷たい微笑を見せた。
「馬鹿だねぇ。他人と言ったって、全員もとは同じ女王アリから生まれた兄弟じゃな
いか。その未来の繁栄に貢献したって損は無いさ。ただ、ほとんどのアリが自分の子
孫を残せないってのは張り合いがないだろうけどな。その点、俺達はあちこちで適当
に遊びながら子供の十匹や二十匹は残していける。結構な身の上じゃないか。しかも
子孫のために遺産を残すなんて野暮はしない。みんな独立独歩で成長していくんだか
ら。ホント、アリやハチみたいな連中は、やたらに子孫を増やして、何を目指そうっ
てんだい。数だけ増えたってしょうがないだろうに。またそれを真似て、やたに子孫
繁栄を願ってる人間どもも妙な生き物だ。そんなに増えてどうする気なんだ?非効率
きわまりないねぇ」
賢い遊び人・キリギリスは小首を傾げながら、潔く木枯らしの中に姿を消した。
――――――――完―――――――
2002年04月01日22時03分16秒投稿
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