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2002年01月01日〜15日

S.S☆「幸せな時間」☆     あや太郎

 男はかねがね思っていた。
「幸せな日々や楽しい時間はアッと言う間に過ぎてしまうのに、苦しい時間や不愉快
な時間はちっとも進まない。何故なんだろう」
 人に言えば必ずこんな答えが返ってくる。
「それは気の持ち様さ。嫌な時間は長く感じるし、楽しい時間は常に物足りない。長
く感じようが短く感じようが、人に与えられた時間は同じなのさ。これほど公平なモ
ノはほかに又と無い」と。
「時間は誰に対しても公平だと?」
 フン、と男は冷たく笑った。
「何が公平だ。長く感じたり短く感じたりする事自体、不公平じゃないか。それも楽
しい幸せな時間が長く感じられるのなら良い。嫌な辛い時間のほうが長く感じてしま
うというのは最高の不公平、最大級の理不尽じゃないか」
 時間は万人に対して平等である……そんなお為ごかしなんぞ、そこそこ運の良いそ
こそこ順調に暮らして来た「甘ちゃん」の戯言だ。男は年齢を重ね経験を積むごと
に、その確信を強めていった。
 やがて男は仕事を持たぬ自由の身となった。悠悠自適の定年生活ではない。不景気
続きで早々と職を失ったのだ。儲からない苦労ばかり多そうな再就職の道を捨て、男
は流浪生活を選んだ。ギリギリ食いつなげれば良い・・・いや、たとえ食えなくなっ
ても良かった。
 報われぬ「長い長い人生」を続けるより、納得の行く「野垂れ死に」を選んだのだ。
 様々な人々に出会った。何かを教えてくれそうな人を捜した。
 まるで古来の雲水や禅僧のように、各地の寺や道場や、ゼミやカルチャーセンター
まで巡り歩いた。会う人ごとに問うたのは、若い頃から抱き続けたあの大疑問だった。
「なぜ幸せな時間は短く、苦しい時間は長いのか?」
 しかし答えは変わらなかった。
「そう感じるだけである。錯覚にすぎない。時間はすべての人間に平等で・・・」
 何度か殴り倒して警察沙汰になりかけた事もあった。
 しかし何年間かそんなやり取りを繰り返す内、男はもう腹が立たなくなっていた。
無論、ワンパターンの答えに納得したからではない。答えは人間の英知を超えたもの
であろうと気づいたからだ。異口同音の答えが正しい事もある。しかし常に正しいと
は限らない。
少なくとも、皆が本気で考えている問題なら、異論逆説が出て当然だ。しかし男が門
を叩き教えを請うた限りでは、反論も新説も見当たらなかった。第一、本当に皆が
知っている分かりきった「真理」なら、男自身にも呑み込めるはずである。
「結局…誰も知らないんだ」
 答えや真理を知らないから、手垢のついた決まり文句やお説教を弄してお茶を濁す
のだ。
 しかしそう気づいても別段腹はたたなかった。また、世間の訳知り顔の連中を見下
しながら勝ち誇った気持ちもはならなかった。
・・・自分も「知らない」のだから。
「やっぱり、神のみぞ知る、か」
 男は真理探究の旅を終えることにした。そして目的を無くし、窮乏の暮らしに痛め
つけられてきた肉体は間もなく命の火を消した。男の問いかけは終わった。少なくと
も「この世に」おいては。
 ――――――――――
 男は違う世界に居た。
 およそ「質感」の無い光景・・・男はすぐにそこが「あの世」だと気づいた。
 「魂」とおぼしきモノたちが周囲を漂い彷徨い、時に呻いていた。
自分が「どこに」来たのか分からないのだろう。あるいは「どこに」来て「どこに」
居るのかをた認めたくない魂たちなのだろう。
 対照的に、男は冷めた心で自分の現在位置を認識していた。
 そして、これから「やるべき事」もちゃんと自覚していた。
 そんな目的意識が男を冷静な魂に仕立て上げたのだろう。
 男は早速「旅」を再開した。言わずと知れた「真理究明」の旅だ。
 人間が生身でいる世界では知り得ない「謎」・・・時間感覚の秘密について問いた
だすのだ。
 当初は、先立ってこちらの世界に来た先輩の魂たちに尋ねて回った。
 しかし彼らの答えは熱意の無い曖昧なモノばかりだった。
「今更、生きてた頃の事なんか、どうでも良いじゃないか。あんたも体感してるだろ
う?・・・この『あの世』じゃ、時間の感覚なんてどうにでもなる。文字通り感じ方
次第さ。愉しい、幸せだ、と思えば、いつまでも、いくらでも愉しくなれるし、苦し
い、辛いと思えば幾らでも悲劇の主人公になれる。まぁ、わざわざ苦痛や悲しみを感
じたいなんて奴は、罪の意識に浸るのが好きな偽善者か、マゾだけだがね。ダハハハハ」
ほとんどがこの調子で、話に乗ってくれない。
「ひょっとして…真相をバラしてはイケないという不文律でもあるのでは…?」
「そんな窮屈な決まりごとなんて聞いたことはないぞ。第一、魂になってしまえば誰
の心もお見通しのスケスケだ。ウソをつくほうが難しい。知ってることを隠しとおす
なんて土台無理だよ、ナハハハハ」
 現世では楽天的で、人一倍面白おかしく人生を送った先輩は、屈託無く笑いなが
ら、また何か面白い遊びを探しに、どこへともなくフワフワと漂っていった。
「誰か・・・誰か・・・俺と同じような疑問を持った事のある奴はいないものか?」
 男は魂の溜まり場を見つけるたびに、そんな質問を繰り返した。
「そう言われてみれば、時間の感じ方をずいぶん不合理なものだと感じた事があっ
たっけ」
 苦労多き人生だったと言う魂がそう答えた。
「しかしこっちの世界で気楽に心配事も無く暮らしてる内に皆そんな矛盾や恨み言な
んか忘れてしまうんだよ。長く平和が続くと戦争体験だって風化しちまう。昔の苦労
話だって恨みだって、いずれは消えてしまう。だから皆そんな不合理や不公平を気に
しなくなっちまうのさ。人の心なんて、そんなモンだよ」
「確かにね」
 改めて言われると、それが自然の成り行きかも知れない。幸福と不幸のバランスも
一種の「損得勘定」なのだろう。幸福感と不幸感のバランスなら尚更曖昧なものだか
ら、やがて誰も損得勘定さえしなくなる。そしてこの男もいずれは・・・。
「どっちでも良いやって気分になるほか無いのか。確かにそうかも知れないし、それ
で気楽かも知れない。しかし俺にはこだわりがある」
 いずれ忘れてしまうと言うのなら、尚更忘れない内に解決しておきたい「謎」では
ないか。男は気持ちを引き締め、妥協と諦めをキツく戒めつつ、「上」へと向かった。
 そこには、あの世とこの世を管轄する所謂神様の住む天界があるはずなのだ。
 男は例のごとく長い辛い旅を重ねて、ようやく天界にたどり着いた。
 天界の門の前に立つと、優しげな老人姿の崇高なる存在が現れ、微笑みながら話し
掛けてきた。
「よくここまでやって来た。並みの魂がこの高みにまで昇りつくのは大抵のことでは
ない。よほど重要な目的があっての上であろう。そのほうの苦労に免じて、その願い
を叶えてやろう。悪事ででもない限り何でも叶えてやるぞ」
 神様は好意的で親切だった。男は感激しながら長年来の大疑問を問いただした。
「神様、教えてください。なぜ幸せな愉しい時間は短く、辛く苦しい時間は長いので
しょうか?」
 長年の思いをぶつけるように男は激しく、しかし真摯に尋ねた。
しかしその途端、神様の顔が曇った。答えは沈黙の中にあった。
「ど、どうなさったんですか、神様?何か御気に障るような事でもありましたか?願
いを叶えてくださると仰ったので、質問させてもらったのですが…」
「その質問には答えたくない」
「答え…たくない?ハテ、それはまたどうして?」
「その理由も…答えがたい」
 神様はまだ固い表情だった。
「何故なんですか?それが悪事になるんでしょうか?それとも天界の法律に反すると
でも?」
「天界の定めはわしが作るものじゃ。よって、わしが許せば、それは違法ではない」
「それでは一体なぜ…?」
「どうしても、言わせたいのか?」
「ハイ。どうしても聞かせてもらわねば納得できません」
「聞けば・・・納得するのじゃな?」
「ハイ。納得できると思います」
「納得する…と約束せよ。そして一切誰にも口外せぬと誓え」
「そ、そんな約束を?…何故なんです?…そしてもし約束を破ったら?」
「魂を八つ裂きにしてくれる。つまりこの世にもあの世にも痕跡留めず消し去ってや
るという事だ」
「ずいぶん物騒な…。しかしどうしても聞きたいし、や、約束します」
「それなら教えてやろう。…実を言うと、人間どもの楽しい時間は、実際に苦しい時
間よりもだいぶん短くなっておるのだ」
「それは……もともと辛い事のほうが多いと言う事ですか?」
「そうではない。楽しい時間と苦しい時間が全く同じ長さだとしても、楽しく幸せだ
とと感じる時間は何割か少なくなるように設定されておる。これを我々の専門用語で
は『天引き』と呼んでおる」
「て、天引き!?…一体何のために・・・それに一体誰が?」
「それは宇宙と人間が始まって以来の取り決めじゃ。いやはや、人間は欲深い。当初
は一定の寿命だけ生きられれば満足だと言っておったくせに、暫くすると、やれ寿命
を延ばせ、やれ生まれ変わらせろと注文が増え放題。全く、このドラ息子どもめが。
宇宙を一つ経営するだけでも大変なのに、あの世を併設し、それにも飽きたら、また
別な世界を作れと言い出しおった。全くの話、創るほうはてんてこ舞いじゃ。まぁそ
んな訳で、天引きした快楽や幸福は宇宙拡張のエネルギー源として活用されておる。
言わば先行投資じゃな。まぁそういう訳じゃ。誰が天引きしておるかなどという野暮
な質問はするなよ」
「は、はい。大体の事情は分かりました。多少、幸福感や快楽が減っても将来のため
と思えば納得できます。ただ、その事情を何故口外してはイケないんですか?情報公
開して皆の納得と協力を得たほうが合理的だと思うのですが」
「ふむ。鋭い所を突いてきたな。…仕方が無い。そのしつこさに免じてお前にだけ教
えてやろう。実は、先行投資として皆から集めた天引き分の幸福や快楽を…将来きち
んと利益還元できるメドが立たんのじゃ」
「と言いますと、天引きされた分は不良債権に?」
「そうだ。そこで一所懸命、返済の引き延ばしをしていると言う訳じゃ」
「な、なんと。それでは絶望的ではないですか」
「いや、引き伸ばし戦術も馬鹿にならんぞ。なにせ証文無しの前借り借金じゃから
な。皆、追々と忘れてゆく。幸い人間には、嫌な事をわすれたり、過去を美化したり
する特性が備わっておる。だからそのうち何となく借金はチャラになるという算段じゃ」
「なんだか割り切れないなぁ。どうも我々人間が損してるような気がする。すると逆
に得してるヤツもいる訳か。何だか不公平だなぁ多々」
「細かい事を言うではない。この大宇宙と、ありとあらゆる世界を上手く運行するね
事が何より大切じゃ、さぁ、いつまでも天界に居ると疲れるぞ。そろそろ人間の魂の
世界に戻って、ゆっくり休むが良い。人並み以上に苦労して来たのだから。何百年か
のんびり癖しておれば心も安らぐし細かい事も忘れられようぞるさぁさ、早く魂を休
ませなさい」
「そうします。それでは神様、お休みなさい…」
長い真理探究の旅に終止符を打ち、男はようやく『こだわり』を捨て、下の世界へ
戻って行った。
神様もホッとしたように天界の門を閉じ、静かに独り言を垂れ賜うた。
「やはり宇宙を運行するのは大変な仕事じゃ。気苦労が絶えんわい。だから少しぐら
いならバチも当たるまい・・・ピンハネしたってな」
         ――――――完――――

2002年01月15日23時09分58秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

JASが創立30周年記念に募集した「マイスウィートメッセージ」。
遠距離にいる最愛の人に向けて、面と向かっては気恥ずかしくて言えない本心を綴っ
た短文やそぉです。

入選作のひとつ。
2年前に亡くした夫に宛てて
〈私を一番好きだった。そしてあなたが一番好きなのに…逢いたい。〉
そこいらに転がってる歌の文句か広告コピーみたいでもぉひとつ感心しませんな。

御要望に応えてひょこっと逢いに来たりしてね。
思わぬ展開に彼女の脳裏に一曲の歌が流れますな。
こぉいう時には大概訳の分からん事が起こるもんです。
布施明「愛は不死鳥」…いや、ガムの「愛は陽炎」…まてよ、浅丘ルリ子の「愛の化
石」がええかな?島倉千代子の「愛のさざなみ」も捨て難いな。
いっそ、ぴんから兄弟「女のみち」なんかひねりが効いてておつなもんですな。
ま、それぞれお好きなもん選んでいただいたら結構です。

もぉひとつ素直なやつ。
〈おいしいごはん、毎日ありがとう。〉
て、これくらい言葉で言えんかえ?

2002年01月15日18時31分20秒投稿

S.S☆「戦場に降りた神々」☆     あや太郎

 砂漠の戦場には、この上ない緊張感が張り詰めていた。
 今しも第三次世界大戦が勃発しようとしていたのである。
 二十一世紀の初っ端に起きたあのテロ惨事が尾を引き、こじれ、ついに世界を二分
する大戦争に発展しかけていた、
 新南北戦争。貧富の差、宗教の違い、ありとあらゆる民族対立と利害関係が、やは
りありとあらゆる努力にも関わらず真っ向からぶつかり合い、逃げ道の無い袋小路で
正面衝突する破目に陥ってしまった。
 砂漠で睨み合っているのは、世界を仕切ろうと言うあの超大国の最新兵器と精鋭部
隊。対するは「南」を代表する百戦錬磨のゲリラ戦士たちだった。広大な砂漠を二分
する兵士の数は無慮数百万・・・そして、ひとたび戦いの端緒が切られれば、世界の
南と北に控える何億人の後方部隊が一斉に火の手を上げるはずである。
 ほとんど自動化された無人放送施設が砂漠の各所に敷設されテレビカメラとマイク
をつけっぱなしにしている。歴史的瞬間を見物したいが為か、それとも人類に自らの
最期を覚悟させる為か…。
「何かこの危機を避ける手立ては無いものか?」
「人類を救う神はやはり居ないのか!」
 絶望と僅かな奇跡を思い描きながら推移を見守る現場の兵士たちと世界中の視聴者
の眼前に、しかしその時、何かを予感させる光景が現出した。
 一人のみすぼらしいナリをした老人が、ヨボヨボと戦場の真ん真ん中に現れたのだ。
 いつ銃弾が飛び交うか、いつ砲撃や空爆が始まるか分からない張り詰めた空気の中を、
老人は飄々と、何事も無いかのように戦場の中央へ歩み出ていた。
 気おされた兵士や司令官たちが発砲を躊躇している時、まるで太古の時代から約束
されていたように老人の姿が黄金の光に包まれた。
 何かを語っていた。何かを唱えていた。それはいつしか大音声となり、広い砂漠
じゅうに響き渡っていた。
「アッラー・アクバル…神は偉大なり!」
 先ずイスラムの民たちが平伏した。それはもうまるで疑う余地の無い威光と威風に
打ちのめされた姿であった。
「神は今、光臨賜った。主よ、我々を導きたまえ…エーメン!」
 何と「北半球代表」の先進国軍までが武器を投げ捨てひざまずいた。
 日ごろ神や仏を忘れかけていた若者までが、抗う術も持たず神の威光に打たれていた。
 世界中でテレビやインターネットが画面に食い入る各民族、各市民のほとんどが、
戦場に、それぞれの神の姿、神の声を見い出し、ひたすら荘厳さと平和の再来に涙していた。 
 その頃、日本の放送局では・・・
「局長……あれは一体何だったんですか。局のほうには視聴者からの問い合わせが殺
到していますよ」
「そうだろうな。実は一部の政治家、マスコミ陣にだけ知らされていた極秘中の極秘
なんだが・・・某国際研究機関が、こういう場合に備えて開発していた『人工テレパ
ス』なんだよ」
「テレパスと言うと、テレパシーか何かの…?」
「そうだ。人工的に人間の脳に情報を送り、幻覚や幻聴を誘発させる装置だ。普通な
ら道徳的に非難される行為だが、今回のように人類の存亡が懸かっている場合には仕
方が無い。
非常手段として実行するという内々の通知が各国各所に届いてはいたんだが、実に見
事な効果を発揮したもんだ。まだ未発達な技術なのに予想以上だったな」
「何故そんなに劇的に効いたんでしょうね?」
「今回は特に宗教色が強い対立だったからね。それぞれが信じるもの、崇拝するもの
をイメージさせる事に重点を置いたのが成功の要因だろうね。それぞれが自分の神様
を夢見ている内に、神の声が平和のメッセージを伝える。これは効果絶大だよ」
「でも不信心者もいるでしょうに。皆が皆、平伏してしまうなんて…」
「過半数が反応すれば、集団催眠の効果も加算されるからね。それに何より決め手に
なったのは、やはり大多数が平和を希求しているという本音だったろうな。破滅的な
全面戦争を本心から望む者は少ないからね」
「なるほど。色んな意味で、人間一人一人の本音が戦争を食い止めた訳ですね。…で
も、お国柄と言うべきか、我が国の視聴者が見た光景は一味違いますよ。
……うちの教団の教祖様が現れたとか、応援してる何々先生が見えたとか、そういう
感想よりも、大手芸能事務所のアイドル達が勢ぞろいしてたとか、AVギャルがボカ
シ無しで写ってたとか、ウルトラマンが飛び立ったとか、ゴレンジャーがスクラムを
組んでた、とか」
「まぁ、罪が無くて良いが・・・このFAXの山は?」
「長嶋前監督を見た、という通報です。くっきりと背番号3が見えたという感想もありました」
「また、どこかの局の、元アナウンサーじゃないのか。こりゃ近々『長嶋は地球を救
う』てな特番を組みそうだねぇ」
「UFOの編隊を見た、という人も多かったそうですから、併せて特集したら?」
「そんな企画事は、あの局に任せておきたまえ。何はともあれ、これで兵士たちも軍
関係者も拍子抜けして当分は平和だろう。先ずはめでたしめでたしだな」
「ところで局長・・・一つお聞きして良いですか?」
「何だね、部長?」
「あの人工幻覚の時、局長も何か幻覚を見られましたか?」
「見たとも。実は、学生時代から敬愛し、個人的にも何かにつけお世話になった恩師
の姿が彷彿として浮かんできてね。いやぁ、心底から尊敬する人の幻覚を見るという
あの装置の機能は大したもんだねぇ。ところで、部長・・・キミはあの時、何を見たのかな?」
「はい、もちろん…局長の姿を」

(完)

2002年01月14日22時11分13秒投稿

          『わくわく動物ランド』 ヘーパイ

 とある動物園では、オラウンウータンのステージショーが大変な人気だっ
た。そもそも飼育繁殖計画の一環として、飼育係が調教したオラウンウータ
ンの芸をこじんまりと公開していると云う代物のショーだった。
 ところが、これを嗅ぎつけたTV局が面白がってこの様子をゴールデンア
ワーに全国ネットの電波に乗せてしまった。以来、客はこの動物園に引きも
切らずに押し寄せる様になり、小さな出し物だったオラウンウータンの芸は
大人気のアトラクションとなった。同時に調教師は花形芸人に祭り上げら
れ、我知らずの内に鼻高々となっていた。

 天気の良い春の日に小学生の団体が遠足でこの動物園を訪れた。
「みなさんコンニチワー、オラウンウータンのさくらですー!」
 意気揚揚とした調教師の挨拶でいつものショーは幕を開けた。
かしこいオラウンウータンはそつなく芸をこなして見せた。
 可笑しな表情を見せたり、はしゃいだり、とぼけたり、甘えて見せたり
と、オラウンウータンのさくらはまるでヒトがする様な仕草をステージで披
露した。
 さくらが動く度に観客席の小学生達はドッと笑った。最後にはみんなが一
斉に拍手を送った。ステージは今日も大成功だった。

 公演の成功に気を良くした調教師は、ショーを終えた舞台上で子供たちを
相手に得意そうにお話しを始めた。
「みなさん、さくらって本当にお利口さんでしょう。猿の仲間でもネ、オラ
ウンウータンって云うのは特に頭が良いんですよ。そんなオラウンウータン
に芸を教える時には、叱ったりしちゃだめ。押し付けてもだめ。自分からや
りたいなあーって思うように仕向けてあげる。そして出来た時には大喜びし
てほめてあげる、そしたら次からはこのヒトに喜んでもらおうとして一所懸
命がんばってくれるんだなあ。みんなも同じじゃないかなあ、きっとそうだ
よね。オラウンウータンは本当にヒトと同じ、頭が良くって何年も前の事で
もチャーンと憶えていたりもするんだよ。」
 ここで調教師が一たん言葉を切った。見計らった様に一人の気の弱そうな
男の子がおずおずと手を挙げた。
「おっ、ボク。何か質問があるのかな」調教師が嬉しそうな表情を向けた。
「ボクはこのショーを見る前に動物園の中をあちこち見て回ったんです。
そしたら、ゴリラもチンパンジーもオラウンウータンも、コンクリートと鉄
格子で囲まれた檻の中に入れられていました。あの猿たちが人間と同じなん
だとしたら、やっぱり居心地の悪い所に閉じ込められてるなあって、思って
るんじゃないですか。おじさんはそんな事思いませんか」
 予想もしない少年の質問だった。
オラウンウータンのアトラクションは、調教師がその表情と顔色を鮮やか
に変化させると云うイリュージョンで幕を閉じたのだった。
                 ―しまい―

2002年01月14日14時33分01秒投稿

今日は、亀虫ぷっぷです。

NHK新人演芸大賞落語部門に参加した吉弥さん。
残念ながら落選でした。

古典を掛けた人はこんな場では不利ですな。
審査員も放送局もより新しい形のもんを選ぼぉとしますからな。
ま、枕のネタが出来た位に思ぉときましょ。
悲観する事は無いよ、吉弥さん。
別にして無いやろぉけどね。

大賞はS枝門下の桂三若さん。
咄家にしてはこましなルックスですな。
授賞式の時の表情がそれらしゅう決まらんとこがまだ初々しい。
ひとりぼけ突っ込みの切り口が評価されて…少なくとも師匠よりは笑えた。

ところでS枝氏と言えば〈も○井のくずきり〉のコマーシャル。
去年と同じ、よぉ分からん柔道着のコスチュームのもんが流れてますな。
ぜひとも買いたい商品でも無いんで別にええんですけどね。
クイックタイプが未だに新発売なんはちょっと無頓着ちゃうの?
ま、ほんまにどぉでもええんですけどね。

2002年01月14日14時28分08秒投稿

           『杜子春な噺』   ヘーパイ

 或る春の日暮れです。
 日本の都、東京の片隅でぼんやりと空を眺めている男がありました。
 男は名を田代まさしと云って、一頃は名の通ったタレントでしたが、今で
は落ちぶれ憐れな身分になっておりました。
「仕事は無いし金も無い、いっそ誰も知らない遠い世界へランナウェイし
ちゃいたいな」
 そんな取りとめも無い事を思い巡らせる田代の前に、いかにも仙人然と
した風体の老人が足を止め、横柄に声を掛けたのでした。
「お前は一体なにを考えているのだ」
「あっ、ご老人。以前は大変お世話になりました」
 老人に声を掛けられた田代は、居住まいを正し丁寧に挨拶を致しました。
 老人が田代に声を掛けるのは、これで三度目なのでした。
 最初は田代がまだアマチュアバンドの一員だった時の事です。
 彼がコーラスとダンスのメンバーとして参加しているアマバンドを、プロ
のメジャーバンドにしたい。その時田代はそんな事を言ったのでした。
 二度目はバンドが解散して、田代が途方に暮れている時でした。自分はバ
ラエティーの人気タレントとしてTVで活躍したい。今度、田代はそう言っ
たのでした。
「そうだ、お前には前に二度願いを叶えてやったぞ。それがなぜ又こんな所
でうらぶれておるのじゃな。」老人が問いただしました。
 田代は、老人の真っ直ぐな視線を避ける様に首をすくめて言いました。
「面目無い、実はしくじったんです。女性のスカートの中を盗撮なんかした
りして。いえね、それ一回なら復帰出来たものを今度は風呂場を覗いてとっ
捕まったんです。へへっ、カッコ悪い」
「そうか、では儂の力で又復帰させてやろう」老人の言葉に、田代は大きく
首を振って反発するのでした。
「いえっ、芸能界はもう結構です。それよりお師匠様、私を貴方の弟子にし
て下さい。仙人に成れればどれほど素晴らしいかと、そう思います」
 田代の願いは、いかにも神妙に見えました。
「ふむ、よかろう。それでは試してみよう。これからお前に何が起ころうと
も、覗き、盗撮と云ったいかがわしい行いをせぬ事じゃ。それが出来ぬなら
仙人になるのは諦めろ、良いな」
 老人が言い放つと同時に、一陣の風が舞い老人はかき消す様にいなくなり
ました。残された田代は、いつの間にか野球帽とガーゼのマスクで顔を覆っ
ていました。両の手には何故かデジタルカメラを仕込んだ紙袋と、8ミリ
ヴィデオカメラが握らされていたのです。
 唐突に、田代の目の前でストロボライトが強烈な光を放った様に感じまし
た。一瞬にして田代の視界は真っ白になってしまったのです。

 視力を取り戻した時、田代はJR山手線の雑踏の中にいました。券売機が
見えました。ミニスカートの若い女性がキップを買っておりました。出てき
た釣銭を取ろうとして女性が腰をかがめます。短いスカートのエッジがきわ
どくせり上がってゆき、ふくよかな女の腿がいよいよ露わになりました。
 誘われる様に田代は女性の背後に近づき、慣れた手つきでカメラを仕込ん
だ紙袋を女性のお尻の近くに持ってゆきました。
“イケない事だ、よすんだ!”田代の中で自制心が叫び声を上げました。
 危ういところで我に返った田代は、弾かれたように跳びずさり、手にした
紙袋を傍らの壁際に投げ付けたのです。壁には癒し系、と呼ばれるアイドル
の笑顔に添えて‘旅に出ようヨ’の文字を印刷したポスターが貼ってありま
した。
 再び田代の脳裏に鋭い閃光が瞬きました。田代の意識は又もや白い世界に
覆われました。

 今度、意識を取り戻した時、田代が立っていたのは見覚えのある放送局の
通路でした。突き当たりに、女子更衣室、と書かれたドアが見えました。
 丁度その時、お色気だけが売り物の人気局アナがそのドアを潜って室内に
消えて行くところでした。一旦開け放たれたドアは、取り付けられたドアク
ローザーの力でゆっくりと閉じられて行きました。ところが何に引っ掛かっ
たものか、ほんの少しの隙間を開けてドアは動きを止めたのです。
 周囲に人影はありません。田代はチャンス到来とばかりに、隙間の開いた
ドアに忍び寄りました。
“イケない、覗くな!”又もや心の声が田代を引き留めます。正気を取り戻
した田代は、この時になってまだ帽子とマスクで顔を隠している事に気付き
ました。苛立たしげにそれを脱ぎ捨てた時、又もやまばゆい光線が田代の目
を射抜いたのです。田代は白い光の目隠しをされました。

 徐々に目の前に薄闇が広がってゆきます。完全に視力を取り戻した時、
田代は何処か閑静な住宅街の裏路地に立っておりました。たそがれ時を随分
過ぎた頃の様でした。森閑とした住宅の並びに一つだけ明かりのこぼれる小
窓が見えました。閉ざし切っていない小窓の隙間から温そうな湯気が漏れ出
ていました。そこは風呂場の様でした。
 カラン!と、石鹸箱が転んだ風な音が響きました。続けてボソボソと男の
低い話し声です。コロコロと鈴を転がすような若い女の笑い声が聞こえまし
た。ジュン、と田代の股間に熱い思いがほとばしりました。全身を支配した
リビドーが田代を小窓の際へと押しやります。もう理性の叫びは田代の耳に
届きません、彼は小窓に取り付くと夢中で中を覗き込みました。
 瞬間、眼鏡が湯気を浴びて曇りました。流れる様な手の動きで眼鏡を外す
と、裸眼で浴室内を見やりました。浴室を出て行こうとする男の逞しい背中
がまず見えました。傍らの浴槽に視線を移すと、長い髪を頭の上で大雑把な
お団子に結い上げた女が、驚いた様な表情で窓を見上げておりました。
 女の視線と田代の視線がまともに絡み合いました。女の丸く開いた可愛い
口元からキャッと短い悲鳴が飛び出しました。
 ガタン、と大きな音をたてて田代の傍らの勝手口が開いたかと思うと、腰
にバスタオルを巻いただけの男が鬼の様な血相で現れたのでありました。
“しまった、オレは何をしてるんだ”田代は全身から血の気が引くのを覚え
ました。それでも踵を返して必死で逃げました。その時になって己の右手が
まだヴィデオカメラを握っている事に気付きました。振り返りもせずにヴィ
デオカメラを後方に投げ捨てました。その時足がもつれました。その田代の
肩を逞しい男の手がガッチリと掴みました。ちからまかせに引き戻された
田代は仰向けにひっくり返りました。家々の屋根で狭く仕切られた空を田代
は絶望の思いで仰ぎ見ました。次の瞬間、狭い空一面に信じられない程の星
の光が強烈に弾けました。田代は又白い世界に閉ざされました。

 気が付くと元の日暮れ時です。田代の前には老人が立っていました。
「情けない奴じゃ、やはり覗きよった。お前は仙人にはなれぬ」
 強い口調で決め付けられた田代は、それでも老人にすがり付いて
「それじゃあ、せめて芸能界に復帰をさせて下さい。稲垣のゴローちゃんみ
たいに!」そう懇願するのでした。
 老人は諭す様に言いました。
「ゴローちゃんのやった事は、お前と比べたら所詮は微罪じゃ。お前は覗き
以外の罪も犯したであろう、隠し立ては無用じゃ反省をせい。早く目を覚ま
すのじゃ!」
 言い当てられて田代はあわてました。
「畏れ入りました、お師匠様の仰る通りです、私はまだ目が覚めません。
もし目の覚めるクスリが御座いましたら、いくらか廻して頂けまいか」
 これにはさすがの仙人も大いに呆れましたと見えてきつく戒めました。
「これっ、田代よ。これ以上目の覚めるクスリなんぞを使い続けるとな、儂
が術を掛けんでも白昼にフラッシュバックを体験する事になるぞ」
 まことに恐ろしいのは白い粉でございます。
           ーしまいー  

2002年01月14日11時49分06秒投稿

S.S☆「前世の記憶」☆     あや太郎

「博士−−実に驚くべき研究論文でした。あれは事実なのでしょうか…赤ん坊は生ま
れる瞬間まで、前世の記憶を持っているだなんて?」
「まず間違いありませんな。あなた方もご存じでしょう−−−母親の胎内に居た時の
記憶を有している子供が時々報告されるという事実を。そういう子供たちを調べるう
ちに、本来すべての胎児が何らかの記憶を持っているという事が判かってきたので
す。それも母体の中に居るときに聞いた音声や受けた感覚だけではなく、それ以外の
遙か以前から持っていた記憶らしいのです。これを前世の記憶と呼ばずして何としま
しょう」
「ふーむ、これは歴史始まって以来の大発見だ。でもそんな記憶を持っていながら何
故生まれたあと覚えてないんですか?やはり育つにつれ忘れてしまうんでしょうか?」
「いや、人間の肉体というのは不思議なもので、出産の際、胎内にオキシトシンとい
う物質が増加し、子宮を収縮させて出産を助けるという作用があるんですが、そのオ
キシトシンが赤ん坊の体内にも入り、それまでの記憶を消してしまうという作用をす
るんです。あたかも赤ん坊の記憶を消し、頭脳を〔初期化〕するかのようにね」
「何と何と…。そう聞くと、何やら人体には前世の記憶を消す装置が最初から仕組ま
れているように思えて来ますね。あるいは、前世の記憶を持ったまま生まれては困る
という都合でもあるかのように…」
「正にそうなんです。恐らく生まれ変わる前の記憶を持ち続けては不都合だからそれ
を消去するようなメカニズムが人間の遺伝子に書き込まれていると思われます」
「果してそれは何のためか?いや、これはすでに人間の不可侵分野かも知れません
ぞ。つまりは神様の都合、神の配慮という事かもしれない」
「科学的な研究をする立場から言うと、いささか逃げ口上の感もありますが、ひょっ
とすると我々が触れてはイケない問題なのかも知れません」
「それでは、肝心の〔前世の記憶〕自体も研究はされないのですか?」
「今は保留中です。なにせ、この謎を解きあかしてしまっては、この宇宙と人間のす
べての裏が暴かれてしまう恐れすらありますからね」
「何とスケールの大きな研究テーマだ。正に人類史上最大の転換点に今我々は立って
いる訳ですな」
 武者震いする学者たちの思いもよそに、天上界では神様がちょっと苦い顔でニンゲ
ンの遺伝子をいじっていた。
「困ったなぁ−−どうしても計算通りに行かん。…本来ならちゃんと前世のメッセー
ジを残して生まれて行くはずなのに、いつの間にか勝手に記憶を消して生まれてしま
う。しかもまたニンゲンどもは積極的に生まれる前の事を考えようとせん。何も覚え
てないのをおかしいとは思わんのかなぁ?…それでなくても近頃のニンゲンは進歩が
止まって行き詰まってるというのに何故もっと真剣に前世の記憶や神のメッセージを
読み取ろうとせんのじゃろう?…ははーん、さては前世や前々世の失敗を思い出すの
が煩わしいんじゃな。つまり、反省したり進歩したりするのを面倒ぐさがっておるの
かも知れん。…やれやれ、ニンゼンの怠け癖にも困ったもんじゃ。もう少し向上心を
持ってもらわんと、これ以上の種の存続も危うくなって来る。実際もうちょっと真面
目に勉強してくれんとなぁ…」
                  (完)

2002年01月13日15時41分37秒投稿

S.S☆「傷痕」☆     あや太郎

 青年は旅の途中で一軒の茶店に立ち寄った。一服しながらフトこれまでの足取りを
振り返る。…何か満ち足りない思いがして、ふらりと旅に出たのだった。…新しい人
生が見えてくるのではないかと考えたり、彼女の一人も出来やしないかと期待したり
の若い頃に有りがちな一人旅だった。
 車の通りも少ない落ちついた店先へ、お茶を運んでくれたのは可愛い娘だった。
 店のなかから老人が会釈した。手伝っているのは孫娘だろうとすぐに分かるほど、
娘は小柄で子供っぽく見えた。
「放課後に手伝ってるの?」
 気楽に聞いたら、笑いながら、もうそんな年齢ではないと答えた。
 二十代の半ばになるという。そんなやり取りが切っかけで話が弾んだ。それ以上に
話を弾ませたくなる愛嬌があった。
「このへんに…働き場所はないかなぁ?」
 でまかせに訊いたというより、本当にそんな気になった。
 どうせアテのない旅だし、何よりこの小柄で可愛い彼女に惹き付けられてしまった
ようだ。
「あそこのコンビニで…店員さんを募集してたんじゃないかしら」
 娘が店内を見やると老人が出てきた。二人に案内されるように、五百メートルほど
下った所のコンビニへ出向いた。就職浪人か何かだろうという感じで、店のほうもす
んなりと雇ってくれた。パート扱いだが時給も悪くないし、何よりこの地に留まれそ
うなのに青年は安心した。
 コンビニで働きながら、ちょくちょく峠の上の茶店に出入りした。あの娘とも仲良
くなった。老人はやはり祖父で、娘の両親が数年前に亡くなった後、二人でこの店を
営んでいるらしい。
 半年近くの月日がたった。青年と娘はいよいよ親密な仲になった。そしてある日、
青年は彼女にプロポーズした。
「初めて見た時、何かピンと来たんだ。キミのそばに居たくてあのコンビニに就職し
たんだよ。僕の気持ちは分かっていたんだろう?」
「えぇ。好意を持ってくれているのは分かってたわ。私もあなたが嫌いじゃないし」
「それなら何も問題はない。一緒になろう。幸い僕は気楽な身の上だ。必要ならあの
茶店を継いでお祖父さんの面倒も見る。違う仕事が良ければ一緒に街に出ても良い
し、キミの望む環境で−−」
「待って」
 娘の顔が固くなった。言いにくい事を言おうとしている顔だった。
「私……結婚できないの」
「えっ、まさか他に誰か好きな人が…?」
「いえ。あなたより好きな人は居ないわ。でも、結婚はしたくないの」
「僕に何か気に入らない所があるのかい?」
「いいえ。何も無い。でも…どんなに好きな人でも、私はもう結婚なんか…」
 泣きながら、娘は立ち去った。
 何が何やら分からない青年は、後日あの祖父と会い、単刀直入に彼女の事情を問い
ただしてみた。
 それはやはり求愛者である青年には衝撃的な事実だった。
「数年前、孫娘は地元でも札付きの若者に…強姦されたんじゃ」
 あの娘を騙して連れだし、子供にイタズラでもするような感覚で弄んだという。
「お前、子供なのか?大人なのか。俺が調べてやる−−」
 そんな獣のような言葉と嘲笑の下で、彼女はレイプされた。
 娘と両親は、それでも果敢に警察へ届け出て、裁判に持ち込んだ。
 しかし若者は地元の名士の独り息子で、親も金に明かせて名のある弁護士を集めた。
−−俗に言う「弁護士のドリーム・チーム」の巧みな戦術で、ついにレイプ男は無罪
を勝ち取ってしまう。ショックを受けたのは被害者本人だけではなかった。娘の両親
は口惜しさと嘆きの果てに、先ず父親が自殺、そして後を追うように母親も病死して
しまったという。
「それでただひとりの肉親になっちまったわしが孫娘を連れ、隣町のここで店を開い
て暮らしてるという訳なんじゃ」
 青年は呆然と一部始終に耳を傾けていた。
 気がつけば自分の下宿先に戻り、座り込んでいた。
 何日も悶々と考え、悩み続けた。そして怒りと絶望の果てに、青年は突然目の前が
開けたような気がした。
「自分に出来る事が一つある。きっとこれが自分の生き方なのだ」
 青年は茶店に向かい、中の二人を遠目に見ると,何も言わず立ち去った。
−−−−−−−−−−
 間もなく隣町にちょっとした事件が起きた。
 数年前、あの娘をレイプした名士の息子が大怪我をさせられたというのだ。犯人は
言うまでもなくあの青年で、あのドラ息子を半殺しの目に遭わせたあと自首したという。
 間もなく、青年は法廷に引っ張りだされた。
 国選弁護士が、青年の動機と情状を訴えるが、接見の段階から何も語ろうとしない
青年は、法廷でも無言を通した。
 警察関係者も町の住人もみんな心情を察して余りあった。誰もが青年に肩入れして
いた。切々と情状酌量を訴えれば、実刑判決を免れるはおろか、被害者側も起訴を取
り下げる見込みすらあった。
 しかし青年は何も語らなかった。過去のレイプ事件に関しても黙したままだった。
 結局、何の弁解もせぬ青年は暴行罪で実刑判決を食らう事になった。最も軽い二年
の刑ではあったが、それでも刑務所暮らしの上、前科者のレッテルを貼られてしま
う。そんな境遇を何故か青年は敢えて選んだ。
 一年後、模範囚として青年は仮出獄を許された。
 出所した青年が向かったのは無論あの茶店だった。
 嬉しそうに出迎えた娘に何も答えず青年は身の回り品の入ったトランクを奥の間に
放り込み、自分も畳の上へゴロリと転がった。
 呆気に取られる娘に、尚も青年は真面目な顔でこう言った。
「行く所が無いんで、ここに転がり込む事にする」
「そ、それは良いけど…」
「ついでに入り婿にしてもらおうかな。押しかけ亭主と言うわけだ」
 ニコリともせずに言う。娘のほうも少し暗い顔で答えた。
「結婚は…したくないんです。あの時の記憶がある限り…」
 男性不信は癒し難いようだった。
「キミの心の傷は簡単には消えないだろう。いや、一生消えないかも知れない。たと
え僕があのドラ息子を叩きのめしたってね。でも、僕だって傷を負ったんだぜ」
「それは…?」
「暴力事件を犯したという前科さ。もう世間は僕を受け入れてくれないかも知れない」
 聞いていた娘はとうとう泣きだした。
「私、申し訳ない事をしたわ。あなたを巻き込んでしまって…」
 ここで青年は初めてニッコリ笑った。
「でも悪い事ばかりじゃない。傷を負ったお蔭で一つ良い事がある」
「良い事って何?」
「それはね……一生その傷を負って行ける事さ。…誰かさんみたいにね」
 青年は小さな小さな娘の肩を力強く抱きしめた。
 行く宛も仕事も無い、深手を負った男なら追い出されもしまい。
 一生消せない傷を負った二人に、もう別れる理由は無くなった。
                  (完)

2002年01月12日22時44分12秒投稿

S.S☆「借景」☆     あや太郎

 老人は寝ていた。何ヵ月も動けぬままであった。
「もう長くはない」
 自分でも分かっていた。そこで人生の最期にちょっとした贅沢をする事に決めた。
それはこの部屋を借りる事だった。以前から憧れていた茶室風の瀟洒な和室だ。そこ
に布団を敷いて寝ている。このままここで臨終を迎えるつもりなのだ。
「そろそろ頼むよ」
 和服の女性が二人現れ、敷布団のそばの障子戸をゆっくり開けた。その開け行く空
間に緑溢るる山里の景色があった。
 本当の茶室や寺の宿坊なら、開け放った障子戸から庭の景色が切り取ったように見
えるところだ。それを「借景」と言うらしい。その切り取ったような景色の額縁に、
老人は憧れの山景を嵌め込んだのだ。
「憧れても憧れても遠かったからなぁ…」
 都会に生まれて都会で暮らし、都会で一生を終えるところだったのだ。
 そんな時、ふと思いついた。少々カネはかかるが最期ぐらい好きな景色を見ながら
死んでも罰は当たらないのではないかと。
 実際かなりの出費を要した。遺産を楽しみにしていたらしい家族も余り良い顔はし
なかったが、まぁ最期の願いぐらい聞いてもらっても良いだろう。老人は有無を言わ
せず、この「臨終の部屋」を借り受けることにした。
 少し霞み始めた眼にも山里の風景は鮮やかだった。山の上の緑、田んぼの黄金色、
川の青さ、柿の実の赤さ…疎らな民家の屋根や壁の色までが優しい。
「あぁ、身体が動いたらなぁ…」
 眺めるだけでなく、実際にあの緑の中へ、黄金の波へ飛び込めるものを−−
 切なくそんな思いを巡らせていると、不思議な事に障子戸の向こうに見える景色が
グッと近づいて来たような気がした。まるで戸のこちら側まで溢れだしたかのよう
だ。
「借景は絵にして絵に非ず…か。やはり生きている景色は良いなぁ」
 するとまた不思議な事に、その山里の風景が目の前一杯に広がり、あたかも自分を
取り囲むかに見えた。
「何と素晴らしい。手に届きそうだ−−」
 思わず弱々しい手を伸ばしてみる。黄金の穂はその手をするりと抜けて通りすぎ
た。代わりに山の緑がすくそばまで降りてきた。手を伸ばすとサラサラ…葉ずれの音
がした。爽やかな風が吹いた。もう手に触れたかどうかなど気にならなくなった。
 いつしか老人の視線は山の向こう側に移っていた。細い山道を炭焼きの男が歩いて
行く。
「おーい…聞こえるかぁ?」
 思わず発した老人の声に、炭焼きは少し顔を上げ、ニッコリと笑った。
 視線は坂道を下り、清らかな水を湛えた泉を発見した。無性に喉が渇いた。
「何とか飲めないものか?」
 老人は動かぬ体で首だけ持ち上げてみる。するとその泉が目の前までやって来て、
老人の口に甘露の水を注いだ。
「旨い。こんな旨い水は初めてだ」
 老人はまだまだ旅をしていた。山を越え、谷を越え、川を越え、海を越え−−どこ
まで行っても、緑と稲穂に囲まれた美しい山里が続いていた。
 見る物すべてが美しかった。吹く風すべてが爽やかで、飲む水すべてが美味しかっ
た。 やがて老人は疑問を感じた。
「おかしい。もうこの地球上にこれだけの緑地は残ってないはずだが…」
 そう−−農作物すべてが培養タンクで生産され、酸素がすべて工場で合成される昨
今、もはや地上に「緑溢れる土地」など残っていないのだ。
 老人は急に疲れを覚え始めた。もうこれ以上遠くへは行けないような気がした。そ
れは何かの「限界」が来たことを知らせる疲労感だった。
 老人は視線を止め、もう一度周囲に広がる風景を眺めた。どこもかしこも老人の憧
れるのどかで素朴な山里風景だった。
「良かった−−−最期だけでも良い夢を見られて…」
 そして老人は息を引き取った。無論すべては障子戸のスクリーンから飛びだす三次
元映像だった。
「合成水をあんなに美味しそうに飲んでくれるだなんて」
「あぁ、何か美味しい酒でも飲んでる夢を見てたんだろうなぁ」
 あんなに末期の水を旨そうに飲んでくれたのだ。多少の贅沢をさせてやって良かっ
たと家族たちは思った。映写室を出ると窓から灰色の市街地だけが見えた。緑に包ま
れた暮らしを知らない家族たちには、老人の夢の内容など知る由もなかった。
                  (完)

2002年01月11日18時31分24秒投稿

S.S☆「自然界の掟−3」☆     あや太郎

「皆さん、今日は動物たちの子育てについて資料映像を見てゆきましょうね。
先ずは蜘蛛の子育てです。卵を大切に抱きかかえていますね。飲まず食わずで守って
いるんですよ。やがて孵化して卵から蜘蛛の子供たちが続々と出てきます。ここで驚
くような光景が展開しました。何と子蜘蛛たちが母親蜘蛛を食べはじめたではありま
せんか。そうです−−親蜘蛛は子蜘蛛たちを守り通した上、最初の栄養源となって上
げるんです。何と凄い愛情でしょう。…次はタコの子育てです。三メートル近くもあ
る大ミズダコは海中の岩穴に藤の花のような房状の卵を産みつけます。ミズダコも
やっぱり飲まず食わずで何週間も卵を守り、孵化を見届けるんですよ。ほら、卵から
可愛いタコの赤ちゃんが次々に出てきます。しかしこんなに大切に見守ってもらった
タコの子供たちも生き残るのは一%もありません。厳しい生存競争ですねぇ。どんな
天敵がいるか分からない大海へ今タコの赤ちゃんたちが旅立って行きます。あとには
力尽き全身がボロ屑のようになったミズダコの母親が息絶えているばかり。でもタコ
の子供たちはそれでも雄々しく、健気に生存競争の旅に乗り出して行くんですねぇ。
儚くも気高い光景ですねぇ。さぁ、皆さん、どんな感想ですか?」
「タコの子供たちが、死んだ母親も見ないで旅立つのを見て涙が出そうになりました」
「そうでしょう。悲しくも逞しい姿ですものねぇ」
「いえ、母親ダコの気持ちを察したら泣けて来て…」
「わが子の無事を祈って死んで行ったんでしょうね」
「いや、きっと情けなかったと思います」
「あら、どうして?」
「だって、あれだけ面倒みてやったのに、取りすがって泣いてくれる子供の一匹もい
ないんだもん」
「まぁ…。そんなこと言ってたら勉強にも何にもならないわ」
「いえ、良い教訓になりました。子育てなんてあんまり熱心にするもんじゃないって」
                  (完)

2002年01月10日22時09分26秒投稿

は〜い、チチョリーナでぇす。
たまたまこの掲示板を見たら…
あ、この「たまたま」はあの「たまたま」じゃ無いのよ。
私の事かいてくれて…
この「かく」もあの「かく」とは違う方ね。
分かるわね?
とにかく、ありがとさん。

新聞記事の通り、性懲りも無くハンガリーの選挙に出るの。
なぜって?
そぉね、悲しい議員経験者の性とでも言うのかしら。
一度当選の快感を知ってしまうと忘れられないのよね。
あぁ、心で拒んでも体が…。

日本の人達には関係無い遠い国の選挙だけれど、応援して欲しいわね。
イタリアの時も熱ぅい声援が色んな体位で伝わってきたのを感じたわ。
これも私の裏プロモーションビデオのお陰よね。

今回も、また…
と言っても全身なのよ、もちろん。
お願いね。
ほなね。

2002年01月10日18時09分31秒投稿

S.S☆「最後のご託宣」☆     あや太郎

 ある日ある時、国連本部および世界各国の政府に「神の予言」と銘打たれたメッ
セージが届いた。発信源も発信方法も分からぬこのメッセージはスーパーコンピュー
タにしか解読出来ないような複雑極まる高度な数式と文学的比喩を駆使しており、地
球人でも、ましてやエイリアンにはとても書き表せない暗号だと判定された。そして
その内容は…
「放っておくと地球は間もなく崩壊する。一刻も早く手を打て」…それだけだった。
 世界の指導者たちは腕を組み、考え込んだ。
「さて、これを我々は一体どう受け取るべきなのか…?」
「普通なら単なるイタズラ、戯言と片づけてしまうところなんですが、なにせあの深
い知性、文学性は並大抵のモノではありませんからね」
「よし。取り敢えずは神様からの本物のメッセージだと解釈し、出来る限りの調査、
探査をして地球の危機を予測してみよう」
 すると間もなく大変な事が分かった。地殻変動の大異変で何と数年後には地表がひ
び割れ、地中から吹き出してきたマグマによって地上には生命が存続できなくなる事
が判明した。
「何と、何と−−こんな大変動が起きているとは気づかなかった。やはり神のみぞ知
る…あれは紛うことなく神様の予言だったんだ」
「でも予言だけでは困りますよ。何か対策を授けてもらわなくては」
「そうなんだ。とても我々の科学水準では対応できない。ともあれSOSを出してみ
よう」 宛て先も分からぬまま、手当たり次第、信号を発信してみると、嬉しや返事
が来た。しかしその内容は人類を当惑させるばかりだった。
「滅亡の日は近い−−早く手を打つべし」…それだけだった。
「これではどうしようもない。神様…本当に居るのなら早く具体的な指示を…!」
 またSOSを乱打する。しかし返事はまたしても変わり映えしない「早く素直に手
を打つべし」。
「素直とかヒネくれてるとかの問題じゃないだろうに。何でもする、助けてくれ〜」
 そうこうするうち、地球は崩壊を始め、人類はとうとう滅亡の時を迎えてしまった。
 人類の最期を見届けるように、ここでようやく神様が降臨したもうた。
「あぁあ、とうとう手遅れになってしまったか。あんなに早く手を打てと言っておい
たのに…」
 地球文明との名残りを惜しむかのように、神様は顔を伏せ首を振った。
「神様−−−何か手があったのなら、何で教えてくれなかったんです?」
 まだ生き残っていた一握りの人類が、虫の息で聞いた。
「だから何度も言ったではないか−−手を打て、手を打てと。…素直に、神棚に向か
い手を打てば助けてやることもできたんじゃ」
 何と、素直に神頼みをすれば人類を滅亡から救うつもりだったらしい。
 そう言われれば、人類が神頼みをアテにしなくなってから久しかった。
「それならもっと分かりやすいヒントをくれれば良かったのに…」
 そう言われると神様はちょっと複雑で悲しげな表情を浮かべ、ポツリと答えた。
「参拝しろとかカシワ手を打てとか言うだけでも不本意なのに、これ以上露骨なヒン
トはプライドが許さんかった」
                  (完)

2002年01月09日21時39分53秒投稿

下駄屋の喜六

今朝の新聞で懐かしい名前を見つけました。その人の名は「チチョリ−ナ」。
覚えてはるかな?イタリアで、もう10年以上も前にポルノ女優から一転国会議員の
選挙に打って出て、多数のスケベ男たちの票を獲得して見事に当選。選挙運動の時は
ボロッと片乳を出しておりました。どこからやったか、この人の出演したモザイクな
しビデオが回ってきたことがあったな。
生まれ故郷のハンガリ−から、またまた選挙に出るらしいんです。「貧しい人たちの
役に立ちたい」とか、ご立派ご立派。選挙参謀になりたいもんやね。

この記事が深刻な通貨危機のアルゼンチンの記事の横に掲載されております。まあこ
こまでとは言わないまでも、わが国の女性議員たちは表情や行動が険しすぎるんやな
いやろか。そんなに怖い顔をして怒りを表面に出さずとも政治はできると思うんです
けどね。
いでよ、日本のチチョリ−ナ。

2002年01月09日13時07分21秒投稿

たかさごの穴子

こんなにインターネットが普及した時代ですが、お正月と言えば、年賀状。
お手製の芋版からプリントゴッコ、そして、今やパソコンで作成と、様変わりしてき
ましたが葉書に書いて、郵便物の現物として送る年賀状はまだまだ健在です。
そんな年賀状は大多数が、元旦に届きます。
ところが、今年の我が家には異変がぁぁ!
年賀状が届くには届いたのですが、世帯主であるところの父親へ届くべき賀状が1枚
もありません。
毎年、家族の中では一番多い枚数が届くのに…。
2日は配達が無く、3日、4日と待ってみましたが、やはり届きません。
いくら何でも間違いであろうと(郵便局の片隅に眠っているのか?)、5日のお昼前
に電話で問い合わせてみました。
もちろん、その日(5日)の配達でも届いてないのを確かめてからです。
我が家の特殊事情も鑑みて、ごく、穏やかに係の人に訳を話してみました。

穴子「あの、○○町×−△の□□ですが、世帯主に届くべき年賀状が届かないのですが…」
局員(女性)「あっ?そうですか?今、配達員が出払っておりまして…。今日の配達
でも届いていませんか?」
穴子「ええ、今、郵便受けを見ましたが、届いてません」
局員「そうですか?毎年、届いているのですか?」
穴子「はい。家族中で一番たくさん…。ただ、うちの場合、仕事の関係上、世帯主の
次に私に一番多く届くのですが、私の名前が漢字で表記すると男名前なんです」
局員「はあはあ?それで?どんなお名前なんでしょう?」
穴子「音では女なんですけど、漢字だと○△って書くので、どう見ても男で、それで
同じ住所なのに世帯主の束と私の束が出来て、世帯主のほうが忘れられていたという
ようなことではないですかね?」
局員「はあ…とにかく配達員が帰ってきましたら……ちょっとお待ち下さい」

−−−オルゴールの音が流れて、しばらく待たされた−−−

局員「あの、調べましてから、午後からお伺いさせて頂いてよろしいでしょうか?」
穴子「はい。よろしくお願いします」

この間、通話時間はトータルでも10分〜15分だったと思います。
受話器を置いて、もう一度、念のために郵便受けを見てみますと…?!!?
配達されておりました。父親宛の年賀状の束!
慌てて、もう一度郵便局へ、届いた旨を電話して、来て下さらなくてもよろしいです
よ、と丁重にお詫びしました。(なんで私が謝るねん!とちょっと疑問でしたが)

郵便局から我が家までは配達のバイクだと5分もかかりません(途中どこにも寄らな
ければ)。
電話の最初で番地まで言ったので、電話中に探しだして、配達に来たことは明白です。

あんなに穏やかに話したつもりでしたが、やっぱり……。
事と次第によっては、『痛快エブリディ』の「モーレツ怒りの相談室」に訴えてや
るぅぅぅ!(ちなみにこのコーナーには郵便局への怒りが多い)という気持ち満々
だった私…。
電話線を通じて、そのオーラが走ったんでしょうかね?
まあ、その辺の川とか田圃に捨てられてなかっただけマシ!と思うことにしましょう。

2002年01月08日23時25分07秒投稿

S.S☆「行けるもんなら…」☆     あや太郎

「ヘーイ、タクシー…」
「はい、お客さん−−どこまで行きましょう?」
「○○町の××ビルまで行ってくれ」
「えっ、そんな近く?それじゃ商売にならないや」
「おっ、乗車拒否する気だな?それとも…行く道を知らないんじゃないのか?あ、こ
の運転手、田舎者だな。このカッペめ」
「誰が知らないんだよ。そんな所、目をつぶってたって行けらぁ」
「行けるもんなら行って見ろ!」と言うと客は突如運転手の後ろから目隠しをした。
「何をするんだ、これじゃ運転できやしない」
「何だ、やっぱり行けないんじゃないか。道を知らないんだろう。正直に言え」
「何を、この野郎。そんなに言うなら、行ってやらぁ。事故で死んでも知らねぇぞ!」
 売り言葉に買い言葉でヤケクソの運転手は目隠しされたまま強引に車を走らせた。
「ほぉら、どうだ。ちゃんと着いただろう。恐れ入ったか?」
「こりゃ参った。対向車や歩行者のほうが逃げてったよ。お互い悪運が強いようだ
な。それじゃアバヨ−−」
「ザマァ見ろ。いくらウルサイ客でもこれには参ったろう。待てよ−−何か忘れたよ
うな気がする…。あっ、料金もらうの忘れた!チクショー、上手くタダ乗りされ
ちゃったよ。あれ?今日の稼ぎが無い!何てこった。新手のタクシー強盗か。おー
い、待て〜、この泥棒〜…」
 すると、逃げる男が振り向いて怒鳴った。
「俺だって命を奪われかけたじゃないか。これはホンの慰謝料さ…」
                  (完)

2002年01月08日21時39分14秒投稿

S.S☆「ハウ・ツー・お見舞い」☆     あや太郎

「病人を見舞ったとき、思ったより元気そうですねぇ…なんて白々しい事を言う人が
多いけど、あれは 本当に適切な挨拶なんだろうか?」
「それで気を良くしてたまに元気づく人がいるから、それで良いんじゃないの?」
「でも長く療養してる人とか、治るメドが立たない人なんか、そう言われたら不愉快
なもんだぜ」
「だろうな。それでもたまに奇跡的に快方に向かう人もいるから禁止にはならんだろ
う」「特に気の毒なのは、病気がもう末期的な状態で、助かる見込みもなくて青息吐
息なのに…まぁ、顔色が好くなって…なんて言われた時だ。あれは辛いと思うぜ」
「そりゃ自分が言われるのはイヤだけど、他人相手なら、他に言いようがないから、
つい言っちゃうだろうな。それに病院ではそう言うのがマニュアルになってるから、
患者が辛くても…まぁ、元気そう…って言うほうが無難なんじゃない?」
「そうだなぁ。そんな患者はどうせ間もなく死んじまうんだし、お約束の挨拶で良い
か。おっ、ここが会長の病室だな。じゃあ、当たり障りのないところで−−会長、お
元気そうじゃないですか。安心しましたよ−−」
 すると、痩せこけて死相の浮いた顔で余命いくばくも無い会長が呻いた。
「この辛さは…死んでも忘れん!」
                  (完)

2002年01月07日21時17分20秒投稿

あけましておめでとうございます。会員番号245番です。
 今年は、四回目の干支です。上岡さんもおんなじ干支です。私と同い年には森田さ
ん・あほの大塚さんなんかが、います。森田さんは、ちっともうれしないといっては
りましたが、わたしは、なんともおもいませんね。
 お正月は、本家の叔父が、年末に亡くなったので3日のお通夜、4日のお葬式まで
バタバタしていましたので、忙しかったですね、焼き場が年明けまであかなっかので
まってたんです、本家の人達は、大変やったと思います。
 新年といっても、こんなことしか書けませんね、今年もどうぞよろしく。

2002年01月07日20時37分32秒投稿

お正月に白浜にいってきました。先に言っておきますが、年明けから続いている和
歌山での地震は、私のせいではありません。

 せっかく来たんだからとむきになって何度も温泉につかっていたら、鼻血でてしま
いました。

 皆さん、温泉のつかりすぎには注意しましょう。

                     淀川のへりくつ屋

2002年01月07日09時45分38秒投稿

めったに熱を出さない私が年明け早々寝込んでしまった。
最近風邪をひかなくなったけれど「炬燵でごろ寝」は、やっぱヤバい。
「面白いTVがあったら起こしてね」って言っていたのになぜか2人とも
寝てた、それほど今年の年末年始もつまらない番組ばっかりだった。

さすがに上岡さんが健在な頃は、TVガイドなんぞを買ってきて
ラインマーカーを引いてちょっとした “おっかけ” 気分に酔っていた。
確かに苦手なビデオやオーディオでの録画それを生番組だけでなく
説明書を読んで留守録してたなんてやっぱ “おっかけ” だったんだ。

私的には、当時はやってたローラーブレードをはいて嬉しそうに技を
披露していた、かくし芸大会、アルベールビル(?)での聖火ランナー、
そして・・・、ときめきタイムリーでのカウントダウン人形あたりが
キャパの少ない脳に残っています。巻き戻したいとは思わないけど。

土曜日の午後2時・・・、みんなと共に過ごした時間をありがとう。
日曜日の午後2時・・・、ラジオから上岡さんの名前がさらっと
出てきてそう思いました。きっとFMだと思うけど・・・。  まるびー

2002年01月07日00時39分21秒投稿

S.S☆「病人のお手本」☆     あや太郎

 国際健康会議が開かれた。医学者、患者の双方が参加する医学と健康に関する世界
的規模のシンポジウムである。
「今回は、数々の難病を抱えながら、七十才を過ぎた今も元気に暮らしておられる患
者さんに来ていただきました。それでは健康管理の秘訣についてお聞きしたいと思い
ます。先ず心掛けてらっしゃる事は何ですか?」
「きちんと薬を服用する事ですな。それが病気と闘う基本です」
「なるほど。それで今何種類の薬を飲んでいらっしゃいます?」
「二十種類ほどです。一日あたり百錠ほどですか。食前、食後、食間、就寝前、適宜
と飲み方が色々あるんで、時計を見ながら、正確な時刻に飲んでおります」
「なるほど…腕時計が両手に二個ずつと、懐中時計が三つ、首掛け式が二つにズボン
のポケットに三個ずつ−−−それぞれアラームが鳴るようにセットしてあるんです
ね。これは几帳面だ。でも時間が気になってストレスが溜まったりしませんか?」
「慣れれば大丈夫です。アラームが鳴ると反射的に薬袋へ手が伸びます」
「外出時には水なんか無いのでは?」
「無論ペットボトルは手放せません。苦い薬は口直し用の甘い菓子や酸っぱいキャン
デーなどを携帯してます。それを食べてるだけでもう食事は要らないくらいですよ、
ダハハ」「しかもそんな煩雑な服用をもう四十年も続けてらっしゃるというんですか
ら、ご立派ですねぇ」
「いやぁ、何と言っても健康あってこその人生ですからな。もう薬を飲みはじめた直
後から仕事もヤメて、定期的な検診と正確な薬の服用に人生を賭けています。お蔭で
この年になってもこんなに元気と言うわけですわ」
「見上げたものです。元気で長生きすればこそ、子供や孫の成長も楽しみにできる訳
ですからね」
「いや、子供も孫もいませんよ。なにせ検査と治療と薬の服用で結婚する暇も無かっ
たですから。そのお蔭で同年代の人間よりむしろ元気ですわ、ダハハハ」
「そ、そうですか。まぁそれだけお元気なら趣味に打ち込んだり、旅行に行ったり、
食事だって存分に楽しめるでしょうから老後もますます張り合いがあって…」
「いや、趣味や旅行に使う時間は無いですなぁ。何せ検査と治療と服用の毎日ですか
ら。それに近頃は健康体操なんかも始めたし、テレビや映画も目に悪いからあまり見
ないし、食べ物も、薬と口直しで満腹になってしまうから、ほとんど食べないし−−
でも元気ですよぉ、薬と健康法のお蔭で」
「な、なるほどね…。でもそれだけ何もしないと退屈でしょう?人生の目的は何なん
ですか?」
「目的は…健康になる事かなぁ」
「でも何のために健康になるんです?」
「たぶん…健康のために健康になるんでしょうなぁ」
「それで…将来は明るいですか?」
「もちろんです。百才までに何とか完全な健康体になり、それからいよいよ青春を謳
歌するつもりです。ただそれまで寿命があるかどうか…ナハハハハ」
「さすが模範的な患者さん−−−−この凄まじい気力と、飽くなき闘志が健康を維持
させているんですねぇ。皆さんも、こんな療養生活を見習ってみては如何でしょうか」
 この会議のあと、ようやく世の健康ブームは去ったという。
                  (完)

2002年01月05日16時59分45秒投稿

S.S☆「形ばかり」☆     あや太郎

「長官−−検察庁はあの一件を何と思ってるんですか?世間があれほど関心を深めて
いるというのに、時効が近いから、調査が面倒だからと言って起訴に及び腰だなんて」
「いや、決して及び腰などという事はありません。こんなに沢山の署名も寄せられて
いるようですし、検察庁の威信にかけても時効ギリギリまで誠心誠意、調査と捜査を
続けてゆく所存です」
「内部から漏れてくる噂では、もう捜査人員も削減して諦めムードだとか聞いてますよ」
「滅相もない。名誉と信用にかけて、我々は国民の疑惑を解明するよう全力を上
げています」
「本当ですか?犯罪性の低い、小さな問題だからといって、手抜きしてるんじゃない
ですか?現に人手を惜しんでる気配だし…」
「とんでもない。手抜きどころか調査員の数を増員したばかりですよ。普通この種の
事件に掛かる人数の何と二倍を充ててるんですぞ。これ一つ見ても我々の熱意の程が
分かろうというもんです」
「これは驚いた。本当に二倍の人員を充ててるんですか?」
「本当です。二倍ですよ、二倍。どうです、この熱意。たとえ形だけでも二倍ですぞ」
「あ、やっぱりね…」
                  (完)

2002年01月04日17時26分55秒投稿

S.S☆「裁判時代」☆     あや太郎

「何と言うことだ…。それじゃ子供さんが飲み込んだ覚醒剤は、母親のあんたの所持
品だったというのか!」
「ハイ。仕事と育児疲れで、シャキッとしようと覚醒剤を時々…」
「そんな薬を使ってる事自体違法だが、それをまた子供の手の届くところへ置いてお
くなんて…」
「ハイ、後悔してます」
「当たり前だよ。それをうっかり口にしたアンタの子供は可哀相にも死んじゃったん
だよ。もう怒りという表現以外思い浮かばないな」
「ハイ、私も怒りで一杯です。もう殺してやりたいくらい…」
「そうだろう。自分自身を殺してしまいたい気分だろうな」
「いえ、覚醒剤を製造した薬品メーカーを殺してやりたい!」
「おい、それは筋違いだろう。病院で使ってる治療用の覚醒剤を勝手に盗み出して家
で使用してたんだから」
「でも−−−子供が飲み込めないような味にしたり、怖がって手を出さないようなデ
ザインにする工夫は出来たはずです。だから私、薬品メーカーを訴えます!」
「うーん…今時あり得ない話でもないか…」
                  (完)

2002年01月03日20時37分31秒投稿

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